2024.10.26
「気温差不調」でつらい人にお勧め"漢方的対処法"│「去年より調子が悪い」と感じる人が実は多い
寒かったり暑かったり…。そんな気温差で体調を崩す人が増えています(写真:topic_kong/PIXTA)
10月になって、異例の暑さが続いたかと思うと、急に寒くなる。そんな「ジグザグ天気」に翻弄されていませんか?
1日の寒暖差に加え、前日との差も大きいこのジグザグ天気は、体にとって大きな負担になっています。この時期は例年、寒暖差不調が起こりやすいのですが、今年は特に深刻な症状に悩む方からの相談が、筆者の鍼灸院にも多く寄せられています。
そこで今回は、寒暖差による体調不良について、原因やセルフケアをご紹介します。
今年の寒暖差不調の特徴
私たちの体は体温を一定に保つようにできていて、これを恒常性(ホメオスタシス)といいます。体温を一定に保つという働きは体にとって大仕事なので、気圧や温度の大きな変化は、人体にとって大きなストレスとなります。
特に、今年は異常な夏の暑さのせいで体力が消耗している人が多く、その結果、体温調整能力が下がって、例年より寒暖差不調が深刻になっているといえるでしょう。
この体温調節の機能をつかさどっているのが、自律神経です。漢方の考え方では、自律神経の調整は「気」が行っています。
気は生命エネルギーのようなもので、体の表面をバリアのように覆っています。ところが、何らかの理由で気の巡りが悪くなると、そのほころびから体に悪影響を及ぼす「邪気」が入ってきて、さまざまな不調が生じるとされています。気温差や気圧の変化も邪気の1つということができます。
見方を変えると、同じ環境下でも寒暖差にやられる人と、元気でいられる人がいるのは、この「気」の働きの違い、もっというと自律神経の働きに差があるということなのです。
寒暖差で出やすい不調とは?
今の時期、筆者のもとに相談があった寒暖差不調で多いのは、以下のとおりになります。これらを見ても、自律神経にかかわる症状が多いことがわかります。
めまい、頭痛、肩こり、腰痛、膀胱炎、倦怠感、胃痛、食欲不振、便秘、下痢、不眠、冷え、むくみ、のぼせ、顔のほてり、気分の落ち込み、イライラ……
特に最近、目立つのは膀胱炎を訴える方の多さです。
膀胱炎とは尿道からばい菌が入り込んで炎症を起こす病気をいいますが、なかには、原因となるばい菌がいない(見つからない)にもかかわらず、排尿時の不快感や頻尿、残尿感、軽い排尿痛、尿が出にくいといった症状が出る人がいます。
この場合、漢方的に考えられるのは「陰虚(いんきょ)」です。
陰虚とは漢方の考え方の1つで、体内に水をため込む力が弱くなり、脱水を起こしやすい状態を指します。例えるなら、雨が降らず乾燥した日が続くと森などで山火事が起こりやすくなっているようなもの。これと同じように、体が陰虚の状態になると炎症が起こりやすくなるのです。
今年の夏は暑く長かったので、例年よりも陰虚の状態に体が傾いていた人が多くおられました。そこへきて、このところの寒暖差。負担がいっきに体にかかったため、炎症が治まらず、悪化していったと思われます。
寒暖差不調を起こしやすい人には、共通の特徴があります。
1つは、最初に挙げた「気が不足し、体表面を覆うバリアが弱くなっている人」、もう1つは次に挙げる「夏の間に陰虚の状態に体が傾いてしまった人」です。
共通するのは次のようなポイントで、心当たりがあれば要注意です。
■ 暑さも寒さも苦手
■ 夜更かしが多く、睡眠不足
■ 汗をかきやすい(特に寝汗をかきやすい)
■ 今年、熱中症にかかったことがある
■ 夏の間、毎日のように冷たいものを飲んだりアイスを食べたりしていた
■ 季節の変わり目に体調不良を感じやすい
■ 手足が冷たい
では、どうすれば寒暖差不調を防いだり、改善したりすることができるのでしょうか。気の巡りをよくして、陰虚の状態から抜け出すために、まず筆者が勧めたいのが「冷え対策」です。
気温差不調を解消する食材とは
四季のなかで最も変化が激しいのは、夏から秋に変わる時期です。
