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2023.03.20

憂鬱な人がわかってない「気分の落ち込み」の正体|「誰も教えてくれなかった」一生役立つ心の健康法


気分の落ち込みは、誰にでもあることです(写真:Graphs/PIXTA)

気分の落ち込みは、誰にでもあることです(写真:Graphs/PIXTA)

気分の落ち込み、不安、ストレス、自信喪失……普段の生活の中で、心の浮き沈みは誰もが経験することでしょう。

心理学者にして臨床心理士のジュリー・スミス博士は、2019年からメンタルヘルスについてのアドバイス動画を投稿し始め、現在SNS総フォロワー数は300万、寄せられた「いいね」の数は2000万超え、イギリス公共放送BBCで特集される程の人気を集めています。

科学的根拠に基づきながら、自身やクライアントが実践して役立つことがわかった知識を網羅的に紹介する初の著作『一番大切なのに誰も教えてくれない メンタルマネジメント大全』より、一部抜粋、再構成してお届けします。

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気分について、まず知っておきたいこと

誰にでも、気分が落ち込む日はある。

誰にでも。

しかし、落ち込みの頻度や程度は人によって違う。

臨床心理士として長年働いてきてわかったのは、人は気分の落ち込みに苦しんでいながら、それを誰にも言わないということだ。友人にも家族にも、決して明かそうとしない。落ち込みを隠し、目をそらし、周囲の期待に応えようとする。そのようなことを何年も続けた末に、セラピーを受けに来る人もいる。

彼らは、自分はどこかおかしいのではないかと感じている。そして、気分の落ち込みを脳の欠陥と見なし、それを変えることはできないと思い込み、隠そうとする。日々、するべき仕事をこなし、そうすべき相手には笑顔を見せるが、いつも気分は少々むなしく、楽しめるはずのことを楽しめない。

ここで少し、体温について考えてみよう。今、皆さんは、暑すぎる、寒すぎる、あるいはちょうどいいと感じているかもしれない。暑いとか寒いとか感じるのは感染症や病気の兆候かもしれないが、その時の状況の反映にすぎない場合もある。たとえば暖かな上着を着忘れたとか、急に雨が降りだしたといったことだ。もしかすると空腹や脱水状態のせいかもしれない。また、発車しそうなバスに駆け込むと、体温は上がるだろう。このように体温は体の外と内から影響を受け、わたしたちは体温をいくらか上げたり下げたりできる。

気分もそれと同じだ。気分の落ち込みには内外のさまざまな要因が影響しているので、その要因がわかれば、望む方向に気分を変えることができる。原因は服を1枚多く着てバスに乗るために走ったことかもしれないし、他にあるのかもしれない。

科学的に確認され、多くの人がセラピーを通して学ぶ通り、わたしたちは自分が思う以上に、感情に影響を及ぼすことができる。

それが意味するのは、自らの幸福感に働きかけ、情緒を健全にできるということだ。つまり気分は変えられないものではなく、自分がどんな人間かを定義するものでもなく、一時的に経験する感覚にすぎないのだ。

だからと言って、落ち込みや憂うつな気分を容易に解消できるわけではない。人生は依然として苦難や苦痛や喪失をもたらし、それらは常に心身の健康に反映される。むしろ、それが意味するのは、ツールによって感情をコントロールできるということだ。それらのツールを使う練習をすればするほど、使い方はうまくなる。そうなれば、気分を叩きのめすような問題を人生が投げつけてきても、跳ね返すことができる。

気分は脳だけの産物ではない

睡眠時間は至福のひとときだ。しかし目覚まし時計がそれを妨害する。いきなり騒々しい音が衝撃をもたらす。わたしはスヌーズボタンを押して再び横になる。頭が痛み、イライラする。もう1度スヌーズボタンを押す。でも、そろそろ起きないと、子どもたちが学校に遅刻する。わたし自身、会議の準備をしなければならない。目を閉じてオフィスの机の上にあるやることリストを思い浮かべる。恐怖。いらだち。極度の疲労。今日は何もしたくない。

これは気分の落ち込みだろうか。この落ち込みは脳から生まれたのだろうか。なぜこんなふうに目覚めたのか、時間をさかのぼってみよう。

昨夜は遅くまで仕事をした。ベッドに入る頃にはくたくたで、階下に降りてグラス一杯の水を飲む気力もなかった。その上、夜中に2度、赤ん坊が泣いて、起こされた。つまり、わたしは睡眠不足で脱水状態だったのだ。そこへもってきて、目覚まし時計のけたたましいアラームに起こされたので、ストレスホルモンが全身を駆け巡り、心臓がドキドキしてストレスを感じた。

これらの信号のひとつひとつが脳に情報を送る。たいへんだ、たいへんだ、と。脳はその理由を探し、見つける。睡眠不足と脱水状態による不快感が気分の落ち込みの原因の一部だったのだ、と。

気分の落ち込みがすべて脱水状態のせいだというわけではないが、気分について語るときには、原因が常に脳にあるわけではないことを覚えておこう。原因は体の状態、人間関係、過去と現在、生活状態、ライフスタイルにもある。食事、考え、行動、記憶など、わたしたちがすること、しないことのすべてにある。気分は脳だけの産物ではないのだ。

脳は絶えず働き、何が起きているかを理解しようとしている。しかし、その手がかりになる情報は限られている。心拍数、呼吸、血圧、ホルモンといった体からの情報。見たり、聞いたり、触れたり、味わったり、嗅いだりという五感からの情報。それに行動や考えだ。脳はこれらの情報のすべてと、過去に同じような状況でどう感じたかという記憶をつなぎ合わせて、今何が起きていて、それにどう対処すればいいかを推測する。

