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2017.07.03

結婚5年目「妻に餌はやらぬ」夫へのジレンマ|結婚生活は男女の「すれ違い」が出発点だ


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共働き夫婦なので日々の生活での「割り勘主義」に不満はない。ただ、誕生日や結婚記念日などの特別な日すらプレゼントもごちそうもなくなってしまった今の関係性にどうしようもない寂しさを感じる。今回は、そんな結婚5年目の女性からのお悩みです(写真:polkadot / PIXTA)

■今回の相談

女性ですが失礼します。
私は結婚して5年の夫がいます。付き合い始めてからでいえば8年くらいです。私の悩みは、夫が私にプレゼントをくれたり、ごちそうしてくれることがないことです。
付き合い始めた当初こそ、デートの際に彼が支払ってくれることは数回ありましたが、付き合いも長くなると基本的に割り勘主義で、結婚してからもそれは同様です。もっとも、共働きなので割り勘自体に特に不満はありません。
ただ、誕生日やホワイトデー、結婚記念日などの特別な日ですら、彼が私に一方的にお金を使ってくれることはありません。私がバレンタインにチョコをあげたら、ホワイトデーには同じくらいの値段のチョコをくれました。私が大きいプレゼントを贈れば、彼もその気になるかなと思い、欲しいものを聞いてみましたが、「欲しいものは特にない」とつれない返事です。
友人のSNSを見ると、何かの記念に夫から靴やアクセサリーをプレゼントされたり、誕生日をちょっといいレストランで祝ってもらっている写真がアップされています。それを見ると、私は夫からとびきりのプレゼントをもらう経験がないまま死んでいくのかなと思い、悲しくなります。

あかりん(仮名)

友達は、夫からプレゼントをもらっているのに…

まずは落ち着いてください。

男性に関する悩み事を考える連載なので、今回の女性からの相談でもオッケーです。問題の本質を見極めるためには、多様な視点が必要ですから、女性の男性に対する意見を聞けるのは大歓迎とすらいえます。

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さて、あかりんさんのお気持ちはとてもよくわかります。確かに、SNSをチェックすると、嫌でもスマホ越しに知人の「充実した生活」が目に入ってきます。みんな自分の生活のいいところだけ切り取って、しかも、いくらか誇張して投稿しているのだから、真に受けてはダメだ、というのが一般的なアドバイスになるでしょう。しかし、こうしたことは、すでにご自身がよく理解していると思います。

この連載の一覧はコチラ。※読者の皆様から田中先生へのお悩みを募集します。「男であることがしんどい!」「”男は○○であるべき”と言われているけれど、どうして?」というお悩み・疑問がある方はこちら

問題は、いまの生活の中に「切り取る部分」さえないことです。その内容は、あかりんさん曰(いわ)く靴やアクセサリーのプレゼント、あるいは、すてきなレストランでの食事となっています。付き合ってから8年、結婚してから5年経って、恋人になったばかりの頃には自ら進んでしてくれたことを、すっかり夫がやらなくなってしまったことに不満を抱いている。

つまり、あかりんさんは、共働きで金銭的に「平等な関係」であることには納得しつつも、夫に「女性として尊重されること」を望んでいるのだと考えられます。

「結婚」は男にとってゴール、女はスタート

お見合い結婚が珍しくなった現代の日本では、ほとんどのカップルが恋愛を経て結婚します。よほどモテる特殊な男性でなければ、女性からのアプローチは期待できません。最初に行動するのは、必然的に男性です。その後も、「男性はリードする側 / 女性はリードされる側」という関係を軸に、恋愛は展開します。

アプローチが功を奏し、デートの約束を取り付けた男性は、自分に可能な範囲で最高のデートプランを考えます。また会ってもらうためには、これ以外に方法がないからです。ただ、幸いにして2回目のデートが実現しても、1回目よりは見劣りするものにならざるをえません。2回目より3回目、3回目よりも4回目と、徐々にデートの「特別感」は薄れてきます。

これは男性の努力が不足しているせいではありません。東京ですら、デートスポットは限られています。1回目は東京ミッドタウンのおしゃれなレストランで夜景を見ながら食事をしたとします。2回目はどうするか。東京ディズニーランドあたりが無難でしょう。すでに、東京を離れて千葉です。3回目は、横浜をぶらぶらして、中華街や赤レンガ倉庫を巡ります。今度は神奈川です。

