2017.07.23
【眠れる本5選】本選びのプロに聞く、睡眠導入・快眠によい物語
フミナーズをご覧のみなさん、こんばんは。
俳優・脚本家の伊藤裕一です。
またお会いできるなんて夢のようですね。是非、明日の夢日記に書かせてください。
フミナーズでは夢コントロールのコラムや眠れる呼吸法にストレッチ動画を担当させていただいておりました。
(もしもまだご覧になっていなかったら、先にそちらをご覧いただいて、また目が覚めたらお会いしましょう)
目次
-読書で心のリラックスタイム
-安眠できることは当たり前。 現代人は快眠を求めている
-眠れる物語の条件とは?
-フミナーズ読者におすすめの「眠れる本」5選!
-『夢十夜』 夏目漱石 新潮文庫
-『恋しくて』 村上春樹 編・訳 中公文庫
-『この年齢だった!』 酒井順子 集英社文庫
-『人間臨終図鑑』 上・中・下巻 山田風太郎 角川文庫
-『休息びより』 パイ インターナショナル
-気になる本を読んでみた
読書で心のリラックスタイム
さて、今回は少し目線を変えて眠れる方法について考えていきたいと思います。
というのも、「眠れない」と一度意識をしてしまうと、ストレッチや呼吸法をやろうと思ってもなかなか集中できなくなってしまう。
僕はついつい寝る前に考え事をしてしまい、すぐには頭を空っぽにできない性分でして、変な眠れないループに陥ってしまいがちです。
「空っぽにできないなら、いっそ一杯にしちゃうのはどうだろうか?」と、眠る前のさらに前段階として、本を読むという心のリラックスタイムを作ってみたいと思います。
そこで今回は、眠れる物語を、本選びのプロ・代官山 蔦屋書店 シニア・コンシェルジュの間室道子さんに教えていただきました。
間室 道子(まむろ・みちこ)さん
大人の知的好奇心を刺激する“森の中の図書館”というコンセプトで作られた、代官山 蔦屋書店のシニア・コンシェルジュ。日々、膨大な量の書籍に目を通しており、読書量は年間約720冊。
書店での接客のほかに、書評家としても活動中。現在『プレシャス』、『婦人画報』などで連載を持つ。
寝転がって「バカミス」(=バカバカしいミステリー)を読むのがお好き。おすすめは『謎解きはディナーのあとで』でブレイクした東川篤哉さんの『完全犯罪に猫は何匹必要か?』とのこと。
安眠できることは当たり前。 現代人は快眠を求めている
大昔は、安心して眠りにつく。つまり、「安眠」することが大切だったと思います。
でも、今では眠っている間に敵に襲われるような危険な目にあうことはなくなり、安眠は当たり前。現代の人たちはその上を求めて快く眠ること、つまり「快眠」を求めています。人々の生活スタイルは多様化して、昼夜逆転生活を送る人も多い中、眠りについて敏感になっていると言えます。
そんな眠りへの関心が高まっている中、代官山 蔦屋書店が開催している眠りに関する書籍のフェアはとても人気。ラインナップを変えて、毎年開催されているんだとか。
眠れる物語の条件とは?
伊藤:間室さんの中で「眠れる物語」の条件というのはあるんでしょうか?
間室:そうですね、これまでの経験だと、
・現実と夢の境目がつかなくなる物語
・胸がすくようなスカッとする物語
・壮大で気が遠くなるような物語
ということが睡眠導入によい条件として挙げられますね。
伊藤:なるほど。眠るために本を選んだことがないので、とても興味深いです。
フミナーズ読者におすすめの「眠れる本」5選!
本屋さんで「眠れる本ください」なんて言ったら、きっと実用書をすすめられることでしょう。
でも、今回は「眠れる物語」。年間720冊を読む間室さんだから選べる珠玉の物語を教えていただきました。
『夢十夜』 夏目漱石 新潮文庫
間室:まさに睡眠導入にピッタリな小説で、漱石が見た、夢と現(うつつ)のはざまの物語です。夢が現実を、あるいは現実が夢を侵食したりするというテーマで描かれています。
第一夜から第十夜のお話が10作品にまとまった短編集で、お話が「こんな夢をみた」という書き出しから始まるのがすごく魅力的! 結末が劇的で残酷、哀切に満ちているお話が多いんですが、どのお話も得も言われぬほど美しい物語ばかりなんです。
伊藤:夏目漱石ですか…。難しくて逆に眠れなくなるということはないんですか?
間室:確かに、人間の原罪を追及するような作品もあり、愉快なお話はありません。しかし、夢のお話なので物語を細かく理解しようとせず、肩肘を張らずに楽しめる作品ではないかなと思います。
「文豪」「難しそう」というイメージがある夏目漱石ですが、意外にファンタジー系の物語を書くのもお上手なのでは? と思える作品集ですね。
伊藤:第一夜から第十夜の10編の中で、特におすすめなのはどの物語でしょうか?
