2017.08.22

「いい子」「悪い子」すべては”親の決めつけ”だ│「リフレーミング」で短所が長所に変わる


子どもの長所を見つけるにはどうしたらいいでしょうか(写真 : プラナ / PIXTA)

子どもの長所を見つけるにはどうしたらいいでしょうか(写真 : プラナ / PIXTA)

うちの子はだらしがない。自分がやりたいことはやるけど、嫌なことはやらない。宿題もやらずに平気で遊んでいる。たとえ宿題をやったとしてもいい加減で手抜きがすごい。マイペースで何をやっても遅い。落ち着きがない。子どもが小さかったときはかわいがられたのに、最近はしかってばかり。「子どもをほめよう」と言われても、いいところが見つからない――。

長年、小学校の教師として数多くの子どもと親に接してくる中で、親たちのこういった嘆きをたくさん聞いてきました。

親というものは、どうしても、わが子の短所ばかり目についてしまうようです。しかし、短所ばかり見て指摘していても、いいことはありません。子どもの自己肯定感を下げ、中長期手に見てむしろマイナスのほうが大きいのです。

そこで、私がお勧めしたいのが「リフレーミング」という手法です。人は誰でも一定の枠組み、つまりフレームを通してものを見ています。リフレーミングとは、そのフレームを一度外して、別のフレームで別の角度から見直してみるということです。そうすると、短所に見えていたものが、実は長所でもあったということに気づくことができます。

やるべきことを後回しにしてしまう子は

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たとえば、宿題、お手伝い、翌日の支度など、やるべきことを後回しにして遊んでしまう子がいたとします。これは親にとっては不都合で不愉快なことなので短所に見えます。でも、そのフレームを一度外して、別のフレームで別の角度から見直してみると、楽天的、プラス思考、大らか、図太い神経の持ち主ということかもしれません。実際、やるべきことをやってなくても平気で遊びを楽しめるというのは大したものであり、誰にでもできるわけではないのです。

こういう子が大人になったとき、たとえば何か大きなプロジェクトに取り組んだとしたら、ストレスやプレッシャーに潰されることなく、多岐にわたるタスクを楽々こなしていけるかもしれません。翌日のプレゼン資料が完成していなくても、事務処理が途中でも、それらのストレスに潰されることなく、得意先との会食では笑顔で楽しくおしゃべりしたりすることができるはずです。また、プライベートでも、自分のやりたいことをどんどんやっていけるようになるでしょう。楽観的な性格のおかげで、新規のビジネスを思いついて果敢に挑戦したりということもできるかもしれません。大らかなので、人の失敗にも寛容でいられるということもあるでしょう。

この反対に、宿題、お手伝い、翌日の支度など、やるべきことはきちんとやらないと気がすまない、それが終わるまでは遊ぶ気になれないという子がいたとします。これは、親にとっては都合がよいことなので、長所に見えます。でも、見方を変えれば、悲観的、マイナス思考、気が小さい、神経質ということかもしれません。

こういう子が大人になったとき、職場の上司に言われたことはきちんとやらないと気がすまない、「適当に」「いい加減」で済ませることができない、いつも自分を追い込んで息が抜けなくなる、何事においても余裕や遊び心がない、やらされ仕事ばかりやっていて、自分自身がやりたいことをやれなくなる、などということになる可能性もあります。翌日のプレゼン資料が完成していないというだけで、得意先との会食も気乗りしないということになるかもしれません。つねに悲観的だと、新規ビジネスを思いついて果敢に挑戦するということも躊躇してしまいそうです。

マイペースで遅い子の見方を変えると

また、たとえば、何をやってもマイペースで遅い子がいたとします。親にとっては時間がかかってイライラするなど、不都合で不愉快なことなので短所に見えます。でも、見方を変えれば、他人のペースに左右されることなく、ゆったり着実に自分らしく生きられるということでもあります。それに、こういう人はほかの人がマイペースでのんびりしているのも許せるのではないでしょうか? やたらに忙しく生きる大人が多い中、こういう生き方ができる人は貴重です。

さらに別の例をあげましょう。よくふざける子がいたとします。親のフレームで見ると、やってほしいことをさっさとやらない、迷惑で困った子であり、「ふざけちゃダメ。ちゃんとやりなさい」としかってしまいがちです。でも、フレームを変えて見直してみると「ふざける」というのは面白がるのがうまいということです。明るい、ユーモアがある、盛り上げ上手、ということでもあります。こういう子が大人になって、その場に応じて行動する判断力がつけば、ムードメーカー的な人気者になる可能性が高いと言えます。

