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2023.07.19

【爪の水虫】10人に1人が感染、爪切りの「NG行為」|塗り薬より飲み薬で内側から効かせるのが有効


足の爪が変色した、厚くなった……。そんな場合は爪水虫を疑ったほうがいいかもしれません(写真:Ushico/PIXTA)

足の爪が変色した、厚くなった……。そんな場合は爪水虫を疑ったほうがいいかもしれません(写真:Ushico/PIXTA)

自分の足の爪をあらためて見ると、どうだろう。黄白色や白色に濁っていたり、分厚くなっていたりしないか。あるいは、ボロボロになって「カス」が落ちることはないか――。
そんな症状が表れる病気の1つに爪水虫(爪白癬=はくせん)がある。カビの一種の白癬菌が爪に感染して発症し、進行すると爪がボロボロになる。爪水虫に詳しい埼玉医科大学総合医療センター皮膚科教授の福田知雄医師に治療法と予防策を聞いた。

爪は皮膚の一部で、ケラチンというタンパク質でできている。「指先を保護してケガを防ぐ」「手で小さなものをつかむなど、細かい作業をしやすくする」「歩行時のバランスを保つ」といった役割を担っている。

健康な足の爪は表面がツルツルしていて、薄いピンク色。前から見ると、真っ平ではなく、わずかに湾曲している。これに対して、爪に何らかの問題が起こると、色が濁ってきたり、分厚くなったりする。

その1つが爪水虫だ。「原因となる水虫菌は、ケラチンを栄養分として生きています。皮膚や爪だけでなく、髪もケラチンでできており、頭の先からつま先まで、どこでも感染は成立します。そのなかで一定の割合を占めるのが爪水虫です。すべての爪に感染の可能性がありますが、足の親指の爪が多いです」(福田医師)

10人に1人がかかる爪水虫

過去に全国の皮膚科で行われた複数の調査によると、爪水虫は日本人の10人に1人がかかっていると推定される。男女比は5対5あるいは6対4となっており(足の水虫を含む)、女性も一定の頻度で罹患していることがわかった。患者の年齢別では、男女とも30~40代から加齢とともに有病率が上昇していた。

「爪水虫は、足の皮膚で増殖した水虫菌が爪の周りの皮膚から爪に入り込み、感染が広がります」と福田医師。実際に、前述の調査では爪水虫患者の7~8割は足の水虫も持っていた。足の水虫を長年放置していたり、治療が不完全だったりしたことが、発症の一端となっているというわけだ。

爪水虫にはいくつかの種類があるが、最も多いのは、爪の先端で感染し、徐々に爪の中心に向かっていくタイプ。爪も先端から中心に向かってもろくなっていく。最終的にはその爪全体が厚くなる。

爪に異常が見られても軽症だと自覚症状は乏しいため、異常と気づかずに放置しがちだが、時間とともに爪の肥厚、変形が進む。

福田医師への取材を基に東洋経済作成

福田医師への取材を基に東洋経済作成

最終的には、爪の機能が損なわれたり、整容面で支障をきたしたりする。例えば次のような問題が生じやすい。

■爪が厚くなり、切りにくい

■靴が履きにくい、履くと圧迫されて足の指が痛む

■踏み出したときのバランスがうまく取れず、歩きにくい。高齢者では転倒、骨折のリスクになる

■見た目が気になって、つま先が見えるサンダルが履けない

このほか、足の爪より頻度は低いが、手に爪水虫ができた場合は、名刺交換やスマートフォン決済などで手を出しにくいといった問題も生じる。

最大の問題は、爪が水虫菌の「貯留庫」になっている点だ。

エサが多く、適度な湿度と温度がある足の爪は、水虫菌にとっては最高の環境ともいえる。したがって治りにくく、治っても再発を繰り返しやすい。そのうえ、ポロポロと落ちた爪の粉やかけらには水虫菌が多く含まれていて、それらが周辺にばらまかれることで、他人に感染させてしまう。

爪水虫治療は「皮膚科」が原則

爪水虫の治療は、皮膚科で行う。見た目が似ている病気があり、見分けるには、濁った爪を医師がわずかに削り取り、顕微鏡で観察する検査など、専門的な技量が必要だからだ。

一般的な水虫は市販の治療薬(塗り薬)で対処できるが、爪水虫はそれだけでは「治らない」のも理由の1つ。逆に「塗っているから安心」と思っていたら、どんどん病状が進んでしまうといったことも危惧される。

