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2022.12.01

家族に「うつ」と告げられた人が絶対知るべきこと|医師の診断は?病名と症状を混同してはいけない


「うつ」といっても一言で片づけられないのです(写真:aijiro/PIXTA)

「うつ」といっても一言で片づけられないのです(写真:aijiro/PIXTA)

精神科を受診する患者数が年々増え続けるなか、家族のメンタル不調をケアする立場に置かれる人も多いのではないでしょうか。

産業医として1万人以上を診察してきた精神科医の井上智介氏の著書『どうする? 家族のメンタル不調』より、家族に「うつになった」と告げられたとき、最初に確認しておきたいポイントを解説します。

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「うつ病」は病名、「うつ状態」は状態

調子が悪くて病院へ行った人に、ご家族が「どうだった?」と尋ねたとき、

「お医者さんから『うつ』って言われた」

と報告される……。

これはとてもよくあるパターンなのですが、実は誤解や勘違いを生みやすい会話でもあります。患者さんが発した「『うつ』って言われた」の一言から得られる情報は、患者さんの状況を正しく把握するにはひどく薄っぺらいものです。

まずは、次のように確認するといいでしょう。

「それは『うつ病』になっているということ? それとも『うつ状態』になっているということ?」

「うつ病」なのか「うつ状態」なのかは、さほど違いがないように思われるかもしれませんが、実はとても大きな差があります。ただ、患者さん自身も両者の違いを意識していないことが多いため、

「『うつ』って言われた」

という返事になってしまうのです。

一体どんな違いがあるのかというと、「うつ病」とは病名です。うつ病という「病気」にかかっていることを指します。

一方、「うつ状態」は文字通り「うつ病っぽい状態」のこと。精神疾患にも種類はいろいろとあり、症状によって当てはまる病名はもちろん異なりますが、それらの多くに共通して「うつ病のような症状」が表れます。ですから、「うつ状態」であるからといって、必ずしも「うつ病」であるとは限りません。

たとえば、

「気分が落ち込んでいて、何もする気になれない」

「すごく憂うつな気分が続いている」

「あまり食欲がない」

「うまく眠れない」

こうした症状が見られると、医師は「うつ状態にある」と判断します。

精神疾患がなくても「うつ状態」に陥ることがある

考えてみれば、大失恋した直後や第一志望の就職先に落ちたとき、長年抱いた夢が破れたときなどにも、同じような状態になることがありませんか。数日は続くこともありますよね。つまり、誰であっても、精神疾患がなくとも、人は「うつ状態」に陥ることがあるのです。

初めて受診したとき、医師に「うつですね」と言われたのなら、うつ病ではなく「うつ状態」を指している可能性が高いでしょう。その理由として、うつ病である判断がついたなら、そのような紛らわしい言い方をせずに、

「あなたの病気は『うつ病』ですよ」

と、病名をきちんと伝えます。

何らかの精神疾患がありそうな場合でも、病名がすぐにはわからないとき――うつ病か、双極性障害か、発達障害か、統合失調症か、パーソナリティ障害か、アルコール依存症なのかわからないときも、とりあえず今は「うつ状態」にあることだけははっきりといえますというケースはよくあります。それが「うつですね」という伝え方になってしまうのです。

裏を返せば、うつ状態になっている原因が今はわからず、病名を特定できない段階であることを意味します。

「うつ状態」とは、身体的な病気にたとえれば「お腹が痛い」と言っているのと一緒です。痛みはあるけれど、

「その原因は何なのか」

というところがまだわかっていません。腹痛だったら便秘の可能性もあるし、虫垂炎、十二指腸潰瘍や腸閉塞、胆石かもしれないけれど、今のところは「お腹が痛い」という症状があることだけがわかっている状態です。

1、2回の診察では病名がわからないことも多い

もっとも腹痛であれば、触診したりレントゲンを撮ったりして、ある程度病名を絞り込むことができるでしょう。しかし、精神疾患となると、1、2回、患者さんを診察しただけで病名を特定するのは、医師にとっても簡単ではありません。

そのため、一度出した診断が、のちに変わることもよくあります。それがまさに心の病気の難しいところで、原因を探るのが難しいだけでなく、症状が段階的に変化したり、別の症状を引き起こしたりすることも珍しくないのです。最初は「うつ病」と診断されたとしても、そのうち「双極性障害」、俗にいう躁うつ病であるとわかったケースはいくらでもありますし、むしろそういう病名が変わる展開になるほうが断然多いでしょう。

こうした事実が一般的にあまり知られていないことも、誤解を生む原因になっているようです。

また、たとえ「うつ病」という診断は出せなくとも、「うつ状態」に合わせて、その症状を緩和するお薬が処方されます。憂うつな気分や不安感が強かったり、夜に眠れなかったりする状態であることは確かですから、医師は、

「眠れないなら睡眠薬を飲んでみますか」

「不安を抑えるお薬を出しましょうか」

と、患者さんにお話しします。

記事画像

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ただ、患者さんの立場に立って考えてみると、お薬を処方されることで、

「自分は病気なのだ……。つまり、うつ病なんだろう」

と思い込んでしまいそうですよね。

ですから、もし診察を受けたご家族から「うつだった」「うつ病だった」と報告を受けたとしても、慌てずに落ち着いて、医師から具体的にどのように言われたのか、どのような話をしたのか、詳しく聞いてみるのが大事です。

「うつ状態」であれば、「うつ病」の可能性はもちろん、別の病気の可能性もまだ捨てきれません。一時的な状態にすぎず、まだ病名がつかない可能性もあります。うつ病とうつ状態をひとくくりにしないで考える必要があるのです。

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「友がいつの間にか離れていく人」の3大特徴

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提供元:家族に「うつ」と告げられた人が絶対知るべきこと|東洋経済オンライン

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