また、よくある例として、「何事もいい加減で、手抜きがすごい。宿題などもやればいいんでしょという感じ。何事にも丁寧に取り組んでほしい」と嘆く親がいます。でも、これは物事の軽重を自主判断できるということでもありますね。大人が仕事をするうえで、何でもすべて同じようにがんばっていては疲れてしまいますし、非効率です。ある部分は「いい加減」で済ませて、「ここぞ」と思うところに時間とエネルギーをかけられる人が業績を伸ばせるのです。時間もエネルギーも有限ですから、物事の軽重を自主判断して優先順位をつけて取り組むことが大事であり、その子はすでにそれを実践しているのです。

これらは、筆者が長年多くの子どもを見てきたうえでの実感に基づいています。とにかく、「この子は○○だ」と決めつけないことが大切だと思います。

「うちの子は落ち着きがない」と思ったら、「でも、これはエネルギーにあふれていて活動的ということでもあるんだ。行動力があるんだ」と見直してみましょう。自分の特性を否定されずに育ったその子は、大人になってからも、仕事や遊びでアクティブかつエネルギッシュに活動していくことでしょう。

「飽きっぽいなあ。何でもすぐ飽きてしまう」と思ったら、「でも、これは好奇心が旺盛ということでもあるんだ。やる気でいっぱいなんだ」ととらえてみましょう。大人になってからも、いろいろなことに積極的にチャレンジしていくはずです。

授業参観のときに「発表もできないなんて、消極的で困る」と思ったら、「でも、これは慎重と言えるのかも」と見直してみましょう。つまり、軽々しくいい加減な発表などしないで、じっくり慎重に構えているのです。こういう子は、大人になってからも軽挙妄動に走らず、仕事でもプライベートでも慎重に事を運ぶことでしょう。

短所と長所はコインの裏表の関係にある

以上のように、常に短所と長所はコインの裏表の関係にあります。ですから、短所を長所に言い換えてみてください。今の時点で親にとって短所に見えることでも、その子が長い人生を生きていくうえで、本当にずっと短所であるかどうかはわからないのです。もしかしたら、その子の宝物と言ってもいいくらい大切な長所なのかもしれません。

そもそも、子どものある特質が、短所に見えるか長所に見えるかということは、親の都合によって決まってくることが多いのです。今の時点で長所に見えることは、すべてとは言いませんが、多くの場合、親にとって都合がよくて育てやすい、ということにすぎないのです。

ですから、私たち大人はもっと謙虚でなければならないと思います。自分の価値観やものの見方を疑うことなく、固定化されたフレームで見て、子どものことを決めつけてはいけないのです。つねに、別のフレームで別の見方ができないか考えることが大切です。とはいっても、ここが大事なのですが、子どもを見るときだけそうしようと思っても無理なので、生活の中で日頃から心がけて習慣化することが大切です。

たとえば、スーパーに買い物に行って混んでいたら「混んでて嫌だなあ」と思ってしまいがちですが、そこで終わらずに「でも、こんなに人気のある店で買い物ができるのはいいことかも。きっと新鮮で安いものが多い店なんだ」とリフレーミングしてみます。

ガミガミしかってばかりで嫌われている上司がいたとしたら、「でも、この上司のおかげで、この課はみんな仲がいいのかも」と感謝してみましょう。自分は出世コースから外れたと思ったら、「でも、これで自分のペースで生きられる。趣味の時間も家族との時間も持てる」と思い直してみます。

「休みが終わってしまう」をリフレーミングすると

3連休の2日目の朝起きたとき、「もう休みがあと2日しかない」と思ってしまう人は多いと思いますが、そこで終わらずに「でも、今日も休みだ。今日から2連休なんだ」とリフレーミングしてみましょう。逆に、プラス思考の人で、まず「やった!今日も休みだ。今日から2連休なんだ」と思う人は、「でも、もう1日は終わってしまったんだから、そろそろ連休明けのことも考えておかなくては」とリフレーミングしてみましょう。

このように日頃からリフレーミングを心がけていると、物事を多面的に見られるようになります。ついマイナス思考になりがちな人も、プラス思考で見直せるようになります。逆にプラス思考で楽天的すぎる人は、少しずつ慎重さや計画性も出てきます。

子どもを見るときも、短所ばかり見て嘆くようなことは少なくなります。わが子のしょうもない部分も笑って許せるようになり、どんな子も本当に愛おしく感じられるようになります。

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親野 智可等 :教育評論家

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提供元:「いい子」「悪い子」すべては"親の決めつけ"だ│東洋経済オンライン

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