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2023.03.02

「幸福な人」「不幸せな人」付き合っている人の違い|実は双方のグループが交わらないという事実


幸福も不幸も他者へ伝染するというのは本当でしょうか(写真:Fast&Slow/PIXTA)

幸福も不幸も他者へ伝染するというのは本当でしょうか(写真:Fast&Slow/PIXTA)

脳科学から統計学まで、幅広い学術的根拠をもとに、「幸せに生きるにはどうしたらいいか」を研究する「幸福学」。その第一人者ともいえるのが、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科の前野隆司教授です。

前野氏によれば、幸福も不幸も人間関係を通じて“感染”するため、愚痴が多い“不幸な”友人と時間を過ごせば過ごすほど、自分もそちら側へ引っ張られると言います。同氏の『幸福学の先生に、聞きづらいことぜんぶ聞く』から、より幸福な人間関係を築く方法をご紹介します。

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ネガティブな会話ばかりの友人との集まり

10代から20代、20代から30代と年齢を重ねるにつれ、少しずつ人生の可能性が狭まっていくように感じる人は多いようです。拙著『幸福学の先生に、聞きづらいことぜんぶ聞く』に登場する30代の青年も、その1人。仕事も恋愛もパッとしない日々が続き、休日は単独行動することも多いそうですが、友人がいないこともないそうです。

であれば、彼らとの関係を充実させれば、人生が楽しくなりそうなもの。しかし青年によると、ここ2、3年で急速に、旧友との会話に飽きてきてしまったといいます。なぜでしょう。話を聞いてみると、「ネガティブな話題ばかりがループするようになってしまって……」とのことでした。

青年のいちばんの親友は、学生時代に同期だった男性。2人ともそれほど気の向かない仕事をダラダラと続け、今に至るまで同程度の年収だといいます。また、プライベートも似たようなもので、長く打ち込むような趣味もなく、女性との付き合いも得意な方ではなかったようです。

結果として、次々に結婚していく周囲をよそに、彼らがつるむ頻度も増えていったといいます。土曜の夜、いつもの居酒屋で、酔いとともに飛び出す愚痴の数々……上司が嫌だ、自分たちがモテないのはおかしい、あの有名人が嫌い、楽してカネが欲しい、などなど。それでも20代のうちは「そうは言っても、いつか人生が好転するだろう」という思いがあったため、愚痴を言うのもどこか楽しかったと青年はいいます。

そんな状況が最近は変わってしまったようですが、これは幸福学の観点からもいわば「黄色信号」。改善方法についてお話ししていく前に、まずは「青信号」の人間関係とは何なのかについてお話しします。

同じ友人と同じ話題を繰り返している現在の青年は、人間関係が固定化しかけている状態にあります。これが黄色信号であるとすると、そもそも、青信号の人間関係とはどのようなものなのでしょうか。私が博報堂と共同で行った研究が参考になると思います。

この研究では「人はつながると幸せなのか?」をテーマに、さまざまな地域で、調査対象者15,000人の「つながり」に関する7つの項目をまとめました。その内訳は、(1)人口密度、(2)同居家族数、(3)団体数、(4)つきあいのある親戚数、(5)友人の数、(6)親友の数、(7)Facebookの友人数です。

その結果をつながりの疎な人から密な人まで5~6グループに分類し、各グループのスコアを算出、比較したのです。その結果、同居家族や親友のような近くて深い人間関係よりも、つきあいのある親戚や友人など「幅広い人間関係」が人の幸せに寄与するようだとわかりました。このことは、地域の幸せだけでなく、個人の幸せを考えるうえでも重要な示唆を与えてくれます。

「似たもの同士」ばかりでつるんでいると…

ただし、単に友人の数を増やせば増やすほど幸福になるわけではない、という点に注意してください。大切なのは、あくまで多様な人間関係のなかに身を置くこと。友人づきあいというと、ついつい青年のように「似たもの同士」ばかりを選んでしまいがちですが、そうではなく、「自分にないもの」を持つ人と付き合うことを意識すべきなのです。私自身もそう心がけています。

私の友人には経営者や宗教家まで、幅広い仕事をしている方がいらっしゃいます。中には、まったく屈託のない笑顔で「僕ね、世界平和を目指しているんですよ!」などと語る人がいたりします。青年からは笑われてしまいそうですが、話していて本当に面白い。かつ、私にはないものを持っているという点で、とても刺激を受けています。そして、こういった人付き合いには、さらに大切な点があるのです。

ここで、エール大学のニコラス・クリスタキス教授による興味深い研究結果を紹介しましょう。クリスタキス教授はもともと、公衆衛生の研究者です。公衆衛生においては、昨今のコロナ禍を考えてもわかるように、さまざまなネットワークのなかで「うつる」経路を可視化しようとします。

そのネットワーク分析のなかで、たとえば喫煙といった、健康に悪い習慣が、友人関係を通して「うつる」ことがわかりました。同様に、幸せも「うつる」ことがわかったのです。具体的には、友人関係をネットワークとして図に表し、人間関係を線で結んでいき、幸福な人と不幸な人を色分けしていきます。

すると、5年、10年と時間が経過するにしたがって、幸福な人の色と不幸な人の色がほとんど交じり合わず、色分けされながら互いに増殖することがわかりました。幸福は、人間環境の産物なのです。

青年が現在の友人関係について、幸福と感じていないことは事実のようです。しかしこのままだと、上述の観点からしても、幸福から遠ざかってしまう可能性は高いでしょう。怖い話ですね、と青年は言います。「もちろんぼくだって、幸福をうつしてあげたいですよ」。にもかかわらず、青年は浮かない顔をしているのでした。

理由を聞くと、そこには彼なりの倫理とでもいえるものが見え隠れしていました。「話を聞いていろいろと考えていると、なんだか、自分がすごくイヤな奴に思えてしまって……」。どういうことでしょうか。

人生は、いいところ取りができない

青年は言います。「先生の話を聞いていて、僕も多様な友人付き合いをしてみたいと思いました。でもそれって、現在の友人とは会わなくなるということですよね。なんだか、損得で人を選別しているようで気が引けてしまうというか……。僕は好きだから友人と会うのです。その根っこは変えたくありません」。

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彼の言い分も理解はできるのですが、まず大前提として、人生はいいところ取りができません。ですから、多様な人たちと会えば、旧友と会う機会は必然的に減っていくことになります。しかし考え方を変えれば、その間に旧友に提供できるさまざまな話のタネをストックできる、大のチャンスということでもあります。

幸福学のメソッドは、実践することが最も大切なのです。ですから青年には思い切って、旧友と会う機会を少しの間だけでも減らしてみて、多様な人間関係づくりに励んでみてほしいと思います。そこで楽しい体験をするにせよ、ちょっとした失敗をするにせよ、以前のような愚痴のループよりはるかに幸福度の高いコミュニケーションが期待できることは間違いありません。

何より、現代という時代がそれを後押ししています。SNSの発展に伴い、今ほど多様なコミュニティーにあふれた時代はありません。幸福な人間関係のカギは至る所にあるのです。『幸福学の先生に、聞きづらいことぜんぶ聞く』では、そのために有効な「雑談」の重要性や、男女のコミュニケーション能力の違いなど、幸福な人間関係を広めていくためのメソッドを多数、紹介しています。

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提供元:「幸福な人」「不幸せな人」付き合っている人の違い|東洋経済オンライン

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