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2024.05.13

「歩きスマホ」の習慣がもたらす想像以上の悪影響|人にぶつかるだけでは済まない「深刻な事態」も


スマホの使い過ぎがもたらす悪影響は、視力の低下だけにとどまらないという(写真:つむぎ/PIXTA)

スマホの使い過ぎがもたらす悪影響は、視力の低下だけにとどまらないという(写真:つむぎ/PIXTA)

視力が落ちる、目が疲れる、乾く、かすむ……いずれもスマホの使いすぎによる弊害としてよく知られたものですが、眼科専門医の松岡俊行氏によれば「実はスマホの本当の怖さは別にある」といいます。現代人の生活にとって欠かせない必須アイテム=スマホがもたらす意外な悪影響とは、いったいどんなものなのでしょうか。

*本稿は松岡氏の著書『スマホアイ 眼科専門医が教える目と脳と体を守る方法』から一部抜粋・再構成しています。

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歩きスマホで人にぶつかりそうになる理由とは?

駅や街中で「歩きスマホ」をしている人をよく見かけます。みなさんも、よくないとわかっていながら、仕事でどうしても見なければいけないなど、ついやってしまうことがありますよね。

なかには、スマホでメールやニュースを読みながら歩いていると、突然目の前に人が現れてうっかりぶつかりそうになる……そんな経験がある人もいるのではないでしょうか。

このとき、あなたの目のピントはスマホの小さな画面に合っています。すると周囲が視界に入っていても、実は認識されていないことがあります。単に注意が散漫になるだけでなく、視界に入っても認識できない、つまり周囲が”見えていない”状態になるのです。

このような視野の狭窄は「スマホ視野」ともいわれ、愛知工科大学の小塚一宏名誉教授によれば「画面を凝視している状態では視野の95%が失われる」という実験結果もあるそうです。

「スマホ視野」の見え方のイメージ(出所:『スマホアイ 眼科専門医が教える目と脳と体を守る方法』より)

「スマホ視野」の見え方のイメージ(出所:『スマホアイ 眼科専門医が教える目と脳と体を守る方法』より)

※外部配信先では図表を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください

そもそも、ものが「見える」のは、目に映ったものを脳が認識しているからです。

ところが視界の中心にある対象物だけを凝視していると、脳は「周りは見なくていいや」と判断します。周辺視野の視細胞は機能していて、脳へ刺激が伝わっているにもかかわらず、認識しなくなるのです。

怖いのは、ずっとスマホの画面ばかり見ていると中心ばかりに注意が向けられ、周辺視野の刺激を感じないように脳が調教されてしまうようなこと。幼いころからスマホの画面を凝視することに慣れてしまっている場合は、周辺視野に注意を向けるための経験が不足したまま成長していくことになります。

その結果、本来は広いはずの視野が狭まり、視界の中心しか認識できないスマホ仕様の目になってしまうのです。

「運動が苦手」は視野が原因のことも

周辺視野は歩きスマホで起きるような危険から身を守るためにも大切ですが、運動能力にも深く関わっています。

たとえばプロのサッカーなどでは「視野が広い」といわれる選手がいます。周りの選手の動きがよく見えていて、意表をつくようなパスを出したりする選手です。後ろにも目がついているの? と思うほど彼らの周辺視野を見る能力は優れています。

このような能力は生まれつき備わっているわけではありません。子どものころから外に出ていろいろな経験を積むことで周辺視野にも注意が向くようになり、ボールや石が飛んできたときに「これは避けなきゃいけない」などと判断するなかで、視野の広さが磨かれていくわけです。

ところが小さいころからスマホ漬けで視野が狭くなると、人とよくぶつかってしまったり、飛んできたボールを避けたり捕ったりするのが苦手になったりすることがあります。

そんな経験が積み重なると、スポーツ自体が嫌になってしまう子どもも少なからず出てくることでしょう。運動神経や筋力などとは関係がなく、目のせいで運動が苦手になってしまうことだってあるのです。

立体感、遠近感をつかむ機能が低下

遊園地のアトラクションなどにある、3Dで飛び出してくる映像を見たことがあるでしょうか。とっても臨場感があって楽しいアトラクションですが、実は飛び出して見える人と、そうでない人がいます。

これは、目の「両眼視機能」がうまく働いているかどうかの違いです。
両眼視機能とは、同時に両目でものを見る能力のことで、水中から陸上へ上がった生き物のなかで、人をはじめとした限られた動物だけが身につけています。