漢方の基本に「陰陽(いんよう)理論」がありますが、この時期は、漢方では陽から陰へと切り替わる時期とされ、体に大きな負担がかかりやすいといわれています。
夏の延長で、つい冷たい飲み物を飲んでいたり、水分を多く摂りすぎたりしていませんか? そろそろ冷たい飲み物は卒業し、体温以上のものを口に入れるようにしましょう。
冷たいものは一気飲みをしやすく、一度に飲む量も多くなりがちです。水分は足りないのも問題ですが、多すぎても結果的に体を冷やすことになり問題です。また、胃腸の機能を低下させるため、胃で作られるはずの生命エネルギーの「気」がうまく生成できなくなり、寒暖差不調が悪化する原因となります。
やはり、まずは冷たいものを卒業するところから始めたいところで、果物の食べすぎにも気を付けましょう。こうした対策をとるだけで、胃腸の調子が整い、気が巡ります。
お勧めの食材は、体を温める性質を持つネギやショウガ、シナモン、コショウといったスパイス。食べておいしく感じるぐらいが適量です。同じスパイスでも、ニンニクやトウガラシ、サンショウなど熱性の強いもの(刺激の強いもの)は胃に負担がかかるので、ほどほどに。汗をかくほどは食べないようにしましょう。
ショウガは薄いスライスを1枚、飲み物に入れるだけで胃を温め、消化を助けてくれます。シナモンや黒コショウをプラスしても。一振り飲み物にかけてみてください。
黒コショウは意外なことに果物のジュースに合います。いまの季節なら、梨をすりおろしたジュースにショウガを一切れ入れ、最後にシナモンと黒コショウを一振りします。
先に話したとおり、果物の摂りすぎはお勧めできませんが、フレッシュなものを適度に飲むのは悪くありません。そのときにこうしたスパイスで、果物の持つ体を冷やす作用を薄めてあげるといいでしょう。例えば梨ジュースなら、冷やす性質は薄れる一方で、体を潤す効果は残るので、陰虚を解消してくれます。
シナモンは体を温める作用のあるスパイスで、手に入れやすいです。チャイなどの飲み物や料理に上手に取り入れるといいでしょう。シナモンスティック1本をカレーや煮込み料理に加えても◎。風味が増して、おいしくなります。
日常生活で冷えを予防・改善するには、3つの首(手首、足首、首)をガードすることが重要です。
防寒対策として、上着を羽織ったり、厚着をしたりすることもありますが、多くは上半身への対策になりがち。大事なのは足元なので、そこをしっかり温めましょう。足元のなかでもふくらはぎを冷やさないほうがよいので、薄手のハイソックスやレッグウォーマーを利用しましょう。
足が蒸れるとかえって冷えてしまうので、蒸れにくいシルクやコットンなど通気性のよい薄手の素材がお勧めです。いずれにしても、外出中、足元はあまり脱いだり履いたりができないので、上半身よりも対策はしっかりしたいところです。
冷え対策の1つとして、お風呂に入ることも勧められます。
入浴は深部体温を上昇させ、冷えからくる寒暖差不調にも備えることができます。寒暖差に強い体を作るために温冷浴も有効です。体が温度差に慣れる、その予行練習になるからです。
温冷浴は本来なら頭から湯と水を交互にかぶりますが、さすがに慣れていないとハードルが高すぎるかもしれません。その場合は、湯船で十分に温まった後、最後に膝から下だけ冷たいシャワーを10秒程度かけます。それでも十分に温冷浴の効果は得られます。
それでも体調が改善しないときは
最後に、寒暖差不調で体調を崩したときに、お勧めしたい漢方薬です。
先にも書きましたが、寒暖差不調の原因は自律神経の疲労にあります。この自律神経の疲労を回復して、バランスを整えるのが「桂枝湯(けいしとう)」です。桂枝湯には妊婦さんには使えない麻黄(まおう)という生薬が入っていないので、安心して服用できます。
桂枝という生薬は、シナモンの仲間です。香りがよく飲みやすいのが特徴です。韓国や中国では、桂枝湯を甘く飲みやすくしたドリンク剤があるほどです。
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提供元:「気温差不調」でつらい人にお勧め"漢方的対処法"│東洋経済オンライン