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2024.03.28

国内企業が"瞑想"を取り入れてもパッとしない訳|日本人の行動力を上げる「新マインドフルネス」


日本人が瞑想をしても、行動力が上がらないのはなぜなのでしょうか(写真:プラナ/PIXTA)

日本人が瞑想をしても、行動力が上がらないのはなぜなのでしょうか(写真:プラナ/PIXTA)

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「先延ばし」は多くの人にとって悩みの種。

「とにかく1分だけやる」「作業をできるだけ小さく分けてやる」「ご褒美を用意する」

「先延ばし」を克服する本や、コツは世の中にあふれていますが、そのコツさえ実行するのを先延ばしにしてしまう! そんな方が多いのではないでしょうか。

そんな「ずぼら」だけど、変わろうとしている「マジメ」な人のために、禅という新たな視点から行動する技術をまとめたのが新刊『クヨクヨしない すぐやる人になる 「心の勢い」の作り方』です。

著者である禅僧・精神科医の川野泰周氏と経営コンサルタントの恩田勲氏によると、マインドフルネスのルーツである禅には、「心を落ち着かせる」要素だけではなく、「心を勢いづける=モメンタム」の要素も多く含まれていると言います。

以下では、「なぜ日本人はマインドフルネスで行動できないのか?」について解説します。

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「禅」から切り離された「行動力」の要素

マインドフルネスの源流である禅の修行には、モメンタム(=心の勢い)の要素が含まれています。

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しかし、ここで疑問が生じます。

これまでに欧米で開発され、心理療法の分野で、あるいはIT分野をはじめとする大手企業で導入されてきたマインドフルネスは、リラックスと注意力のコントロールに主眼を置いた手法であり、モメンタムの要素はさほど重視されていないように感じられます。

なぜ、マインドフルネスとモメンタムは、切り離されてしまったのでしょうか。

私の推測は「禅や瞑想といった仏教瞑想に科学のメスを入れ、欧米文化に馴染み、多くの人が親しめるストレス低減法にするため、宗教的要素を取り除く必要があった」というものです。

宗教としての禅には、一般の人にはわかりにくい部分がたくさんあります。

例えば禅は、「何かのために」修行することをよしとしません。

後述するように、マインドフルネスには「気持ちが落ち着く」、多くのメリットがあります。

その一つがモメンタム的な要素です。

日本人が瞑想で行動的にならない理由

しかし、「〜のためにマインドフルネスをする」という目的意識があまり強いと、「今、この瞬間」に意識を集中できません。

大切なのは無心になること自体であり、数々のメリットはその結果に過ぎないのだと、禅は説きます。

ですから一般的には、禅の側から進んでマインドフルネスに含まれるさまざまなメリットなどを紹介することはしません。

ただ私(川野)は精神科の医師でもあり、坐禅をするとこんな効果があります、と医学的なエビデンスを挙げて患者さんにおすすめすることもあります。

誰であれ、何かしらご利益があったほうが、実際にやってみようと思えるからです。

おそらく、禅の修行を長く積まれた偉い和尚さまに坐禅の効果を尋ねても、「坐禅をしても、何にもならん」と一言返ってくるでしょう。

それは「ご利益がない」と言っているのではありません。

「ご利益を求める心で修行してはいけないよ」というのが、禅本来の考え方なのです。

「欧米的マインドフルネス」がメジャーに

目的を求めてはいけない、でも実践することにはメリットがある。

日本人が瞑想をしても、行動力が上がらないのは、なぜか?(イラスト:『「心の勢い」の作り方』より)

日本人が瞑想をしても、行動力が上がらないのは、なぜか?(イラスト:『「心の勢い」の作り方』より)

この一見矛盾するかのような「日本的マインドフルネス」の考え方が、資本主義に根差した欧米では理解されにくかったために、いろいろな要素を削り落として極めてシンプルにした「欧米的マインドフルネス」が広まったのではないか。

