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2022.11.22

【後編】平気で「おせち」を買う人の超残念な盲点|「有名料亭の商品」も「意外すぎる落とし穴」が…


私たちが知らない「おせちビジネスの裏側」とは?(写真:D&M.CLIPs/PIXTA)

私たちが知らない「おせちビジネスの裏側」とは?(写真:D&M.CLIPs/PIXTA)

70万部の大ベストセラー『食品の裏側』の著者、安部司氏が開発したレシピ集『世界一美味しい「プロの手抜き和食」安部ごはん ベスト102レシピ』が9刷7万部を突破するベストセラーになり、話題を呼んでいる。

『食品の裏側』発売後、全国の読者から受けた「何を食べればいいのか?」という質問に対する答えとして、安部氏が自ら15年かけて開発した膨大なレシピノートの中から、「簡単に時短に作れるレシピ」を厳選した1冊だ。

いまなお食品添加物の現状や食生活の危機をメディア等で訴え続けている安部氏が「平気で『市販のおせち』を買う人が知らない超残念な真実 後編」について語る。

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【前編】平気で「おせち」を買う人の超残念な盲点 ※外部サイトに遷移します

おせち市場は右肩上がりだが……

「【前編】平気で「市販のおせち」を買う人の超残念な真実」では、おせちに使われる添加物について述べました。

「【前編】平気で「市販のおせち」を買う人の超残念な真実」 ※外部サイトに遷移します

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後編では添加物だけでは語れない、市販のおせちに潜む「添加物以外の重大問題」を取り上げてみたいと思います。

みんながこぞって買うようになった今、おせちは一大市場に育ちました。私の知人も食品会社を経営しているのですが、おせちの製造・販売で会社をいっきに大きくしました。

この傾向はコロナによってさらに顕著になり、今年も「高級おせち」が飛ぶように売れているそうです。

でも、「おせちビジネス」には、私たちが「知らない」「知りようもない」裏側が、まだまだあるのです。

たとえば、市販のおせちには「有名料亭の冠」がついているものが多くあります。

「お正月なのだから有名店のおせちを食べたい」「普段は行けない高級料亭の料理を味わうチャンス」ということで、少々値段が張っても買い求める人もいることでしょう。

でも、この「有名料亭の冠がついたおせち」にも「重大な盲点」が潜んでいるのです。

「有名料亭の冠」をついた商品を買うときに、まず気をつけていただきたいのは、注意深く見ると「〇〇料亭製」と「〇〇料亭監修」という2つの商品が売られており、その2つはまったく別物だということです。

【問題1】「○○料亭製」と「○○料亭監修」はまるで別物

「〇〇料亭製」であれば、確かにその料亭で作られたものなのでしょうが、「〇〇料亭監修」は、その料亭監修のもと、「外注の食品工場」などで作られるものがほとんどなのです。

女性はよくわかるかもしれませんが、雑誌の付録によくブランドのバッグがついていることがありますね。あれは、そのブランドが作ったものではなく、「そのブランドの監修」のもと、出版社が工場に発注して作っているのです。

おせちもそれと同じシステムです。

そして、「【前編】平気で「市販のおせち」を買う人の超残念な真実」で解説したように、「海外の工場」で作って運ぶ品物もよくあるわけですが、その料亭が、すべての製造現場や製造工程を100%きちんと立ち会って見ているかというと、そうでない場合も少なくないと思います。

「【前編】平気で「市販のおせち」を買う人の超残念な真実」 ※外部サイトに遷移します

添加物ズラリの「強烈な違和感」

すると、ここで、さらなる問題が考えられるわけです。

【問題2】「有名料亭」を謳うのに「添加物」がズラリと並ぶ違和感

ひとつは「添加物」の問題。有名料亭が出す料理に添加物が入っていますか? 入っていないですよね。「pH調整剤」や「増粘多糖類」を使いこなす一流の料理人やシェフなんて聞いたこともありません。

おせちではないけれど、「有名店の監修したラーメン」というのがスーパーに売られています。生麺とスープがセットになったものです。

それを見ると「pH調整剤」「加工でんぷん」「増粘多糖類」「トレハロース」など、ラーメン店の店主が使いこなせるわけがない添加物がズラリと並んでいるわけです。あれを見ると、私はいつも「強烈な違和感」を持ってしまいます。

