2023.06.05
会議前に突然「動悸」に襲われた人の"不安"の正体|注目すればするほど「不安」はエスカレートする
ネガティブな見通しも、度が過ぎた不安に発展すると困りものです(画像:『不安に負けない気持ちの整理術 ハンディ版 (特装版)』)
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「毎日、イヤなニュースばかり……」「病気になるのが不安……」「失敗したらどうしよう……」
不安になってしまうのは誰にでもあることです。不安を感じたときは、まずは冷静になって「本当に不安に思うべきことは何か」を見極めることが肝心です。そして、適切な行動を見つけていく必要があります。
『不安に負けない気持ちの整理術 ハンディ版 (特装版)』では、精神科医・和田秀樹氏が、「不安と向き合う基本」から「不安に引きずられないコツ」「平常心で生きるコツ」「不安を力に変える習慣」まで、「不安とともに生きる考え方」を紹介しています。本稿では同書より一部を抜粋し再構成のうえ、毎日何かしら不安を持っている人へ心が軽くなる方法をお届けします。
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(画像:『不安に負けない気持ちの整理術 ハンディ版 (特装版)』)
不安なことを探すほど、不安はどんどん膨らむ
1、注目すればするほど不安はエスカレートする
★悲観的な未来を想像することを「予期不安」と呼ぶ。
★深く考えすぎると「予期不安」は膨らむ。
★無理なくできる小さな行動を見つけることが大切。
これは、私が知るビジネスマンAさんの話です。
Aさんは、会社で重要なプロジェクトのリーダーを任されました。何度目かのプロジェクト会議の最中、彼は緊張のあまり、激しい動悸に襲われました。
気持ちが焦れば焦るほど、動悸はひどくなっていきます。全身に汗が噴き出し、息が詰まるように苦しくなり、めまいや吐き気も続きます。
しばらく時間がたち、落ち着いてみると、体は元通りになりましたが、それ以来、会議が近づくと動悸が起こり、不安がよぎるようになりました。
これは、精神科や心療内科でパニック障害や不安神経症(不安性障害)などの病名がつくレベル。しかし、そこまでいかなくても、日常的にあれこれ悲観的に考えてしまう人はいます。
「地下鉄に乗っていて大地震が起きて閉じ込められたら嫌だな」
「繁華街で通り魔事件に遭遇するかもしれない」
不安なことを探して、それに注目すればするほど、考えれば考えるほど、不安はどんどん膨らみます。
具体的にできることを探してみよう
「○○が起きたらどうしよう」
と、将来の出来事についてネガティブな見通しを立てて、その対処法を考える。そのこと自体は悪いことではありません。何の準備もないままトラブルに見舞われたら、その場ですぐ冷静に対応するのは難しいでしょう。
ただし、ネガティブな見通しも、度が過ぎた不安に発展すると困りものです。特に、精神医学の世界で問題となるのが「予期不安」といわれるものです。
「予期不安」とは、これから起こるかもしれないことを心配し、悲観的な未来を予期・想像してしまう状態のこと。まだ起こる前だから、あくまで想像の世界の出来事です。
でも、物事を悲観的に考える人の予期不安は、どんどん大きくなりがちです。あまりにも大きく膨れ上がった不安には、具体的な対処法を見つけることもできません。
これに対して、あまり不安を感じない人は、不安を現実的に捉えて、無理なくできることを見つけようとします。
試しにちょっとやってみて、その結果を見てからその後のことは考えようとするのです。案ずるより産むが易しです。大切なのは無理なくできる小さな一歩を見つけて、行動できるような自分になることなのです。
(画像:『不安に負けない気持ちの整理術 ハンディ版 (特装版)』)
2、不安に感情を支配されるとまちがった判断をしてしまう
★不安な人は直面する問題を過大視する。
★目の前の不安に意識がいくと、大事な問題が見えなくなる。
★どんな人でも、不安のせいで判断をまちがう可能性がある。
不安になると目先にとらわれる
不安に引きずられる人は、目の前にある問題を「一番大きな問題である」と捉えがちです。目先の問題に意識を奪われてしまうと、どうしてもまちがった判断につながります。
例えば、2020年にはコロナ禍の混乱に乗じて「有効な薬の情報です」「給付金を支給します」などとかたった偽メールによる犯罪が多発しました。
Bさんも、そんな詐欺に巻き込まれた一人。Bさんは、飲食店を経営していましたが、緊急事態宣言が発出されて以降、売上が急速に減り、先行きを不安に思っていました。
そんな彼のもとに「総務省」という差出人から「2回目の特別定額給付金の特設サイトを開設しました」という文面のメールが届きました。リンクにアクセスして個人情報を入力すれば、簡単に申請の手続きができるというのです。
公的な発表もないまま総務省が給付金の情報をお知らせすることはないのですが、Bさんは焦って偽のサイトに情報を入力してしまいました。普段なら気づくことができたはずですが、不安につけこまれて、いつもならしないような判断をしてしまったのです。
振り込め詐欺は、不安感情をたくみに悪用した犯罪です。
「あなたの息子さんが会社のお金を使い込んだ。このままだと会社をクビになるだけでなく、前科者になる。でも、すぐに示談金を用意すれば許してもらえる」
不安感情に支配された人は、判断をまちがえる
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これは、詐欺グループが用意する典型的なストーリーです。あとから考えればつじつまの合わないことだらけでも「3時までにお金を振り込めば当日の入出金の記録に残らない」などと時間を区切られると不安感情が高まります。
さらに「内々で解決したいので、誰にも言わないように」などと言われるので、他人に相談できないまま、まちがった判断を下してしまいます。
だまされるのは一部の高齢者、などと言って済まされる話ではありません。現実に、一流大学を卒業して出世競争に勝ち抜いた人が、成果を出さなければ自分の立場が危うくなるという不安から、不正経理などに手を染めることがあります。
不正が明るみになるリスクを考えたら、およそ不合理な選択ですが、不安感情に支配された人は、判断をまちがえるのです。
(画像:『不安に負けない気持ちの整理術 ハンディ版 (特装版)』)
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提供元:会議前に突然「動悸」に襲われた人の"不安"の正体|東洋経済オンライン