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2022.10.31

社員の意識を変えた「しくじり社長」の面白失敗談|失敗を茶化して弱みを見せることのすごい効果


自分の失敗を笑い話にすることは、自分の心理状態をコントロールするための強力なツールとなるだけでなく、チームに信頼感をもたらし、みんながリスクをとって挑戦できるようになります(写真:maroke/PIXTA)

自分の失敗を笑い話にすることは、自分の心理状態をコントロールするための強力なツールとなるだけでなく、チームに信頼感をもたらし、みんながリスクをとって挑戦できるようになります(写真:maroke/PIXTA)

日本の企業はなによりも「真面目」であることを大切にする。ところが、それとは対照的に、アップルやピクサー、グーグルのような企業は、なによりも「ユーモア」を大切にすることで、大きく成長している。
スタンフォード大学ビジネススクール教授のジェニファー・アーカー氏と、同校講師でエグゼクティブ・コーチのナオミ・バグドナス氏によれば、ユーモアにあふれる職場は心理的安全性をもたらし、信頼関係を築き、社員のやる気を高め、創造性を育むという。
今回、日本語版が9月に刊行された『ユーモアは最強の武器である』より、一部抜粋、編集の上、お届けする。

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抜け目ない上司よりも、お茶目な上司

リーダーとしては(あるいは、リーダーを目指す人間としては)、つねに毅然として抜け目がなく、冷静で、すべて順調なふりをしたくなるかもしれない。

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だが、自分の弱みを見せたほうがはるかに効果的な場合もある。

とりわけ有効なのが、自分の失敗を明らかにするだけでなく、茶化してみせることだ。

なぜなら、リーダーシップ専門家のダナ・ビルキー・アシェルがいみじくも述べているとおり、「リーダーたちが弱みを見せれば、笑い物になるどころか、笑いが効果をもたらす。チームに信頼感が生まれるのだ」。

そうした理由もあって、大人気の補正下着メーカーであるスパンクスの創立者兼CEOサラ・ブレイクリーは、できるだけ自分のミスを公表することにしている。

定例の全社会議(通称「ポカミス・ミーティング」)において、ブレイクリーは最近の自分のミスを告白すると、突然、みんなの前で踊り出す(何も知らない新入社員たちは、びっくり仰天)。しかも毎回、しくじりの内容にぴったりの曲を選んで、「みんなで踊ろう」と声をかける。

たとえば、ある商品分野からもっと早く撤退すべきところを、戦略を誤ったとき、彼女が選んだ曲は「ミスター・ロボット」だった。本人いわく、「すごくいい曲なんだけど、とにかく長すぎる」から。

小さなヘマから戦略上の大きなミスまで、「どんな失敗についてもユーモアを見いだして、面白おかしく話すんです。話が終わると、会社のみんなが声援を送ってくれるんですよ」とブレイクリーは語る。

ユーモアを使うことで、自分自身や会社の失敗を重苦しくない方法で認めやすくなるのだ。そうすると従業員たちも、大きなリスクを取ってみようかと思うようになる。

ブレイクリーはこう語っている。「失敗を恐れる気持ちから、会社のみんなを解放したいんです。恐怖にとらわれなければ、いいことが起こります」

失敗を喜劇としてとらえることの利点

自分の失敗を喜劇のレンズを通して眺める習慣は、私たちの心理状態に有意義な影響をもたらす。

スタンフォード大学の最近の研究では、前向きな話であれ、否定的な話であれ、自分の人生のできごとを(悲劇や修羅場としてではなく、むしろ)喜劇としてとらえる人たちは、心理的なストレスが少なく、エネルギッシュで、果敢で、充実していることがわかっている。

さらに、心理学者のダン・マカダムズは、人は自分自身に語って聞かせる物語そのものだけでなく、そのジャンルや構成も含めて、みずから「物語(ナラティブ)の選択」をしていると主張している。

マカダムズの専門は「ナラティブ・アイデンティティ」、すなわち個人の心のなかで再構成した過去と、現在と、想像した未来を組み合わせて紡がれる物語のことだ。

みずからが語るナラティブを少し見つめ直すだけでも、「悲劇的な物語」が「コミカルで愉快なエピソード」に思えてくるし、物語に少し手を加えるだけでも、人生に大きな影響が表れるとマカダムズは考えている。

言い換えれば、私たちはほとんどの場合、自分の失敗をどう位置づけるか――悲劇か、それとも喜劇か――を選ぶことができ、それによって、失敗が人生に及ぼす影響が変わってくるということだ。

笑い話にすることで失敗を認めやすくなる

また、自分の失敗を笑い話にすることは、自分の心理状態をコントロールするための強力なツールとなるだけでなく、まわりの人たちも安心して失敗を認めやすくなる。

私たちの元教え子で、メキシコのモンテレイ工科大学で研究助手として働き始めたジャンの例を見てみよう。

ジャンのチームはある種の藻類の発酵過程を理解するため、数か月に及ぶ実験の真っ最中だった。

高額の費用をかけて、大規模なバイオリアクター〔微生物や酵素を触媒として、物質の合成・分解・変換などを行う装置〕を使った発酵過程の試験を実施したあとで、研究助手たちは、サンプルが汚染されていることに気づいた。つまり、実験全体が台なしになってしまったのだ。

汚染の大部分が人的ミスによることを考えれば、これは自分たちのミスだと、チーム全員がわかっていた。失望と不安を抱えながら、彼らはこの研究の顧問を務める博士のもとへ、悪い知らせを伝えにいった。

ジャンの説明を聞きながら、助手たちの不安を感じ取った博士は、少しのあいだ黙っていた。やがて、いたずらっぽい笑みを浮かべて言った。「ピンキーの仕業かな?」

チームのみんなは戸惑った。「ピンキーって誰ですか?」

「ピンキーは、この研究所をうろちょろしてる厄介なバクテリアだよ」博士は言った。「私たちを油断させるまいと思って、たまにひょっこりサンプルに出没するんだ」

「それを聞いて、みんな笑っちゃいました」ジャンは語った。

「それで、不安が払拭されたんです。みんなすぐに気を取り直して、解決策を探るためにブレインストーミングを始めました」

笑いは私たちを立ち直らせてくれる

失敗したときでもユーモアを発揮すれば、気持ちの切り替えに役立つだけでなく、失敗から学んで立ち直りやすくなるため、失敗から再チャレンジまでの時間を短くすることができるのだ。

リーダーシップ専門家のダナ・ビルキー・アシェルはこう記している。「学ぶことができなければ、人びとを率いることはできない。ところが、新たな洞察を得て真の成長を遂げたいと思っても、みんなを失望させたくないという不安に襲われたとたんに、新しい情報を取り入れたり、処理したりすることができなくなってしまう。だが笑いこそ、私たちを立ち直らせてくれるのだ」

(翻訳:神崎朗子)

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「話がつまらない人」と面白い人の決定的な差

「若い社員」が次々辞める会社に足りないもの

日本人の笑いが「グローバル」でなく特殊な深い訳

提供元:社員の意識を変えた「しくじり社長」の面白失敗談|東洋経済オンライン

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