2023.03.15
年金収入で不足する「3万3000円」解決するコツ|プチ稼ぎがあれば基本的な生活費は十分に賄える
将来的に、年金だけでは不足するかもしれない収入をプチ稼ぎで賄う方法を紹介(写真:pearlinheart/PIXTA)
人生100年時代に物価高が重なり、年金だけでは将来の生活費が賄えないかも……と、老後のお金の不安は募るばかり。しかし、長い老後をなんとか乗り切るためにと、つつましく暮らす努力をしたり、慣れない投資にチャレンジしたりすることだけが、正解なのでしょうか。生活経済ジャーナリストの和泉昭子さんが、親の介護を終えたご自身の経験から、定年後のセカンドライフの幸福度を上げるマネー戦略を提案します。
『定年後のお金、なんとかなる超入門 インフレ時代のセカンドライフ』から一部抜粋・再構成してお届けします。
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年金収入だけでの生活費の不足は月3万3000円?!
60歳で定年を迎えたあと継続雇用などで働き続けたとしても、65歳からは、主な収入が年金だけとなるケースが増えていきます。総務省が発表している家計調査によると、「夫65歳以上、妻60歳以上の無職世帯」の家計収支は、公的年金等の収入が23万7700円、基本生活費などの支出が27万700円と、1カ月当たり3万3000円不足するという結果に。
つまり、公的年金だけの収入では、年間約40万円は貯蓄を取り崩していくことになります。家を所有していれば固定資産税の支払いや家の修繕費が、そうでなくとも突発的に発生する家電の買い替えなど、予定外の出費もあるのですが、まずはこの不足分の3万3000円をバイトや副業などで補えれば、基本的な生活費は賄える計算になります。
そこで話題になっているのが、リカレント。社会に出てから自分が必要なタイミングで学び直すことで、キャリアアップやキャリアチェンジにつながる可能性が広がります。
年金受給が始まる65歳を過ぎても働き続け、少しでも不足分を賄うことができれば、その分貯蓄を取り崩さずに済みますよね。
スキルやキャリアをサポート「教育訓練給付制度」
そこでご紹介したいのが給付金をもらいながら新しいキャリアをサポートする「教育訓練給付制度」です。雇用保険やハローワークで、キャリアアップの訓練を受ける人への補助をしてくれる制度のことで、雇用保険の被保険者(離職後は1年以内まで)なら、誰でも受けられます。
国が人生100年時代を見据えて、手に職となるスキルを身に付けたい、新しいキャリアを習得したい人をサポートする制度なので、対象となる講座を受講し、資格を取得するなどの条件を満たすと、受講費用の一定割合が給付されます。対象となる講座は約1万4000講座。オンラインや夜間、土日に受講できるものもあるので、働きながら資格取得を目指すことができます。
この教育訓練制度には、雇用の安定、就職の推進を支援する「一般教育訓練給付」、速やかな再就職、早期のキャリア形成を支援する「特定一般教育訓練給付」、中期的なキャリア形成を支援する「専門実践教育訓練給付」の3つがありますので、受給資格の有無や手続きについては、居住地のハローワークで確認しましょう。
ちなみに、ユーキャンで50代の人気上位10位に入っている「登録販売者」「調剤薬局事務」「ファイナンシャルプランナー」「食生活アドバイザー®」「宅地建物取引士(宅建士)」「医療事務」の5つの講座も、「一般教育訓練給付」の対象です。給付金を受け取りながら自分の興味のある分野の資格取得を目指したり、定年後には職探しに有利な講座を探して、給付金を受け取り、かつ就職活動にも利用するなど、さまざまに一石二鳥な制度といえます。
ユーキャンで50代の人気の講座は、「教育訓練給付制度」を利用できる講座もある(出所:『定年後のお金、なんとかなる超入門 インフレ時代のセカンドライフ』)
このほかハローワークには、求職活動中の人が利用できる職業訓練もあります。ハロートレーニング(公共職業訓練・求職者支援訓練)といい、職探しを対象とした無料(※)の職業訓練制度です。この制度は、原則、仕事を探している意思があれば受けることができ、失業給付を受給している人を対象とした「公共職業訓練」と、失業給付を受給していない人を対象とした「求職者支援訓練」の2つがあります。(※:テキスト代は自己負担)
どちらの制度もハローワークで訓練の必要性があると認められることが条件となりますので、面接や筆記試験等がありますが、訓練が修了した後は、ハローワークが学んだ内容を生かせる企業への就職サポートをしてくれるので、就職への近道になる手段と言えます。
訓練の内容は、事務系(経理、簿記、医療)、IT系(プログラミング、Web制作)、福祉(保育士、介護福祉士)などさまざまなジャンルがありますが、申込の際、求職相談をハローワークにすることになるので、自分が向いていそうな分野や、シニア世代の就職に有利な分野など、相談しながら、訓練内容を決めるのもいいでしょう。
副業や社会貢献など月3万円程度のプチ稼ぎを目指す!