爪水虫の治療では、水虫菌の発育を抑え、殺菌力のある抗真菌薬を用いる。2種類の塗り薬と、3種類の飲み薬が医療用医薬品として使用されている。この中から、爪の状態や患者の年齢、基礎疾患、患者の意向などに応じて選択されている。爪の濁りがなくなって、再び顕微鏡検査で観察しても水虫菌がいない「完治」がゴールだ。

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「主流は飲み薬で、血流で有効成分を爪の病変部に届かせます。塗り薬ではなく、飲み薬が推奨されるのは、薬を飲む期間が3~6カ月と比較的短く、治療成功率が高いからです。難治とされている爪水虫で、飲み薬でもまだ60%程度の人しか完治できませんが、それでもその割合は上がってきています」(福田医師)

飲み薬の主な副作用として、肝臓の障害がある。爪水虫は高齢者に多いので、基礎疾患で複数の薬を飲んでいる人や、肝臓の検査値が悪い人などは、飲み薬を使用できないこともある。そのような場合は塗り薬を使う。

塗り薬は液状で、直接、患部の爪に塗る。1日1回の塗布を少なくとも1年ほど、根気よく続ける必要がある。

メリットとしては、有効成分が爪と皮膚にとどまるので、内臓などに副作用が出るリスクはないことが挙げられる。一方、臨床試験では完治率が15~20%以下にとどまるうえ、塗った爪の周囲のかぶれのような副作用が表れるといった問題点がある。

「飲み薬にしろ、塗り薬にしろ、爪の色や肥厚を治すのではなく、水虫菌を抑えるのが薬の作用。言い換えれば、所定の期間、しっかり使用して水虫菌を殺せれば、あとは爪が生えかわるのを待てばよいのです」と福田医師は言う。

爪水虫の人の爪の切り方

薬を使用中にも根元から新しい爪が生えてくるわけだが、例えば、足の親指の爪が伸びるのは正常な爪でも1カ月あたり約1.5ミリ(年齢や季節により異なる)。厚くなった爪は伸びが悪く、生えかわるまで1年以上かかる。

ちなみに、水虫菌がすみ着いていた皮膚が、新しい健康な皮膚に入れ替わるまで約1カ月程度だ。福田医師は「爪水虫が足の水虫よりも治りにくいのは、爪の伸びの遅さが関係していると考えられます」と指摘する。

新しい爪に生えかわるまでの爪の手入れは、家庭内感染を防ぐ意味で重要となる。では、具体的にどんな点に気を付けたらいいのだろうか。実は爪を切るのは、爪水虫を防ぐうえで大切だという。

爪を切るときは、新聞紙などを敷いて、その上で行う。また、爪と皮膚との間にたまった粉は感染源となりかねないので、終わったら、切った爪や粉が散らばらないよう丸めて捨てる。そうしないと、周辺に水虫菌をばらまくことになる。

爪水虫が治るまでの間は、他の人と爪切りややすりを共有しないほうがよいそうだ。

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しっかり治療をして治したら、再感染させないこと。そのための日常生活上の工夫は足の水虫と同じく、いかにして自分の爪に水虫菌をすみ着かせないか。靴の中の湿度を高めない工夫や、足のケアについては、こちらを参考にしてほしい(関連記事:【水虫】スリッパ・バスマット、家庭内感染の盲点)。

【水虫】スリッパ・バスマット、家庭内感染の盲点 ※外部サイトに遷移します

夏本番を迎え、海やプールでは裸足で楽しみたい季節。普段の生活でも素足にサンダルで外出する機会がある。残念ながら今年は間に合わないが、健康的な爪を取り戻すためにも、爪水虫は徹底的に治すことが大事だ。

(取材・文/佐賀 健)

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埼玉医科大学総合医療センター皮膚科教授
福田知雄医師

1987年、慶應義塾大学医学部卒業、慶應義塾大学医学部皮膚科入局。国立東京第二病院皮膚科、杏林大学医学部皮膚科講師、東京医療センター皮膚科医長を経て2016年より現職。専門は皮膚真菌症、皮膚腫瘍。

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提供元:【爪の水虫】10人に1人が感染、爪切りの「NG行為」|東洋経済オンライン

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