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2023.03.02

ペットボトルに平気でごみを入れ捨てる人の盲点|タバコや注射針もリサイクルの現場で見た光景


可燃ごみとして排出された飲み残し入りのペットボトル(筆者撮影)

可燃ごみとして排出された飲み残し入りのペットボトル(筆者撮影)

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ごみ収集の仕事が1年のうちでいちばん過酷になるのは正月明けである。集積所には大きなごみ袋が山積みされ、あふれかえっているときもある。

それを清掃従事者の方が不適正排出物(ごみ集積場所などに置かれた収集できないごみ)を瞬時に見極めながら手際よく清掃車に積み込んでいく。2023年1月4日に筆者も調査フィールドとしている座間市にて可燃ごみの収集車に乗務させてもらった。

その作業中に印象に残ったのが、可燃ごみの袋の中に空のペットボトルが混入されていたり、飲料が入ったままのペットボトルが複数本袋に入れられて排出されたりしていたことだ。

散見された飲み残し入りのペットボトル(筆者撮影)

散見された飲み残し入りのペットボトル(筆者撮影)

ペットボトルは正しく排出すればリサイクルが可能だが、可燃ごみに出されてしまうとリサイクルはできないし、例え資源ごみとして排出されても混入物が入っている場合にはリサイクルできない。

そこで、本稿ではペットボトルのリサイクル方法や最近注目を集めている「ボトルtoボトル 水平リサイクル」が推進されていく中で私たちが知っておくべき知識や、資源循環に最適となる排出手法についてお伝えしたい。

ペットボトルの水平リサイクルとは

筆者はペットボトルを再利用する、「ボトルtoボトル 水平リサイクル」の取り組みの詳細を学ぶため、自動販売機横のリサイクルボックスから回収したカン・びん・ペットボトルの中間処理を行っているリサイクル・プラザJB(サントリーのグループ会社)の中間処理施設(さいたま市)を視察させてもらった。

ペットボトルの原料は、石油から生成されるポリエチレンテレフタレートと呼ばれる樹脂である。英語ではPoly Ethylene Terephthalateと表記されるため、その頭文字をとって「PET(ペット)」と呼ばれている。ペットボトルはPET単一素材であるので、リサイクル資源にしやすい。

また、1995年に制定された容器包装リサイクル法により回収する取り組みも整備されているため、そのリサイクル率は90%近くになり、食品トレーや衣類など、さまざまな製品に生まれ変わっている。

このペットボトルのリサイクルにおいて最近注目されているのが、「ボトルtoボトル 水平リサイクル」である。使用済みのペットボトルを再度ペットボトルに生まれ変わらせる技術だ。新たな化石由来原料(石油)を使用せずに、再度ペットボトルを作るリサイクル手法である。

飲料大手のサントリーでは、2011年にペットボトルのリサイクルに取り組み始め、翌2012年に国内清涼飲料業界で初めてリサイクル素材100%のペットボトルを導入(烏龍茶で実現)し、「ボトルtoボトル 水平リサイクル」を実用化した。現在では、サントリーの製品の約50%程度が、リサイクルのペットボトルで提供されている。

サントリーでは、2019年に策定した「プラスチック基本方針」において、2030年までにグローバルで使用するすべてのペットボトルをリサイクル素材あるいは植物由来素材のみにし、化石由来原料(石油)の新規使用をゼロにするという目標を掲げている。また、清涼飲料の業界全体としては、2030年までに「ボトルtoボトル比率50%を目指す」と全国清涼飲料連合会が宣言している。

排出したペットボトルが再度生まれ変わる工程

排出されたペットボトルはどのように生まれ変わっていくのだろうか? 家庭から排出されても外出先で排出されてもペットボトルを再生原料へと加工処理する場合流れは変わらない。

まずは、プラスチックのキャップとラベルがついているので、それらを除去してペットのみにする。ペットボトルを高温のお湯で洗浄しながら大きなローラーにかけてラベルを取っていく。次に、ペットボトルとキャップ部分を小片に粉砕し、水の中に入れて比重分離を行う。

すると、キャップ部分のプラスチックは浮く一方でペットは沈み、これによりペットが取り出され、乾燥させると「フレーク」になる。このフレークを加熱溶融して品質を均一化すると粒状の「ペレット」が生成されてくる。

左から比重分離後、クリアーフレーク、クリアーペレット、プリフォーム(筆者撮影)

左から比重分離後、クリアーフレーク、クリアーペレット、プリフォーム(筆者撮影)

