2024.08.16
夏の防災対策は「冷蔵庫」が肝、今こそ安全確認を|動画やイラストが豊富、役立つサイトを紹介
夏場に大きな地震がきたら、一番困るのが冷蔵庫。いつ来るかわからない地震だからこそ、冷蔵庫の開閉防止グッズは普段からつけておきたい(写真:筆者撮影)
8月8日に「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」が発表されました。まもなく1週間がたとうとしていますが、台風も続いて発生しており、今できる「備えのポイントは?」「旅行に行ってもいいの?」「持ち物は?」という声を多くお聞きしています。
そこで本記事では、耐震化・家具対策・ブロック塀のリスクについて、簡単に楽しくわかるサイトを集めたので、備えの参考にしてみてください。
冷蔵庫対策と夏の時期の注意点
まず数ある耐震対策の中でも、この時期、注意して確認しておきたいのは「冷蔵庫」です。
地震の大きな揺れで、冷蔵庫はあらぬ位置に移動してきます。固定され、扉の開閉防止ができていれば、停電してもクーラーボックスと同様に冷蔵庫自体に保冷効果があるため避難生活に役立てることができます。
そうは言っても、転倒防止グッズや開閉防止グッズと、両方買うとなると出費が増えますよね。これについては、以下のことを想像していただくと「対策します」と言ってくださることが多いと感じています。
それは、被災後の掃除と処分の大変さです。
卵が割れ、食料が散乱し、腐敗臭だらけの中、掃除することを想像してください。地震が続けて起こる危険もあります。さらに冷蔵庫自体が壊れてしまったら、時間と労力をかけて捨てに行くことになります。
この大変さを想像すれば、転倒防止グッズと開閉防止グッズに投資してもいいと思ってくれるのではないかなと考えています。
【写真】自宅の災害対策ですぐやりたい「冷蔵庫の転倒と開閉防止」グッズ、実際の設置の様子など(8枚) ※外部サイトに遷移します
冷蔵庫の転倒防止グッズ設置例(写真:筆者撮影)
そのうえで、今はいつもより多めに保冷剤や冷凍食品を冷凍庫に入れておくのはいかがでしょうか。多くの冷凍庫はモノが十分に入っているほうがよく冷えます。
アウトドア用に保冷期間の長い保冷剤もあり、普段の買い物の保冷剤としても役立ちます。夏の災害および熱中症対策としても体を冷やしてくれるものは確保しておきたいです。
ペットボトルに水を入れて凍らせておいても保冷剤代わりになります。停電したら、保冷剤の一部や凍ったペットボトルを冷凍庫から冷蔵庫に移動します。そうすれば融解熱の作用で冷蔵庫内を冷やせます。溶けた水は飲用や生活用水に使います。
停電時、冷凍庫内の食料は、より保冷機能の高いクーラーボックスに移す方法もあります。現在、販売されているクーラーボックスは性能の高いものがたくさんあります。
保冷効果の高い保冷剤の例(写真:筆者撮影)
また、忘れがちなこととして、常温保存できる食品でも35度を超えると日本産業規格の「常温」の定義を超えてしまいます。気温が35度以上となってしまう昨今、災害で停電したら、放置せず保冷も検討してください。
冷蔵庫が新しく、節電タイプであれば、ポータブル電源などを使い、少しの電力で冷蔵庫を動かし続けることも可能になります。
夏の災害時に冷蔵庫が使えることは、食料確保だけでなく熱中症対策にもつながり効果が高い対策となります。その意味でも、電気代のかさむ古い冷蔵庫は買い替えを検討するほうが良いでしょう。
3分でできる耐震性有無の簡易チェックシート
そして、そもそもの前提として、自宅等の耐震性について確認しましょう。
今回も、南海トラフ地震臨時情報が出たあと、備蓄品や防災グッズをそろえた方は多いと思いますが、家が倒壊するとどんな対策も役に立たなくなります。津波から避難もできません。どれほど何もできなくなるかは、前記事「『地震発生から自宅倒壊まで3秒』そのとき何が」も参考にしてください。
「『地震発生から自宅倒壊まで3秒』そのとき何が」 ※外部サイトに遷移します
能登半島地震は1月1日だったため、両親の家や、親戚宅、旅行先で被災された方も少なくありませんでした。現在は、夏休み期間中なので自宅以外で過ごすことも多い時期です。滞在予定先の耐震性も一緒にチェックしてみてください。
たとえば、東京都が発行している防災ブック『東京防災』の耐震化チェックシートは、木造家屋について簡易的に13項目でチェックできるシートになっています。
木造家屋の耐震化チェックシート(画像:『東京防災』を参照し、東洋経済作成)
気になる項目が多ければ、近いうちに専門家に耐震診断を受けたほうがよいでしょう。寝室やリビングのみなど部屋だけの耐震リフォームも可能です。さまざまな補助制度を設けている自治体もありますので、確認してみてください。
家具などの地震対策は?見てほしいサイト
前述した冷蔵庫同様、家具の対策について参考になる最も新しい情報が、東京消防庁の『家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック』(2024)です。
『家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック』 ※外部サイトに遷移します
