2023.03.25
まばたきを軽視する人を襲う、目のダメージの正体|「5回に1回失敗」して、日本人の目がいまデコボコ
10秒目をあけられなければドライアイかもしれません(写真:metamorworks/PIXTA)
あなたは10秒目をあけられますか? もしつらいと感じたなら、ドライアイかもしれません。
今、日本人の多くが正しくまばたきできていません。速すぎたり、きちんと下までおりていなかったり……5回に1回まばたきに失敗している、そんな調査報告もあります。正しくまばたきできないと、目のうるおいは不足します。慶應義塾大学医学部・眼科学教室の綾木雅彦氏著『視力防衛生活』より、意外と知らないまばたきの役割と、目の回復につながるまばたきのコツをお伝えします。
『視力防衛生活』 クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします
現代人は涙不足。まばたきは減っている
人は1日約2万回、目をとじています。なぜだと思いますか?
答えは、目はとじるたび回復するから。上まぶたと下まぶたがバチリとくっつくことで目をコーティングする涙の油成分が分泌されます。目に新鮮な涙を供給し、角膜の表面を整えることで目に入ってくる光の散乱を減らす、それがまばたきです。
とくに、現代人の目は酷使されていて、目の回復の重要性は増すばかり。なのに、ちゃんと目をとじられていない「不完全まばたき」の人がとても多い実情があります。
この状況を引き起こしているのが「ストレス」、そして「スクリーン(デジタル画面)」の凝視です。
ストレスがかかって緊張しているとき、自律神経のうち交感神経が優位になり、目が見開き、まばたきの回数が不十分になります。また、涙の分泌量もおのずと減ります。
加えて画面を凝視するなど集中してものを見ると、まばたきは減ります。スマホを見ているとき、目が乾いた感覚を覚えたことはありませんか? スマホはつい見すぎてしまうもの。結果、まばたきが減り、目からうるおいがなくなっているのです。
スマホの見すぎに注意です(写真:rainmaker/PIXTA)
私は2015年から毎年、計1万2000人の患者さんの目の乾き具合を記録しています。結果、コロナ禍以降、涙の量は平均13%、目の保湿機能は平均23%減少していることがわかりました。在宅勤務によるパソコン作業時間の増加、スマホ時間の増加、そして環境の変化によるストレスが大きな要因と推測されます。
起きている間のすべてのまばたきのうち約18%、つまり5回に1回は、残念ながら不完全なまばたきに終わっている(とじきっていない、速すぎる)と推計されています。
まばたきが速すぎると、涙は十分出ません。診察していると、一瞬だけ上下のまばたきがくっつく「タッチアンドゴー」の人はとても多い印象です。
2015年から取り続けている患者さんのデータを分析しても、2015年は全体の5割、2022年は全体の約7割の人の目がデコボコになっていることが判明しています。不完全なまばたきにより、目の表面からうるおいがなくなっている人はとても多いのです。
目の涙液で「くっきり」見える
私たち現代人の1度のまばたきは、平均0.3秒といわれます。一日16時間起きている人が、まばたきのために目をつむる時間の累計は約96分。つまり、起きている時間の約10%は暗闇です。
この1割の時間で、まばたきは目に必須の作業をしています。
まばたきすることで、まぶたがワイパーのように目の表面をなぞって涙を塗り広げてくれます。角膜が車のフロントガラスだとしたら、まぶたはワイパー、涙が洗浄液です。細かなごみも瞬時に取り除き、適度なうるおいを与え、表面を整えてくれます。
あくびをすると、目がうるおって少し遠くが見えた経験はありませんか? 目の表面が涙で整い、視界が鮮明になって「見える力」が高まるからです。
正しいまばたきのコツ
正しいまばたきのコツはシンプルで、上まぶたと下まぶたをしっかり0.5~1秒くっつけること。普段のまばたきが0.3秒ですので、いつもより少し長めに目をとじる意識です。これにより生じた圧力で涙腺が刺激され、涙液が分泌されます。すると、目の表面にある古い涙が新しい涙と交換されることに。
『視力防衛生活』(サンマーク出版) クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします
涙にも、大事な役割がいくつもあります。血管がない目の表面に酸素や栄養を届けたり、目の傷を修復したり、殺菌作用を持つ物質で微生物の侵入を防いだりします。そして、目の表面をうるおしてなめらかにすることで、クリアな画像が目に入り、遠くと近く、見たいものにピントを合わせやすくしてくれてもいます。
涙はじつはずっと分泌されていて、目の表面をつねに理想的な状態で均一に覆おうとしています。それが達成できているか否かが、目の見える力と目の健康を大きく左右するのです。
まばたきは、まぶたの上げ下ろしの回数よりも、「きっちり深く」が大切です。ぜひ、いつもより少し長めにまぶたを着地させる意識で、目にうるおいを与えてあげてほしいと思います。1日2万回、目には回復するチャンスがあるのですから。
【あわせて読みたい】※外部サイトに遷移します
提供元:まばたきを軽視する人を襲う、目のダメージの正体|東洋経済オンライン