「ボトルtoボトル 水平リサイクル」を行う場合は、このペレットを基にペットボトルの卵となる「プリフォーム」を生成する。このプリフォームを金型にはめて熱風を入れて風船のように膨らませてペットボトルを作り出し、「ボトルtoボトル」による水平リサイクルが実現するのだ。

プリフォーム(筆者作成)

プリフォーム(筆者作成)

「ボトルtoボトル 水平リサイクル」を進めていくには、その原料となる使用済みペットボトルが必要不可欠であるが、すべてのペットボトルが再度ペットボトルに生まれ変われるわけではない。以下のペットボトルはラインで人の手によって抜き取られている。

リサイクル・プラザJBでの選別の様子(筆者撮影)

リサイクル・プラザJBでの選別の様子(筆者撮影)

飲み残しのあるペットボトルは3~5%程度か

1つ目に、飲み残しがあるペットボトルがはじかれる。中に入っている液体が飲み残しなのか、それ以外の液体なのかが区別がつけられないからである。リサイクル・プラザJBの担当者によれば、飲み残しのペットボトルは肌感覚で全体の3~5%になるという。

飲み残しがある場合は、そのまま粗破砕して中身を出したうえで、ペットボトルでなくプラスチックのリサイクルへと回し、繊維、衣料、園芸資材など、さまざまな製品へとリサイクルされていく。

なお、そこでは、製品の素材がペットよりも劣化していくため、それらの製品を再度ペットボトルへは戻せない。不足するペットボトルは新たな化石由来原料(石油)から作っていくしかない。

吸い殻が入れられたペットボトル(筆者撮影)

吸い殻が入れられたペットボトル(筆者撮影)

2つ目に、中に異物が入れられているペットボトルがはじかれる。その中でもよく見かけられるのが、タバコの吸い殻が入れられたペットボトルである。そのほかには、注射針が入れられているケースもある。このようなペットボトルは品質が損なわれるため、リサイクルができず焼却処分するしかない。

注射針が入ったペットボトル(筆者撮影)

注射針が入ったペットボトル(筆者撮影)

ペットボトルを再生させるには、(1)飲み切って排出、(2)異物を中に入れない、という点をしっかりと守って排出する必要がある。

繰り返しになるが、ペットボトルは化石由来原料(石油)からできている。限りある資源を大切にするには、リサイクルしてペットボトルとして生まれ変わらせるのがよい策と思える。私たちの日々の排出におけるマナーが、限りある資源の有効活用につながり、資源循環を促進させていく一助となる。

また、先述のとおりフレークを作るためには、前処理としてのラベル剥がしや、比重分離においてCO2が排出される。エコの観点や資源節約の観点からすれば、これらの作業を減少させていくほうがいい。

この点について私たちが普段の生活でできることは、(1)ペットボトルの飲料は残さず、(2)キャップを外し、(3)ラベルを剥がし、(4)可能なら少し洗い、(5)かさばらぬよう少し潰す、といった手順の実践である。

外出先でペットボトル飲料を飲んだ後、外したキャップとラベルを排出する場所がない場合は、自動販売機横のリサイクルボックスにペットボトルとともに一緒にそれらを排出すればいい。ラベルをペットボトルの中に入れて排出するのはNGだ。そのペットボトルは再度ペットボトルには生まれ変われなくなる。

駅にリサイクルステーション

現在、サントリー社では、「ボトルtoボトル 水平リサイクル」の推進のため、鉄道利用時に排出されたペットボトルを駅構内で回収しようとJR東日本グループと協働し、東京駅、大崎駅、川崎駅にリサイクルステーションを設置して回収を行っている。

東京駅丸の内地下中央口に設置されたリサイクルステーション(筆者撮影)

東京駅丸の内地下中央口に設置されたリサイクルステーション(筆者撮影)

5つあるそれぞれの投入口は異物が捨てられにくいように、下向きに作られている。ペットボトル投入口には、キャップとラベルを外すように指示されており、これは飲み残したまま投入しにくくなるという意図からである。

キャップとラベルをプラスチックに入れるように指示されている。投入口は飲み残し対策が施されている(筆者撮影)

キャップとラベルをプラスチックに入れるように指示されている。投入口は飲み残し対策が施されている(筆者撮影)

限りある資源を有効に使うためにも、多少の手間はかかるが、私たちにできることを地道に実践していくことが期待される。そしてそのような排出方法が社会全体の慣習となり、資源循環がよりいっそう推進されていくようになってほしく思う。

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提供元:ペットボトルに平気でごみを入れ捨てる人の盲点|東洋経済オンライン

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