間室:いちばんのおすすめは第一夜。女が「百年、私の墓のそばに座って待っていてください。きっと会いに来ますから。」と言って死んでしまう悲しいお話です。
主人公の男は気が遠くなるような長い年月を墓のそばで過ごし、女が会いに来るのを待っているんです。
短編の中にこんなに哀切漂うドラマチックなものを盛り込めるなんて、さすがは漱石! という感じです。
伊藤:お話を聞いているだけで情景が思い浮かびます。実は僕、そういうロマンチックなの大好きなんですよ。
『恋しくて』 村上春樹 編・訳 中公文庫
間室:村上春樹さんが編集、翻訳した恋愛短編集です。村上さんの好みの恋愛小説、恋愛観が垣間見えます。また、村上さんを抑えて、2013年ノーベル文学賞を受賞したカナダの作家、アリス・マンローの作品が村上訳で読めるというのもこの本の魅力の一つですね。
収録されている作品は、どれも奇妙なお話ばかりです。例えば、14歳で身長190cm、体重127kgの少年の恋のお話や、飛行船上で起こる同性愛カップルの悲劇のお話など、どれも一筋縄ではいかない恋物語なんです。
伊藤:「自分もこんな恋愛がしたい」って憧れたり、「その切なさ分かる!」とか自分の経験に照らし合わせたりするようなお話じゃないんですね。
間室:そうですね。本当に恋とは奇妙なものなんだけれど、恋することをやめられない、この感情や行動は恋としか言いようがない、ということが「恋しくて」というタイトルにあらわれているのではないかと思います。
「こんな恋がしたい」というよりも、もっと根源的に「恋ってなんだろう?」と考えさせられる作品が多いです。
伊藤:奇妙だなと思いつつも、純粋さに共感できる部分がたくさんありそうですね。
間室:恋愛の悩みで眠れない人も多いと思いますが、自分の恋がうまくいかなくてもこの本を読んで「こんな奇妙なことに挑もうとしている。やれやれ寝よう」という気持ちになれます。
伊藤:村上さん自身の書き下ろし作品で、フランツ・カフカの『変身』からインスパイアされて書かれた『恋するザムザ』も収録されていますね。
間室:『恋するザムザ』は村上春樹さんの作家としての願いや心意気が感じられる作品だと思います。
この心温まる作品を通じて、作家という職業は戦争や貧困、災害は止められないが、人間の心が壊れる、疲弊するのを阻止できる可能性があるということを伝えたいのかなと思いました。
伊藤:なるほど、文学の可能性ですか。 僕は、エンターテイメントにも同様の力があると思って日々活動しているので、是非読んでみたいです。
『この年齢だった!』 酒井順子 集英社文庫
間室:世界の著名人女性の、人生のターニングポイントになった年齢にスポットを当てて、
エピソードを紹介している本なんですが、この本の面白いところは、著者の目の付け所なんですよね。
伊藤:目の付け所。あくまで、酒井さんの主観ということですか? 一般的にターニングポイントと世の中で言われている年齢とは違う目線で書かれているって、確かに、目の付け所が違いますね。
間室:特におすすめなのは、レディ・ガガ11歳。
伊藤:11歳!?
間室:彼女がデビューした年でも、曲がナンバーワンになった年でもなくて、ニューヨークの名門女学校に入学した年なんです。ガガは実はいわゆるIT成金の娘で、名家の出身というわけではないんです。
伊藤:それが、コンプレックスだったとか?
間室:いいえ。本当に育ちがよい人は、相手を見下してまで自分を保とうとしません。
だから、彼女は周りのお嬢様たちから見下されたりはせず、「ユニークだね」ということで認められていたのではと著者は分析しているんですよ。
伊藤:本人が認識したわけでもなく、語っているわけでもないけど、その人のターニングポイントを見つけちゃうって、すごい目の付け所ですね。
間室:そうなんです。そして、本当のお嬢様学校の中で受け入れられた子は常軌を逸したはじけ方をするんですって。
ちなみに、ガガの同級生にはヒルトン姉妹もいるんですよ。
伊藤:確かに弾けてる(笑)。
間室:その劇的な人生にまるでジェットコースターに乗っているような高揚感を覚えるんですけど、この酒井順子さんの目の付け所に魂消(たまげ)てスカッとした気持ちで本を閉じられると思うんです。
伊藤:魂が消えるという表現がぴったりですね。スーッと眠りにつけそう。
『人間臨終図鑑』 上・中・下巻 山田風太郎 角川文庫
間室:『この年齢だった!』が女性向けだとすると、『人間臨終図鑑』は男性向けですね。
伊藤:若い順に著名人の死亡時の年齢が書いてあるんですね。
間室:自分より若くして亡くなった天才、自分の今の年齢で死んだ偉人、100歳を超えて大往生した賢人など、読むと気が遠くなって、いつのまにかスリープ…。
伊藤:ねずみ小僧も書いてある(笑)。 これは、『この年齢だった!』と同じく一気に読まなくていいところがいいですね。
間室:自分と同じ歳で死ぬ人は年々変わっていくので、手元においておくと気になったときに知る事ができますし、若くして亡くなった天才が今も生きていたら…なんて考えるのも楽しいですよね。
伊藤:芸能界でいうと美空ひばりさんとかそうですね。 本って一気に読まなくてもいいんだ。少し気が楽になりますね。
『休息びより』 パイ インターナショナル
間室:これは、眠る前に文字を読むと、目が冴えてしまうという人におすすめしたい写真集ですね。
~ 動物たちの寝顔を二人で眺めています。どんな写真を見ながら話しているか想像してください ~
伊藤:これ本当に寝てるんですか?
