2023.01.30
「所有物のほとんどは必要ない」と納得できる実験|手放すことに躊躇するなら実験を試してみる
必要か不要か見極めるのに有効な方法があります(写真:アオサン/PIXTA)
「家の中を片づけよう!」と決意しても、いざものを捨てるとなると躊躇し、結局ほとんど片づかないということも。手放すかどうか迷ったとき、ある実験をすることでそれが本当に必要なものかわかります。本稿では、現代のミニマリズム運動を代表するジョシュア・ベッカー氏の最新作『より少ない家大全』より一部抜粋・編集のうえ、実験のやり方をお伝えします。
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本当にこれは必要か?
家の中を一部屋ずつ片づけていく過程で、あなたは長年にわたってため込んだものたちとイヤでも向き合うことになる。そのうえで、どれを残し、どれを手放すかを決めなければならない。
私はここで、すべてのものについてその決断をすることをおすすめしたい。ただ見るだけでなく、必ず手に取り、そもそもなぜそれを買ったのか自問する。それはあなたに何をしてくれたのか。それをまだ持っておくべきなのか。この一連の質問を簡単にまとめると、「本当にこれは必要か?」という質問になる。
もし本当に必要なら、ぜひとっておくべきだ。そして、もし必要ないのなら手放せばいい。いずれにせよ、罪悪感を持つ必要はまったくない。
心理学の世界には「保有効果」という言葉がある。自分が保有しているものは、ただそれだけの理由で、実際よりも価値があるように感じるという意味だ。ものを手放すのがこんなにも難しい理由も、この保有効果で説明できる。ほぼ反射的に、「これは私のものだ!」としがみつきたくなるのだ。だからこそ、所有物の価値を正確に評価し、いらないものはいらないと冷静に判断することが大切になる。
そこで「本当にこれは必要か?」と自分に尋ねれば、ものへの執着から自分を解放することができるだろう。もちろん、人間が生きていくために必要なものはそれほど多くない。水や食べ物、家、服があればだいたい事足りる。しかしここで大切なのは、ただ生き残ればいいというわけではないということだ。
私たちは、自分の可能性を最大限に発揮することを目指している。私たちが追い求めているのは、もっと高い次元の目標だ。つまり、「本当にこれは必要か」と自問するとき、実際に私たちは「これは目標を達成する助けになるか? それとも目標達成の障害になるか?」という質問を自分に投げかけているのだ。
この考え方は、意思決定の強力な枠組みになる。もし何かを手放すかどうか迷ったら、「目標達成の助けになるか? それとも障害になるか?」という基準で判断しよう。
ここで注意してもらいたいのは、目標達成の助けになるというのは、必ずしも「実用的」(たとえば缶を開けるために缶切りが必要)という意味とはかぎらないということだ。純粋な美も、人間らしく生きるためには必要だ。
持っていて負担になるもの、気が重くなるものは処分しよう。そしてとっておくと決めた大切なものは、どこかにしまっておくのではなく、いつも見える場所に飾っておく。そうすれば、ただ何でも捨てずに保管しているよりも、過去の思い出とのつながりが強く感じられるようになる。
家に残していいのは、必要なものと、目標達成や能力を発揮する助けになるものだけだ。それらのものには、役に立つ、美しい、意義深いといった特徴がある。いくつかのものはこの基準を満たしているが、満たしていないもののほうがはるかに多い。実際のところ、現代人の家はものであふれているが、そのほとんどがなくてもいいものだ。
そして余計なものがたくさんあるせいで、本当に大切なものに意識が回らなくなってしまっている。自宅をミニマル化する過程で、それらのものを残すのか、それとも手放すのか、1つずつ決めていくことになる。今から心の準備をしておこう。
ここで覚悟しておいてもらいたいのは、それらの決断はつねに簡単ではないということだ。明らかに価値のあるものや、反対に明らかに価値のないものなら、特に悩むことはない。