ネット上の情報の中には古いままで更新されていないものもあります。検証動画があったとしても、例えばマンションでは長周期地震動対策が必要になるので、マンション以外の動画やライフハックが役立たない場合があります。
新しい情報で、エビデンスや前提条件がわかるものを参考に対策してください。サイト内にチェックリストもあります。
チェックリスト ※外部サイトに遷移します
家具の転倒等防止(家具転対策)の手順は、
1. 家具などを減らす
2. レイアウトを工夫
3. 家具などの転倒・移動防止
です。
子どもと15秒で家具転対策の手順を確認できる東京消防庁のYouTubeアニメ動画『地震から命を守る家具転対策!』もあります。
レイアウトを工夫する場合、寝ている場所に落ちてきたり、倒れてきたりするものを置かないことを最優先に対策をしてください。寝ている時が一番無防備になります。
参考までに東京消防庁は、B-VRというCGを使ったVR動画を公開しています(防災教育VR「B‐VR(ビーバー)」特設ページ)。
防災教育VR「B‐VR(ビーバー)」特設ページ ※外部サイトに遷移します
首都直下型地震を想定しているので(動画ではM7.3の震度6強)、揺れている時間は南海トラフ地震の想定より、短いです。「もっと長い時間揺れたらどうなる?」を想像して見ていただければと思います。
自宅編、通学路編、学校編があり、360度VR動画なので、画面をスクロールして、家具やブロック塀に焦点を合わせ、転倒までの詳細な動きを見ることができます。
冷蔵庫の中身が出て倒れてきたり、ソファやテレビが飛んできたりします。机の下に潜ろうとしても、机が飛びながら転倒し、ガラスも一瞬で割れています。
YouTube動画「【首都直下地震】防災教育VR「B‐VR(ビーバー)」~学校編~」(画像:東京消防庁公式チャンネル @tokyo_fire_deptより)
震度6強になると、揺れている最中に動けません。事前対策こそが重要で、そのポイントが視覚的にわかります。親子で学習できるシートも無料でダウンロードできます。
映像は子どもが怖がりすぎないように配慮されていますが、実際に親子で対策を取ってみることが安心にもつながります。
机が飛ばない対策
学校編の動画では学校の机も飛んでいます。能登半島地震の被災地でも、机の下に潜った方が、机ごと飛ばされた体験談もお聞きしました。
ダイニングテーブルや学習机の足元に耐震のゲルマットをつけることは、すぐに対策しやすいので、親子で実施してみてください。
耐震のゲルマットの例(写真:Graphs / PIXTA)
安価なものでよいかどうかの質問が多くありますが、値段にかかわらず品質が保証されているものの多くは、「第三者機関による実験結果」「成分」「耐荷重量」が記載されています。
特に赤ちゃんがいる家庭やペットがいる場合は、舐めてしまうこともあるので、最低限、成分の記載があるものをお勧めしています。
危険なブロック塀をイラストで確認
ブロック塀は震度5強で倒れてきます。標準的な重さのものは1個10キロあります。数個でも子どもの体重を超えてしまいます。それが塊のまま一瞬で倒れてきます。
過去の地震での死者数を見ても、全死者数が少ない場合にブロック塀で亡くなる確率が高くなっていて、死者の死亡要因がすべてブロック塀によるものだった、という地震が2例あります。建物の被害が少ない場合でも、倒壊すれば死者を出す、それがブロック塀です。
(出所:徳島大学環境防災研究センター ・公益社団法人徳島県建築士会「あなたにもできる ブロック塀の健康診断」(2021))
この時期にしっかりブロック塀のある場所を把握して、「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」の間は、近くを通らないことも重要です。倒壊したブロック塀は命を奪うだけでなく、津波避難を妨げる障害物になります。
危ない「ブロック塀ズ」をイラスト化したものがあります。ダウンロードしてお使いいただけるので、親子でイラストを参考にブロック塀の場所を把握してください。
ダウンロード ※外部サイトに遷移します
危ない「ブロック塀」のイラスト(出所:徳島大学環境防災研究センター ・公益社団法人徳島県建築士会「あなたにもできる ブロック塀の健康診断」(2021))
「厚底ブロック塀」「肌荒れブロック塀」というネーミングとイラストが楽しいので、子どもも探しやすいです。巨大地震注意情報を受け、近所を調べたところ「ないと思っていたのに通学路にもまだあることがわかった」と驚かれた方もいました。
ブロック塀に関しては、自然災害というより過去の教訓を生かせていない人災そのものです。住民が高齢でブロック塀撤去に手をつけられない場合も多いので、個人の自助まかせではなく、地域の課題として撤去や改修を急ぐ必要があります。
【写真】自宅の災害対策ですぐやりたい「冷蔵庫の転倒と開閉防止」グッズ、実際の設置の様子など(8枚) ※外部サイトに遷移します
以上、簡単にできることから今後に向けた検討も含めて、耐震化・家具対策・ブロック塀についてまとめました。津波避難やカバンに入れておくべきものについては、次の記事でご紹介しますので参考にしてください。
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提供元:夏の防災対策は「冷蔵庫」が肝、今こそ安全確認を|東洋経済オンライン