そんなふうに私は考えています。

閑話休題。こうして、禅がマインドフルネスへとアレンジされる過程で、モメンタムの要素は影をひそめていきました。

しかしそれは、欧米においては狙い通りの成果をもたらしたといってもいいでしょう。

リラックスと集中力強化のためのスキルとしてマインドフルネスはわかりやすく体系化され、海外企業に定着していきました。

ところで、このような疑問を持って私は、マインドフルネスをビジネスの世界で実践的に活用することから、経営コンサルタントとして企業内の創造性開発や人材のパフォーマンス改善、組織開発などに取り組んでいる知人の恩田社長に意見交換を持ちかけました。

その際、恩田さんは次のような話をしてくれました。

「欧米の文化は個人主義的に自立心を幼少から醸成するので、もともと前進思考のモメンタム的な素養を持っている人が多いということです。

そんな彼らにとっては、心を癒やす必要性には目が向いても、勢いづける必要性への関心は低かったのかもしれません。

そういった文化の違いを考慮しないで、欧米で流行りだからと丸呑み的に日本に持ち込んでも(逆輸入ですが)、やはり体感的にどこか違和感が生じてくるので定着が難しくなっているのかもしれませんね」

確かにこれも、マインドフルネスとモメンタムが分離してしまった一因のように思えます。

私から見ても、欧米から逆輸入されるかたちで日本に上陸したマインドフルネスは、欧米ほどには定着していないように感じられます。

日米における、マインドフルネスの違い

その原因として考えられるのは、やはり恩田さんの見解のように、文化を背景とする日本人と欧米人のマインドの違いが壁になっているように思われます。

欧米人、特にグーグルやアップルの社員のようなエリート層は、高い自己肯定感を備えていて、基本的に「ポジティブ」な人が多く、人生においても「あれを達成したい」「これを目標にしている」といった強い目的意識を持っています。

つまり、彼らのモメンタムはもともと高い状態にあるということです。

そのため、一時的に心が疲れることがあったとしても、マインドフルネスによって心理的疲労(あるいは脳疲労)が回復すれば、自浄作用が働いて彼らは本来のポジティビティをすぐに取り戻します。

仕事においてもより活動的になり、業務効率の改善や生産性向上など、目に見える効果が表れてきます。

欧米企業がマインドフルネスに積極的なのも、こうした明らかなメリットを期待してのことと思われます。

彼らがマインドフルネスに期待しているのは、「癒やし」の効果自体よりも、それによって引き出される行動力、というわけです。

一方、日本人は欧米人に比べて仕事に対する目的意識が薄く、また自己肯定感も低いというデータが知られています。

目的意識のないところに、モメンタムは生じません。

目的意識のない人生とは、進むべき方向が見えない人生、何をしたらいいのかわからない人生でもあるからです。

そのため、マインドフルネスで心の疲れを軽減しただけでは、次の行動につながらない可能性があります。

日本人にあった「マインドフルネス」

結果、モメンタムは発動せず、「なんだかパッとしない」状態を脱することができないため、生き方そのものをポジティブに変えるまでには至らないという人が少なくありません。

心理療法としてのマインドフルネスは、うつや不安といった心の症状を緩和したり、再発を予防したりする効果に関してすでに信頼に足るエビデンスが確立されていますし、さらなる活用が期待されています。

しかし、国内企業向け、あるいは一般の方向けに今一つマインドフルネスの普及が進まない原因の一つは、この「モメンタム要素の不足」にあるのではないかと思うのです。

これまで10年近くにわたりマインドフルネスの普及に取り組んできた私が、あらためてモメンタムに注目した理由が、ここにあります。

欧米型のマインドフルネスが日本の水に合わないならば、日本人の手で、日本人の心性に合ったマインドフルネスをつくればいい。

私たちが目指しているのは、「癒やし」や「集中力トレーニング」だけで終わらず、心に勢いをもたらし、人間本来の行動力を取り戻すための、新しいマインドフルネス。

そのために、モメンタムが必要不可欠だと考えたのです。

日本人が「マインドフルネス」に加えて「モメンタム」が必要な理由(図:『「心の勢い」の作り方』より)

日本人が「マインドフルネス」に加えて「モメンタム」が必要な理由(図:『「心の勢い」の作り方』より)

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提供元:国内企業が"瞑想"を取り入れてもパッとしない訳|東洋経済オンライン

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