しかしたいていのものは、ある点では役にたつかもしれないし、美しいかもしれないし、大切な思い出が詰まっているかもしれない。いるとも、いらないとも、簡単には決められないだろう。意義深い人生の助けになる面もあれば、その障害になる面もある。そんなときは、プラスとマイナスを天秤にかけて判断する必要がある。
この点について、私の考えを述べておこう。それを買ったときの値段がいくらであれ、所有することには「所有コスト」も発生する。所有コストには、お金はもちろん、時間とエネルギー、場所も含まれる。その所有コストと、有益性(便利さ、美しさ、意味)を天秤にかけると、所有コストのほうが大きいかもしれないし、有益性のほうが大きいかもしれない。言い換えると、その所有物はあなたにとって重荷でもあり、同時に利益でもあるということだ。それをどうするか決めるには、費用対効果を分析する必要がある。
ここで冷静に分析することができれば、所有物のほとんどは、実は必要ないということがわかる。「本当にこれは必要か?」と、自分に問いかけてみよう。費用が効果を上回るのであれば、それは必要ないものだ。
同じものは2つ以上持たない
ミニマリストになったばかりのころに、タオルは2枚あれば十分だと書かれた記事を読んだ。2枚あれば、もう1枚を洗濯しながら交互に使えるというわけだ。私はそれを読んで、たしかにそうかもしれないと思った。自宅のリネンクローゼットを開けてみると、最低でも20枚のタオルがあった。
前のほうにあるのは新しいタオルで、古いタオルは奥にある。子ども用に動物の形をしたタオルまであった。その他にも、1階のゲスト用バスルームにもタオルがあり、さらにハンドタオルと、別のクローゼットにはビーチタオルもある。
うちは4人家族だ。だからもちろん、タオル2枚では足りないだろう。それでも、現状は間違いなく適正量より多くのタオルを所有している。そこでかなりのタオルを処分した。あれは間違いなく持ちすぎだった。
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それよりも大切なのは、タオルだけでなく、他にも「持ちすぎ」に気づいたことだ。テレビや枕、毛布、ジーンズ、靴、コート、洗剤、ブラシ、マグカップ、タッパーウェア、鍋やフライパン、ホチキス、ハサミ、ゲーム、工具……。
こういったカテゴリーで、明らかに必要以上に持っていた。余分なものを処分するだけで、家の中がだいぶすっきりした。
家の中のものを減らしたいなら、重複しているものを処分するという方法がおすすめだ。それぞれのカテゴリーで、いちばん好きなものを1つか2つだけ残し、それ以外は処分する。 こうすれば、すぐに効果が現れるだろう。
どうしたらいいかわからない?──それなら実験だ!
これは必要ないと、簡単に判断できるときもある。しかし、そうでないことも多い。
電気ケトル──これはいる? それともいらない?
青いパンプス──お気に入りだけど、他の色と似たようなものだ。いる? いらない?
ガスで動く落ち葉掃除用のブロワー──いる? いらない?
何かがいるかいらないか迷ったら、あるいは家族で意見が対立したら、しばらくそれがない状態で暮らすという「実験」をしてみよう。私のおすすめは29日間だ。その期間が終わってから、それが本当にいるかどうか決めればいい。しばらくそれがない状態で暮らしてみて、やっぱりそれが必要だと判断したら(理由はそれがあると便利だからかもしれないし、それがないと寂しいからかもしれない)、そのときは捨てずにとっておくべきだ。
あるいは、なくても別に問題ないと判断したのなら、躊躇なく処分しよう。どちらの結果になったとしても、実験は成功だ! 本当にいるかどうかわかったのだから。
行動のヒント
1部屋ずつミニマル化していく過程で、それぞれの部屋の「ビフォー&アフター」の写真か動画を撮影し、SNSでシェアしてみよう。ポジティブなコメントが返ってくれば、努力を続ける励みになるはずだ。それにもしかしたら、あなたの投稿を見た人の中に、自分でもミニマリスト的大改造を始める人が現れるかもしれない。
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提供元:「所有物のほとんどは必要ない」と納得できる実験|東洋経済オンライン