2022.11.18
【唇に水ぶくれ】口唇ヘルペス繰り返す根本要因|子供と大人の初感染は、症状も大きく異なる
痛みが伴い、見た目も目立つ口唇ヘルペス。いったいなぜこのような症状が出るのでしょうか(写真:エレナ・ボルフ/PIXTA)
鏡を見ると、唇に小さな水ぶくれができている。また口唇ヘルペスか……と、思う人は少なくないだろう。口唇ヘルペスは疲れやストレスをためやすい働き盛りの世代にとっては身近な病気だ。痛みを伴ったり、見た目的にも目立ったりするため、案外、やっかいな面もある。できるだけ早く治したいが、どうしたらいいか。口腔粘膜疾患を専門とする慶應義塾大学歯科・口腔外科の角田和之歯科医師に聞いた。
唇やその周囲に、痛みを伴う小さな水ぶくれが複数できる「口唇ヘルペス」。単純ヘルペスウイルスの感染によって起こる症状だ。
単純ヘルペスウイルスには、口唇ヘルペスを引き起こすⅠ型と、性器ヘルペスを引き起こすⅡ型の2種類がある(外部配信先では図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)。
Ⅱ型の場合、ほとんどが性行為によって感染する。一方Ⅰ型は、接触感染や飛沫感染のほか、ウイルスに汚染されたタオルや食器などから感染する。とくにアトピー性皮膚炎や乾燥などで、皮膚のバリア機能が低下している場合には、感染しやすくなる。
大人で初めてⅠ型に感染・発症すると、高熱が出る
Ⅰ型に初めて感染したときは、一般的な口唇ヘルペスの症状とは異なり、発熱したり、口内炎ができたりする。
幼少期にⅠ型に初めて感染した場合は、これらの症状が出にくいため感染に気づかないことが多い。なお幼少期の感染経路には、家族から、または保育園などの集団生活によるものがある。
一方で幼少期に感染せず、大人になって初めてⅠ型に感染して発症する場合もある。大人で初めて感染すると、多くの人は高熱が出る。症状はとても重く、40度近い高熱が出たり、口の中全体に水ぶくれができ、治るまでほとんど食事ができない状態になったりすることも珍しくない。
幼少期と大人では初感染したときの症状は異なるものの、いずれの場合も、一度感染すると単純ヘルペスウイルスは体外に排出されず、神経に潜伏し続ける。
Ⅰ型は頭から顔面を走る三叉神経節に潜伏しやすく、ストレス、多忙、寝不足、風邪など、免疫機能が低下したタイミングでウイルスが再び活動し、口唇ヘルペスを発症する。これは「回帰発症」と呼ばれ、一度回帰発症すると、繰り返し発症する場合が多い。
ちなみに、水ぼうそう(水痘)や帯状疱疹を引き起こす「水痘・帯状疱疹ウイルス」もヘルペスウイルスの一種だ。初めて感染したときには、水ぼうそうとして発症し、単純ヘルペスウイルスと同様に一度感染すると神経に潜伏し続ける。そのウイルスが何らかのきっかけで再び活動すると、帯状疱疹を発症する(関連記事:【帯状疱疹】子育て世代で急増する意外な背景)。
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水ぶくれができる前にチクチク等の違和感も
回帰発症の場合も初感染の場合も、治療は抗ウイルス薬を使用する。塗り薬(軟膏)と飲み薬があり、回帰発症で軽症の場合は塗り薬、初感染の場合や回帰発症で症状の範囲が広い中等症以上の場合は飲み薬を使用するのが基本だ。治療すれば1週間から10日程度で治る。
「抗ウイルス薬は、ウイルスの増殖を抑える作用があるので、できるだけ早く使用すると、重症化を防げます。活性化しているウイルスを殺すわけではありません。例えるなら、治りかけのかさぶたの状態になっている部分に塗ってもほとんど意味がない、ということです」(角田さん)
口唇ヘルペスは前駆症状といって、水ぶくれが出現する3~5日前にくちびるにチクチク、ピリピリ、ムズムズといった違和感が出ることがある。初めて回帰発症した人は、気づきにくい程度の症状だが、繰り返し発症している人は、違和感が出た時点で気づくことがある。
「繰り返し発症する人は、前駆症状に気づいた時点で治療を開始すると、水ぶくれができるのを防ぐことができます。できるだけ早く、皮膚科や口腔外科を受診しましょう」(角田さん)
繰り返す人は気軽に受診ができる、かかりつけ医がいると、早めに治療を開始しやすい。
また、医療機関で口唇ヘルペスの診断、治療を受けたことがある人が再発した場合は、市販の抗ウイルス薬も使用できる。なお医師が処方する抗ウイルス薬と内容はほぼ一緒だが、市販薬は塗り薬しか販売されていない。
周囲に感染させない配慮も必要
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水ぶくれの中には多くのウイルスがいて、感染力が強い。発症したら周囲の人に感染させない配慮も必要だ。
「患部はなるべく触らないようにして、触った場合は手をしっかり洗い、タオルや食器は共用しないこと。感染させた相手が万が一、大人で初感染の場合、大変なことになります。水ぶくれがかさぶたになるまでは、気をつけるようにしましょう」(角田さん)
(取材・文/中寺暁子)
慶應義塾大学歯科・口腔外科准教授
角田和之歯科医師
1992年東京歯科大学歯学部卒業。国立病院機構栃木病院歯科口腔外科、慶應義塾大学医学部助手などを経て2021年から現職。慶應義塾大学病院歯科・口腔外科の口腔粘膜疾患専門 外来を担当する。日本口腔内科学会専門医・指導医、日本口腔外科学会専門医。
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提供元:【唇に水ぶくれ】口唇ヘルペス繰り返す根本要因|東洋経済オンライン