リカレントとは別に、現役で働くうちから、副業にチャレンジして、長く続けられそうな仕事を探しておくという備え方もあります。ある程度の専門的なスキルがある人は、得意分野のスキルを登録して仕事を受注する仕事仲介サイト「ココナラ」「ランサーズ」「クラウドワークス」などを活用。IT系の専門職や、経理、マーケティングのスキルなど、土日や夜間を利用して、副業の経験を積んでおくことで、今のうちから定年後の仕事を模索しておくことができます。
また、専門職でのスキルを生かすのは少しハードルが高いという人には、覆面調査やアンケートに答えるなどのプチ稼ぎや、手作りの作品をアプリで売るなどの、コツコツ稼いでおく方法もいいかもしれませんね。
さらに、65歳以降の働き方をイメージする場合には、自分の得意なことや好きなことをフックに仕事を探してみるという方法があります。
たとえば、人と接したり、お世話をすることが好きなら接客業や介護施設職員、IT系に強いならプログラマーやWeb制作なども考えられます。65歳、70歳と年齢が上がっていくと体力的にフルタイムで働くのは厳しくなっていくことも考えられますから、自分の好きを仕事にしながら少しだけ稼ぐという考え方に切り替えると気持ちもラクになります。
得意なことや好きなことをフックに新しい分野にチャレンジしてみることも(出所:『定年後のお金、なんとかなる超入門 インフレ時代のセカンドライフ』)
知識や経験を生かし、地域社会への貢献も
また、定年後に働くことは、お金のためだけでなく、体を動かすことや人に関わることを大事にしたいと考える人もいるでしょう。
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たとえば、住んでいる地域に貢献しながら働きたいなら、「シルバー人材センター」へ登録して働くという方法があります。シルバー人材センターとは、高齢者が知識や経験を生かし、働くことを通じて地域社会の福祉と活性化に貢献する組織のこと。全国の市区町村単位にあり、主に公益財団法人が運営しています。企業や一般家庭、官公庁などから発注された仕事をセンターが登録している会員に発注し、会員がその業務を行います。
業務内容は、経理補助やデータ入力などの事務作業や、スーパーなどでの商品の品出しや店内清掃。保育、介護などの補助業務や公園の草むしりや学校公務員業務など地域に貢献できる働き方です。
シルバー人材センターは、60歳以上のシニアが地域に貢献しながら働く仕組み(出所:『定年後のお金、なんとかなる超入門 インフレ時代のセカンドライフ』)
定年後もなるべく長く働き続けることは、お金のためだけでなく、社会とつながり続け、生活への活力にもつながるはずです。たくさん稼ぐ必要がなくなる老後だからこそ、新しい分野の仕事にチャレンジするなど、今までとは違った世界が広がるかもしれません。
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提供元:年金収入で不足する「3万3000円」解決するコツ|東洋経済オンライン