その推測が時には感情や気分として感じられる。その感情をわたしたちがどう解釈し、どう反応するかが、次に何をすべきかという情報を体と心に送り返す(Feldman Barrett, 2017)。つまり気分に関しても、入ってきた情報によって出てくる結果が決まるのだ。

気分は思考・体の状態・行動と影響しあう

多くの自己啓発本は、正しい考え方をしなさい、と説く。それらの本は、「どう考えるかによって、感じ方は変わる」と言うが、往々にして肝心な点を見逃している。それはこの関係が双方向に働くことだ。どう感じるかによって考え方は変わり、悪くすると、否定的で自己批判的な考えを抱きやすくなる。気分が落ち込んでいると、思考パターンが良くないとわかっていても、別の考え方をするのは難しい。

ましてやソーシャルメディアでよく提唱される「常にポジティブに考える」というルールに従うのは、いっそう難しくなる。つまり、ネガティブな思考はネガティブな感情の原因ではなく、結果かもしれないのだ。だから、「考え方を変える」というのは、落ち込みを解消する唯一の答えにはならないだろう。

どのように考えるかがすべてではない。わたしたちがすること、しないことのすべてが気分に影響する。

誰でも落ち込んでいるときには、人前に出たくないだろう。普段なら楽しめることも、したいと思えない。けれども、長い間そうやって引きこもっていると、ますます気分は落ち込む。体に関しても同じ悪循環が起きる。あまりに忙しくて数週間、運動ができなかったとしよう。疲れていて気分も落ち込んでいるので、運動をする気になれない。こうして運動をしない期間が長くなると、無気力でエネルギー不足になる。エネルギーが不足すると、ますます運動から遠ざかり、気分はさらに落ち込む。つまり、気分の落ち込みは、さらに気分を落ち込ませる行動を招くのだ。

このような悪循環に容易に陥るのは、経験のさまざまな側面が互いに影響しあうからだ。しかし、それは、わたしたちがいかに悪循環に陥りやすいかを示す一方で、そこから抜け出す方法も示している。

思考、身体的感覚、感情、行動のすべてが影響しあって経験を生み出しているが、人はそれをひとまとめに経験する。そして、バスケットに編み込まれた籘づるの1本1本を認識するのが難しいのと同じで、経験を個々の要素に分解するのは難しい。それには練習が必要だ。

そうすれば、自分がどのような変化を起こせるかを理解しやすくなるだろう。次の図は、経験を分解するための簡単な方法を示している。

わたしたちがどのように気分の落ち込みの悪循環にはまり込むかを示した図。同時に抜け出す方法も教えている(Greenberger&Padesky, 2016)

わたしたちがどのように気分の落ち込みの悪循環にはまり込むかを示した図。同時に抜け出す方法も教えている(Greenberger&Padesky, 2016)

(外部配信先では図などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)

このように物事を分解すれば、自分を行き詰まらせる行動だけでなく、自分の助けになる行動も見えてくるだろう。

セラピーに来る人の大半は、感情を変えたいと思っている。自分が抱える不快な(ときには耐えがたい)感情から解放されて、喜びや高揚感といった豊かな感情を抱きたいと思っているのだ。セラピーでは、彼らが望む感情をボタン1つで作り出せるわけではない。けれども、感情は体の状態、思考、行動と密接に絡みあっていることを彼らは学ぶ。それらの要素は、自分で変えることができる。脳と体と環境の間では常にフィードバックが起きているので、それを利用して感情に影響を与えることができるのだ。

自分の体と心で起きていることを理解する

気分の落ち込みを理解するための最初の一歩は、経験の各側面を認識すること、つまりひとつひとつの側面に気づくことだ。この気づきは振り返ることから始まる。その日を振り返り、ある瞬間の経験を分解してみよう。時間をかけ、練習を重ねるうちに、リアルタイムでそれらの側面に気づけるようになる。そこに状況を変えるチャンスがある。

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セラピーでは、気分が落ち込んでいる人に、どのような形で不調を感じるかを尋ねる。すると彼らは、疲労感、無気力、食欲不振に気づく。「今日は何もする気になれない。わたしは怠け者だ。成功するはずがない。だめな人間だ」と考えていることに気づくこともある。あるいは、仕事中にしばらくの間トイレに隠れてソーシャルメディアをスクロールしたくなることに気づく人もいる。

こうして自分の体と心で何が起きているかがわかるようになれば、さらに視野を広げて、周囲の環境や人間関係に何が起きているか、それが自分の感情や思考や行動にどのような影響を与えているかに目を向けられるようになる。時間をかけて細かなことを理解するようにしよう。

──こんなふうに感じるとき、わたしは何について考えているのだろう? 体はどんな状態にあるのだろう? こんな気分になる前の数日間や数時間、わたしは自分をどのように扱っていただろう? これは感情なのか、それとも体の不調の現れにすぎないのだろうか?──問いは多くある。

答えが明らかな場合もあれば、複雑すぎてわからない場合もあるだろう。それはそれでいい。自分の経験を掘り下げ、書き留めていけば、自己認識力を高め、自分の状況を何が好転させ、何が悪化させるかに気づきやすくなるはずだ。

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提供元:憂鬱な人がわかってない「気分の落ち込み」の正体|東洋経済オンライン

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