この機能は同時視、融像、立体視に分類されます。左右の目で捉えた情報を脳内で合わせることで、立体感のある映像として認識することができ、遠近感もつかめるわけです。

(出所:『スマホアイ 眼科専門医が教える目と脳と体を守る方法』より)

(出所:『スマホアイ 眼科専門医が教える目と脳と体を守る方法』より)

なんだか難しくてピンとこない人は、もし近くにゴミ箱があったら、丸めた紙を投げ入れてみてください。最初は両目で見て、次に片目をつむってやってみると、片目のときは遠近感がうまくつかめないのがわかると思います。もしくは、その辺にあるコップやペットボトルを片目でつかもうとすると、ちょっと距離感に不安がありませんか? それは両眼視機能が働いていないからです。

この両眼視機能が、スマホの使いすぎによってうまく働かなくなる危険があります。もし、あなたのお子さんが20センチや15センチなど、非常に近い距離でずっとスマホを見ているとしたら危険です。

両目で近くを凝視すると黒目が中央に寄った「寄り目」の状態で固定されます。それが長時間続くと黒目が内側に寄って戻らない急性内斜視になることがあります。

両眼視機能は、視力に左右差がある場合や、内斜視などで目の位置や眼球運動に異常があるとうまく働きません。

急性内斜視は一時的なものですが、スマホの使いすぎで内斜視が続くと片目で見るくせがついたりしますし、寝転がってスマホを使うと左右の視力に差ができたりします。こうしたことが結果的に両眼視機能に悪影響を及ぼすのです。

また、両眼視機能は、生後さまざまな経験を積むなかで磨かれていきます。子どものころからスマホばかり見ていると、疲れるうえに経験も不足して両眼視機能が十分に育まれない危険もあるでしょう。

スマホの画面は平面ですから、立体視ができなくても文章を読んだり漫画を読んだり動画を見たりできますよね。そういう平面環境に合った目になってしまうともいえます。

自転車や車で事故を起こしやすくなる危険も

さて、立体視を含む両眼視機能が弱いと、どんなことが起きるでしょうか。

まず遠近感がうまくつかめず、階段を踏み外したり、つまずいたり、何かにぶつかったりしやすくなります。先に紹介した「視野狭窄」と同じく、両眼視機能の低下も運動能力に大きく影響してくるのです。

具体的には、自分に向かって飛んできたボールをキャッチしたり、あるいはバットで打ったり、バスケットのゴールにシュートしたり、といったことがうまくできなくなるでしょう。たとえば、「足は速いが、球技が苦手」といった子は、要注意かもしれません。

また、自転車の運転でも、歩行者や障害物との距離感、自分の自転車の立体感などを把握できないために、事故を起こしやすくなってしまうかもしれません。

もちろん、自動車の運転も同様です。実際に、大型自動車やバスなどの免許を取る際には普通の視力検査とは別に「深視力」の検査があります。

深視力とは、遠近感や立体感、奥行きを捉える能力のことで、大きな車の運転には両眼視機能が重要と考えられているのです。

この深視力については、行動評価システム研究所がスポーツビジョンと呼ばれる8項目とアスリートの競技力との関係を調査したところ、深視力による差が最も大きかったとも報告されています。

たとえ視力が1.5でも文章が読めなくなる

あなたは今、この文章をスムーズに読めていると思います。

左から右へと視線を動かして文字を読み取り、次の行へピョンと飛んでまた下へ。スラスラと読めるはずです。でも、こんなふうになってしまう人もいます。

● 行を飛ばして読んでしまう

● 同じところを何度も繰り返して読んでしまう

● どこを読んでいるかわからなくなる

● 指でなぞりながらでないと読めない

これは視力の問題ではありません。

たとえ視力が1.5だろうと2.0だろうと、先ほど述べた両眼視機能などの「視覚情報を分析し、認知・判断・理解する機能」に問題があると、このような症状が起こりえます。

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『スマホアイ 眼科専門医が教える目と脳と体を守る方法』(アスコム) クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします

文章がうまく読めないのですから、集中できないうえに、読むだけで疲れてしまいます。

当然、学習の効率は悪くなるでしょうし、やる気がなくなってしまうこともあるでしょう。

算数の計算は得意なのに文章題が解けないということもありえます。

文章が頭になかなか入ってこず、計算に取り掛かるのが遅くなってしまうわけです。

スマホが手元にあるだけで集中力が削がれるなどとよくいわれますが、スマホは見る機能を弱めることで間接的に子どもの勉強を邪魔していることもあるのです。

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提供元:「歩きスマホ」の習慣がもたらす想像以上の悪影響|東洋経済オンライン

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