間室:よく落ちないなって。このカンガルーもかわいい。
伊藤:酔いつぶれたおじさんみたいですね。
間室:本当にお行儀が悪い(笑)
伊藤:アハハ…。
間室:眠れない夜に安心して眠れるよう、枕元においておきたい一冊なんです。
気になる本を読んでみた
流石は本のコンシェルジュ。紹介してもらった本が今すぐ読みたくなっちゃいました。
そんなわけで、さっそく間室さんにおすすめいただいた気になる本を読んでみたいと思います。
『休息びより』を読んでみました。
ほんとみんな可愛かった~!!最高~~!!
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これで終わったら、もう二度とフミナーズでは書かせてもらえませんよね。
うそうそ! ちゃんと読みますってば!
でも、『休息びより』は本当におすすめです。あんなに無防備な動物たちの姿を見てたら、眠れないことで悩んでいる自分って一体何なんだろう? って思えてきますから。
さて、気を取り直して。
『夢十夜』を読んでみました。
やっぱり印象的だったのは、間室さんもおっしゃっていた第一夜。
「こんな夢を見た」という書き出しから始まる、非現実の世界。
だけども、漱石はそこにいる主人公の男を「自分」と書いた。これは一種の明晰夢状態なのかもしれない。「自分」はどこか冷静で、淡々と見たままの情景を描いている。
物語の序盤、僕にはそう写りました。
そして、女が会いに来るのを苔の上でずっと待つ「自分」。
この「待つ」姿にどうにも感情を感じない。ただただ時が過ぎていく。
どれだけの月日が経ったか、「自分」でも分からなくなっていく。
だけどある日、目の前に青い茎が伸びてくる。真っ白なユリの花が咲き、「自分」はその花びらに接吻をする。
そして、ユリから顔を離す瞬間に思わず、遠い空を見る。
そこで「自分」は「100年はもう来ていたんだな」とはじめて気づく。
この瞬間。この「思わず」という言葉を見た瞬間、一気に色々な感情が押し寄せてきました。
この「思わず」って「自分」が夢の中で「思わず」と認識したのは、予想外の出来事なんじゃないかなと僕は思ったんです。
どこかボーッと、靄のかかったように見えていた物語。
しかし、「自分」と女の間には確かに愛があったんだと確信が持てた瞬間でした。
脳みその奥の方が、スースーする。爽快感にも似た、たまらない気持ち。
100年待ったんだもん。そりゃ愛していたよ。当然じゃないか。
淡々とだって? 悲しかったに決まってる。待っている間もずっと焦がれていたんだよ。
信じていたんだよ。
そんな気持ちが、読み終わった後に続々とこみ上げてきました。
お前は何を見ていたんだと、さっきまでの僕を叱ってやりたい。
読み終わるまで主人公の心情があまり描かれていないのは、もしかして漱石の計算なんでしょうか?
「自分」が待った100年間にも、女がまだ生きていたころ「自分」と過ごした幾年かの「時間」にも思いを馳せることができそうです。
きっと、夢で見るだろうな。その、描かれていない物語を。
もしかしたら本を読むということは、夢を見るための予行練習なのかもしれません。
イマジネーションの世界に没入することは、夢を見ることと似ているように僕は思います。
眠る前に「あとは寝るだけ!」と本を開いて、存分に本の世界を旅してみるのもいいんじゃないでしょうか?
もしかしたら、電車の中で読むよりも、より深く想像ができるかもしれません。
夜の暗闇に、あなたの夢の中に、無限のストーリーを映写することができるんだから。
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伊藤裕一
俳優・モデル・MC・作家 オリオンズベルト所属。 主な出演作品にCM「楽天生命保険」、映画「進撃の巨人」、「シン・ゴジラ」、ドラマdtv「進撃の巨人 反撃の狼煙」、EX「Doctor-X 外科医・大門未知子」、舞台「~崩壊シリーズ~九条丸家の殺人事件」・「リメンバーミー」、2.5次元舞台「戦国BASARA~関ヶ原の戦い」等がある。 また、受賞歴に「ディズニー・テイルズ・オブ・イマジネーションコンテスト優秀賞」があり、自身が立ち上げた劇団「お座敷コブラ」の主宰・脚本・演出・出演も手掛けるなど、多才を生かし様々なジャンルで幅広く活躍中。
提供元:【眠れる本5選】本選びのプロに聞く、睡眠導入・快眠によい物語|フミナーズ