4回目でまた東京ミッドタウンに戻るわけにはいきません。東京ディズニーランドだって、続けて行けば飽きてしまいます。赤レンガ倉庫なんてただの赤いレンガの倉庫なのですから、二度と訪れない可能性もあります。この時点ですでに、新宿、渋谷、そして、池袋あたりで映画でも観て、ファミレスで食事をする「普通のデート」ぐらいしか選択肢は残されていないのです。

男性の立場からすると、こうした努力のうえにさらに努力を重ねて、ようやく女性に受け入れてもらえるのがプロポーズです。その結果、男性にとって結婚はゴールになります。デートプランを練ったり、すてきなプレゼントをしたり、といった「男の役割」は、もう十分に果たしたはずだ、というのが夫の言い分です。

女性の視点に立てば、これだけよくしてくれるのだから、信頼してプロポーズを受け入れようと決意します。つまり、女性にとって結婚はスタートです。将来にわたって、恋人だったときと同じように、ずっと「女性として尊重されること」を期待します。片方がゴールしたと同時に、もう一方はスタートしているのですから、結婚生活はまさに夫婦のすれ違いが出発点です。

恋人同士の間は、「男性はリードする側 / 女性はリードされる側」という関係が問題になることはありません。それどころか、非対称的な関係性が駆け引きを生み、それが恋愛に特有の楽しさや緊張感をもたらします。内気な女の子が、本当は両思いなのになかなか相手の恋心に気がつかないというのは、少女漫画でも定番の展開です。

しかし、結婚では長期的にいい関係を築いていかなければならないので、お互いの意見を尊重し合える「平等な関係」が大切になります。みそ汁は赤みそか白みそかといった小さな問題から、住まいは賃貸か持ち家かといった大きな問題まで、リードする側である夫の意見ばかりが通ったら、「どうして2人の問題なのに、自分だけで決めようとするの!」と怒りを感じ、妻の不満は確実に募っていきます。

あかりんさんは、結婚後も「女性として尊重されること」を期待していますが、本質的には、「人として尊重されること」のほうが大切なのではないでしょうか。

共働きで金銭的には平等かもしれませんが、恋愛中に立場的には「男はリードする側 / 女はリードされる側」という関係が形成されているので、「たまには一方的にお金をかけてプレゼントをしてほしい」との思いが、軽んじられてしまうのです。

この気持ちを察してほしいと思ってはいけません。男性の主体性を引き出そうとする努力では、いつまで経っても女性はリードされる側のままになってしまいます。夫婦間で「平等な関係」を築いていくためには、自分の意見をしっかり主張する必要があります。「たまには何かプレゼントしてほしい」とストレートに訴えてみるのもいいですし、もし、自分の気持ちが尊重されていないと感じるのなら、それをきちんと言葉にして伝えるべきです。

結婚後は2人の「新たな関係性」を満喫せよ

恋愛結婚という言葉は、あたかも恋愛から結婚へのスムーズな移行が可能であるかのような印象を与えます。こうした誤解が、結婚後の「思っていたのと違う」というガッカリ感の背景にあります。

恋愛と結婚はまったくの別物です。交際当初を思い出して、あの頃はよかったと嘆くのではなく、2人のつながりが新しい局面に入ったことを理解し、「平等な関係」づくりを目指してください。あまり、堅苦しく考える必要はありません。「平等な関係」が保証する安心感に基づいて、甘えたり、甘えられたりできるのが、長期的に一緒にいる2人に与えられる、恋愛にはない特権なのです。

読者の皆様から田中先生へのお悩みを募集します。「男であることがしんどい!」「”男は○○であるべき”と言われているけれど、どうして?」などなど、“男であること”にまつわるお悩み・疑問がある方はこちらまでどうぞ。相談者の性別は問いません。

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田中 俊之 :大正大学心理社会学部准教授

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提供元:結婚5年目「妻に餌はやらぬ」夫へのジレンマ|結婚生活は男女の「すれ違い」が出発点だ|東洋経済オンライン

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