そこでもうひとつの問題が出てきます。「監修」といっても「外注の食品工場で作られたおせち」が、はたして有名料亭と同じ味が出せるのかという疑問です。

【問題3】「監修」というが「本当に同じ味」が出せるのか

和食は「だし」が命です。こんぶやカツオで丁寧にだしをとって、時間をかけて作るのが「料亭の味」だと思います。

それを「『化学調味料』や『◯◯エキス』や添加物を駆使して大量生産したもの」が同じ味になるものでしょうか。そのことは有名店の料理人さんが一番よくわかっているはずです。

実際に「有名料亭監修おせち」食べてみた感想

何年か前、我が家でも「有名料亭監修の高級おせち」をいただいたことがあります。

例年おせちは家で作りますが、その年は「せっかくいただいたのだから」と、家族・親族10数人で元日にいただきました。

でも、もらっておいて本当に申し訳ないのだけれど、おいしくないのです。みんな箸が進まず、結局半分ほど残ってしまいました。

「本当に、これは『有名料亭で出しているもの』と同じ味なのかな」というのが私の率直な感想でした。

【問題4】「監修」というより「名義貸し」ビジネスに?

つまり、「◯◯料亭監修」というおせちがたくさん売られていますが、その中には品質を管理し担保する「監修」というよりも、「名義貸し」ビジネスになってしまっているようなものも見受けられる気がしてならないのです。

おせちは一大市場ですから、有名料亭にはいろんなメーカーから「営業」が来るのでしょう。「この店の味を再現して、うちの食品工場で作りますから」といわれて、そこに乗るかどうかということです。

実際にあるシェフは、私に「自分の店では『たんぱく加水分解物』も『酵母エキス』のような調味料も使わないけど、商品になったときは認めるしかない」と話してくれました。

というのも、私には「ある苦い思い出」があります。

『食品の裏側』に私の半生を記しましたが、まだ私が食品専門商社で「添加物のセールスマン」をやっていたときのことです。

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あるとき、同僚と2人である小料理屋に飲みに行きました。

有名料亭ではないけれど、大将がこだわりの料理を出す店で、私の大のお気に入りの店でした。

そこで酔っ払った私たち2人は「ある実験」を思いついたのです。

添加物のセールスをやっていましたから、カバンには「酵母エキス」のサンプルが入っていました。

それを運ばれたお吸い物にこっそり適量入れて、大将に「これ、どう思う?」と味見をしてもらったのです。

「何か『変なもの』を入れただろう!?」

「なんだこれは!? 何か『変なもの』を入れただろう!? 味がひっくり返ったぞ!」

顔を真っ赤にした大将に怒鳴られた私たちは、いっぺんに酔いがさめ、平謝りに謝り倒しました。

たぶん、そのお吸い物は、日ごろ「インスタント食品」に慣れている人ならば「おいしい」といって普通に飲める味だと思います。でも、毎日カツオと昆布で丁寧にだしを引いている大将の舌はごまかせなかったのです。

料理道を真剣に究めようとしている大将を試そうなんて、若気の至りとはいえ、本当に申し訳ないことをしました。

しかし、それほど、料理人は「だし」に命を懸けているものです。

その「料理人の誇り」が、「巨大なおせちビジネス」にからめとられ、「『化学調味料』や『◯◯エキス』や添加物を駆使して大量生産されたもの」に侵食されているとしたら、それは非常に残念な話です。

もうひとつ、私が指摘したいのは「おせちのSDGs問題」です。

【問題5】完全に「SDGs」や「地産地消」に逆行している

「【前編】平気で「市販のおせち」を買う人の超残念な真実」で、おせちの食材には、世界中から運んでくるものが少なくないと述べました。

「【前編】平気で「市販のおせち」を買う人の超残念な真実」 ※外部サイトに遷移します

「タイ」や「韓国」「ベトナム」など東南アジアはもちろんですが、「チリ」「メキシコ」「ペルー」など「地球の裏側」からも冷凍コンテナで運んできます。

こうして国内・海外から集めた食材は、出番が来るまで冷凍します。冷凍のものはそのまま、チルドの場合はマイナス30~40度、肉に至ってはマイナス60度で急速冷凍し、巨大冷凍庫で保存するのです。

