2017.08.17

「1日6時間ゲームする子」に親ができること│日常生活に支障をきたすケースは少なくない


子どものゲームのやりすぎには、どう対応すればいいのか(写真:Luxpho / PIXTA)

子どものゲームのやりすぎには、どう対応すればいいのか(写真:Luxpho / PIXTA)

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小3の息子を持つ母親です。子どものゲームのやりすぎに悩んでおります。2年生になったあたりからなかなかゲームがやめられず、ルールを守れません。最近は注意すると「もーちょっと」……さらに注意すると怒り出し、物に当たったり、すぐに泣いたりします。

いちばん気になるのは、ゲームの影響なのか、お風呂に入る・ご飯を食べるなど、当たり前の日常生活ができなくなってきていることです。ゲームがしたいばかりに朝からすねて、学校を休んでしまったこともあります。平日は3時間近く、休日は6時間ぐらいしています。一層のこと、ゲームを壊してしまおうかと夫とも話すのですが、なかなか実行できません。暴れてどんな行動を取るか予測ができないのが怖いのです。このような環境にしてしまった私たちの責任ですが、朝から怒鳴り散らしてしまったりする日が続き、私が滅入ってしまい体調を崩してしまうこともあります。どのようにしつけをしていいのかまったくわからなくなってしまっています。
(仮名:岩崎さん)

子どもがゲームにハマるのは必然

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いまや一家に1台といってもいいぐらい、ゲーム機が日常の中にあります。最近ではスマートフォンでゲームをすることもあり、まさに1人1台ゲーム機を持っている時代と言っても過言ではありません。ゲームは当然のことながら、“ハマる”ように作られています。ですから、子どもは必然的にハマっていきますね。岩崎さんのお子さんのような状態に陥っている家庭は、それこそ全国にたくさんあることでしょう。事実、ゲームに関する相談は全国から非常にたくさんいただきます。

いちばんの原因は、「ゲームを子どもに持たせているということ」です。そもそも初めからゲームを持っていなければこのようなことにはなっていません。しかし、これだけ普及して誰もが持っている状況で、ゲームをわが子に持たせないと決断できる家庭は多くありません。「ゲームを持たせないほうがよかった」と今さら言っても現実的ではないということです。

そこでもう少し現実的なお話をしましょう。これまで非常に多くの親御さん、子どもたちと出会い、ゲームやスマホに関するテーマで話をしてきました。そこからわかったことがあります。それは、ゲーム機を持っている家庭にはいくつかのパターンがあるということです。

家庭でルールやペナルティを決めているか

1)ゲームを持つにあたり、家庭で約束事(ルール)を作る家庭と作らない家庭がある

まずは、ゲームを持つ段階で、約束事(ルール)を作る家庭と作らない家庭に分かれます。たとえば「ゲームは1日1時間まで」「勉強が終わったらゲームをやる」など、家庭によってさまざまなルールが作られます。もし、このルールを作っていなければ、子どものやりたい放題でしょう。子どもの目に余る行動が起きてから、後でルールを作ってもあまり効果はありません。最初が肝心で、初めに作らないとルールとしてなかなか機能しないのです。

2)家庭で約束事を作っていても、ペナルティを決めている家庭と決めていない家庭がある

次に、家庭でルールを作っていても、それを破ったときにどうなるのか、というペナルティについて決めている家庭とそうでない家庭に分かれます。たとえば、「このルールが守れなかったら、1週間ゲームを禁止」「このルールが守れなかったら1カ月間禁止」など、家庭によって決めている家庭があります。もしこのように、ペナルティを決めていなければ、「ルール破っても別に関係ないし」と子どもがルールを重視しない可能性があります。ですから子どもがゲームと上手に付き合っている家庭では、ルールを作った後に、それを守れないときのペナルティを決めています。

3)ペナルティを決めていても、それを実際に実行する家庭と実行しない家庭がある

さて、ペナルティを決めたところまではいいのですが、子どもが実際に、ルールを破ってしまって、ペナルティを適用するという段階で、それを実行しない家庭があります。つまり、「ゲームは1日1時間、もし守れないときは、1週間禁止」と決めていても、罰を与えるのはかわいそうだなどとなって、その1週間禁止を実行しないのですね。こうなると、子どもは「ペナルティといっても口だけ」という認識を持ち、悪い意味での“教育”を行ってしまうことになります。

このようにみてくると、岩崎さんの場合は、1)のルールはあるようですが、その後の部分でうまくいっていないということになります。つまり、子どものことを配慮してペナルティが実行できていないということですね。もし、あらかじめ子どもと一緒にルールやペナルティを作って実行していれば、もっとやりやすかったかもしれません。