おわかりのように、この過程で「大量のエネルギー」、つまり「冷凍コンテナで運んでくる燃料代」や「巨大冷凍庫の電気代」が使われるわけです。

今年の夏から政府主導で「節電」を呼び掛けて、各戸で使わない部屋の電気をまめに消したり、スーパーで一部照明を切ったりしているけれど、そんな「小さな努力」などふっとぶぐらいの大量の電力消費量です。

「SDGs」「地産地消」に逆行する「おせちビジネス」

それから「環境への影響」も問題視する必要があります。運ばれてくるおせちの食材の入っている容器は、多くが「使い捨てのプラスチック」です。

食材を調理する際に、それらは大量のプラゴミとなって出るわけです。私も実際に現場を見たことがあるけれど、まあ驚くほどのゴミの山です。

また、輸入品をコンテナで海外から運んでくる際は、いうまでもなくCO₂が出ます。

おせちは「日本の伝統食」ではあるけれど、巨大市場と化した「おせちビジネス」は「SDGs」や「地産地消」にまったく逆行しているといわざるを得ないのです。

もちろん、「そんなこといったらすべての食材が輸入できないではないか」「企業に節電を求めるなら生産活動をするなということか」というご意見があるのは理解しています。

でも、私が言いたいのは、「巨大おせちビジネス」にはこういう「裏側」があることを知ってほしいということです。「【前編】平気で「市販のおせち」を買う人の超残念な真実」で述べた「おせちには、添加物が大量に使われる」という問題も含めて、です。

「【前編】平気で「市販のおせち」を買う人の超残念な真実」 ※外部サイトに遷移します

それでも、みなさんは「平気で」買いますか?

「豪華」で「見た目」が華やかだけど添加物いっぱいで、SDGsに逆行した、それほどおいしいとは思えないおせちを、「平気で」高い値段を出してまで買う、そのことに対して、みなさんはどう思われるでしょうか?

もちろん、一部の飲食店などでは、すべて手作りし、大晦日の前日などに手渡しする「こだわりおせち」もあります。「国産」「無添加」にこだわっているおせちも実在します。

ただ、それはあくまで全体のごく一部ですし、今年は「原材料費の高騰」もあり、そういう「こだわりおせち」は、さらに「高額」になっている傾向にあります。

年末にかけて、さまざまな食材が値上がりすることもあり、通常時にお店で食べるのに比べて「割高」に感じることも多く、一般の人が「平気で」買えるものではないような気もしています。

もちろん富裕層なら、そういうおせちも「平気で」買えるのかもしれませんが、そこまでしなくても、「【前編】平気で「市販のおせち」を買う人の超残念な真実」でも述べたように、「短時間で簡単に作れるおせち料理」はたくさんあります。

「【前編】平気で「市販のおせち」を買う人の超残念な真実」 ※外部サイトに遷移します

家で作れば、「見た目は豪華に見えなくても、環境にやさしいおせち」はできるはずですし、なにより、家で丁寧に作ったおせちは格段においしいものです。

みなさんご存じかと思いますが、おせち料理にはそれぞれ「意味」があります。

黒豆なら「まめに働いてまめに暮らせるように」という願い、田作りなら「田んぼを作る」で五穀豊穣を願って、数の子は「子孫繁栄」、栗きんとんは「金銀財宝」、エビは「腰が曲がるほどの長寿」……といったようにです。

「おせちに込められた意味」を大事に、手作りの「お祝い膳」を家族で囲めば、「見た目」がさして豪華でなくても、それで十分だと思うのは私だけでしょうか。

気候変動・地球の温暖化は「待ったなし」のところまで来ています。私たちが出したCO₂やゴミ、未来においてそのツケを支払わされるのは子どもたちです。

来年のお正月は家族でおせちを囲みながら、ぜひそういうことにも思いを馳せていただければと思います。

(この記事の前半:【前編】平気で「おせち」を買う人の超残念な盲点) ※外部サイトに遷移します

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【あわせて読みたい】※外部サイトに遷移します

おせち料理も作れる!「魔法の調味料」は凄すぎだ

平気で「食パン」を買う人が知らない超残念な真実

平気で「スーパーの残念3大NG惣菜」買う人の盲点

提供元:【後編】平気で「おせち」を買う人の超残念な盲点|東洋経済オンライン

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