岩崎さんのような状況になっているときは、次のような2つの解決策が考えられます。

子どもは自分で作ったルールのほうが守る

① あらためて、なぜ今の状況が問題であるのか冷静に話し合って、ルールとペナルティについて子どもに作らせる

これまでは親から強制されて作られたルール、ペナルティですね。子どもは、いったんは受け入れたことでしょうが、いざ実行するとなると納得しませんし、場合によってはキレるということもあります。おかしな話ですが、よくある現象です。そこでまずは、なぜゲームにここまでハマることを親はよしとしていないのかという点について、冷静に感情を交えずに話をするのがいいでしょう。雰囲気としてはゆったりとした感じで、あまり深刻ではない状況を作られるといいでしょう。

さらに一歩進んで、改めて別のルール作り、ペナルティ作りを行いましょう。親からの押し付けではなく、子どもに決めさせていきます。親からの押し付けられたルールよりは自分で作ったルールのほうが守る可能性が高いためです。また、自律性の向上にも役立ちます。

そして、その話の中で、次の3つを決めさせていきます。

1)ルール
2)ルールが守れなかったときのペナルティ
3)もしペナルティを実行するときに、(子どもが)それを受け入れないことがあったときどうするか

この3)まで決めないといけないでしょう。スネたり、学校を休んだり、暴力的になるという実績があるので、もしそのようになったらどうするべきかというところまで決めておきます。そして、それを紙に書くかスマホでビデオにでもとっておくと、子どもはある種の誓いをしたということで、今後はこれまでのような状況にはなりにくいでしょう。

このときのやり取りは、たとえば次のようにしていきます。

親:「今までゲームをやりすぎてきてしまったよね。今後もゲームをやるとして、どうしたらそうならないようにできるかな」

子:「そんなにやらないから大丈夫」

親:「でも、もしやってしまうことがあれば、ゲーム機をなくしてしまうことになるけど、それでもいいの?」

子:「……。それは嫌だと思う」

親:「じゃ、どうしたらいい」

子:「ルールを決める」

親:「どういうルール?」

子:「1日、1時間だけとか」

親:「じゃ、ルールは作ったとして、もしそのルールが守れなかったらどうする?」

子:「ちゃんと守る」

親:「ちゃんと守れないときはどうする?」

子:「……」

親:「守れないときにどうするかを決めておかないと、『約束破った』と言って怒られることになるけど」

子:「そのときはもうゲームをやらない」

親:「でも、ゲームやらないようになっても、またやりたくなるよね。だからたとえば3日間はやれないというようなペナルティを初めに決めておくのがいいと思うんだけど」

子:「わかった」

親:「ペナリティは決めたら必ず、3日間禁止みたいに実行されるけども、そうなったときに、それを嫌がって、ふてくされたり、暴れたり、泣いたりとはそんな状態にはならない?」

子:「うん。大丈夫」

実際、ペナルティを実行したときには、嫌がったり、泣いたりするかもしれません。しかし、決め事は決め事。ここでしっかりとやらなければ、同じことの繰り返しになってしまいます。そして一度実行すると、次からはルールを破る確率がグッと減ることでしょう。

子どもの長所を引き出す

② 徹底してゲームをやらせる

さて、2つ目の解決策です。これは、子どもの長所を伸ばす方法です。この方法はあまりにも非現実的に思えるため、実行されない可能性もありますが、実際に行っている方もいます。

それは「ゲームを徹底してやらせる」ということです。先ほどのアプローチとは真逆です。通常、親はこの方法は選択しませんが、考えようによっては、もしかしたら、子どもの長所はこのようなゲームに関連する能力にあるのかもしれません。小3で平日に3時間、休日に6時間もゲームをやり続けるという力は、ある意味、すごいことです。それだけ集中して行うことは通常できません。

実は、この方法は、子どもの長所を引き出すことによって将来の職業につなげるという意味もありますが、もう一つ逆の方向もあるのです。つまり、子どもがゲームざんまいである場合、制限なくやり続けると、そのうち飽きだすということも考えられますね。たとえば好きな食べ物だからといって毎日食べていたらそのうち飽きます。たまに食べるからおいしさを感じるものです。ですから、長所がゲームの中に隠れていれば、それが開発されますし、そうでなければ、そのうち自分で制限し始めるようになるということです。

しかし、このような理屈がわかっても、親としては、「このままゲームばかりで親の言うこともいっさい聞かなくなったらどうしよう」と不安がよぎります。それはそうでしょう。ですからこれを選択するかどうかは、家庭の判断となります。いちばんよくないのは中途半端な対応をすることです。一貫性がなくなるとよくありませんから、その点を考慮に入れて、どう対応するか考えてみてください。

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『ぐんぐん伸びる子は何が違うのか?』(クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

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石田 勝紀 :一般社団法人 教育デザインラボ 代表理事

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