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2022.10.14

「茶道は古臭い」と思う人に伝えたい驚くべき効能|ストレスフルなビジネスパーソンに人気急上昇


ストレスフルなビジネスパーソンにお勧めしたいのは「茶道」です(写真:shige hattori/PIXTA)

ストレスフルなビジネスパーソンにお勧めしたいのは「茶道」です(写真:shige hattori/PIXTA)

茶道の新たな価値が注目され始めています。「近年、茶道を始めるビジネスパーソンが増えている」「ビジネスパーソンにとって有益な資質が養われる」と、メディアで話題を呼んでいるのです。

実際、茶道はビジネスパーソンの「癒やしとリフレッシュ」「仕事に使える教養の習得」「高い価値観を磨く人間修養」に大いに役立つとされ、また、「デザイン思考」「アート思考」などの右脳的思考も養われます。きめ細やかな配慮の心が育つことで、コミュニケーション力がアップするとともに、繊細な美を見出す感性が磨かれます。

不確かで複雑で曖昧でストレスフルなビジネス環境下で発揮する茶道の“効能”を、医師である著者が医学的に解説。書籍『大切なことはすべて茶道が教えてくれる。』から、3回にわたってお伝えします(今回は1回目)。

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ビジネスパーソンの脳・心・身体の過活動によるストレスは、心身の健康にとって重大なリスクのひとつです。働き方改革によって一見、長時間勤務など過重労働から解放されたかに見えますが、リモートワークのシステムが整備され、いつでもどこでも仕事ができる環境になり、仕事に追いかけられる状況にもなっています。

そのため、日常的に脳が過活動になるライフスタイルについては、あまり改善されていません。また新型コロナウイルスパンデミックの影響でビジネスが不安定になり、あらたな精神疲労の要因が増え、ストレスを訴える方は増加しています。

心身の活動が鎮静され休息がとれる

茶道をおこなうと心身の活動が鎮静されて休息がとれるため、しばしば「ストレスの解消になった」「リフレッシュした」という声が聞かれます。ただし、これは「楽になった気がする」という、たんなる心理的効果ではありません。

深いリラクゼーションは実際に身体の生理的な状態を即時に変化させますし、こうした機会を定期的にもつことで、ストレス性疾患の予防にもつながります。

ストレス反応とリラクゼーション反応については、多くの方が常識的な知識として身につけていらっしゃることと思いますが、医療の現場で幅広い研究が進められ、治療にも活用されてきた経緯があります。

ストレスは、正式には外部からの刺激や負荷(ストレッサー)によって、心身に生じる反応のことをいいます。1936年、カナダの生理学者ハンス・セリエ博士が「ストレス学説」を提唱したのが、医学における活用の始まりとされています。

ストレッサーには暑さ・寒さ、人体への有害物質など「物理的・化学的」なもの、栄養不足・睡眠不足・病気など「生理的」なもの、日常生活における緊張・不安・恐怖・悲しみ・怒りなど「心理的・社会的」なものがありますが、現代人のストレッサーのほとんどは「心理的・社会的」なものとみられています。

茶道はストレスを緩和する

人は心身に緊張や苦痛を感じたとき、筋肉が緊張し、呼吸数や心拍数、血圧などが上昇します。これは生体を防御するための反応で、一瞬にして起こります。

反応のプロセスをたどると、まず脳の前頭葉がストレッサーを脅威として知覚し、視床下部から自律神経系と内分泌系を通じて、全身の臓器や器官に対して危機に対応するよう指示が出される仕組みです。

ただし、こういった状態が一時的であればよいのですが、長い間、過度なストレスを受け続けるとこれらの反応も続くことになり、生体に問題が生じます。不定愁訴にはじまり、頭痛、高血圧、狭心症、消化性潰瘍、過敏性腸症候群、気管支喘息、皮膚炎など、さまざまなストレス性疾患を発症することにつながってしまうのです。

茶道の稽古をおこなうと、イライラや不安など不快な感情が軽快することがあります。心によどんでいた感情がすっきりと消化され、気分が軽くなったような感覚だといわれます。

ネガティブな感情を消化するにはさまざまな方法がありますが、不安や哀しみ、怒りなどを抱えていたとき、「ひと晩、眠ったら楽になった」「どうでもよくなった」という経験はどなたにもあると思います。一般的なレベルのネガティブな感情は、心に充分な休息を与え、本来の機能を回復させることで自然と消化されていきます。

茶道の稽古は「今この瞬間」に集中します。そのため思い悩んでいることから一時的に避難することができます。そして自然のアイテムに囲まれた安らぎの空間でリラクゼーションの時を過ごし、心が深い休息をとることができます。そのためネガティブな感情の消化がうながされるのです。

リラックスのレベルが深くなると、「いつもと違う身体感覚」を体験することがあります。茶道の稽古に十分、慣れた方の場合、お点前(てまえ)を見ているときや教えられた所作を自分がおこなっているとき、ふっと無心になる瞬間が訪れます。さらに熟練していくと、身体が所作をすっかり覚え、ほとんど何も考えず、ただ静かに身体を動かすようになります。

これは茶道に限りませんが、このように無心に何かの作業をおこなっている際、人は少し特殊な集中状態になり、五感が研ぎ澄まされます。

たとえばお点前に没入していると、指先の感覚が敏感になっていることに気づきます。思考が極限まで低減することで、自然と意識が感覚に集中され、鋭敏に感じられるようになるのだと思われます。

そんなときは、抹茶をすくう茶杓(ちゃしゃく)の木の感触や微かな香りを、普段より深く感じ取ることができます。また抹茶を入れる容器、棗(なつめ)のなめらかな手触りと漆塗り独特の香りも、深く味わうことができます。それまでは意識が向かなかった五感の感覚を、豊かに明瞭に楽しめるのです。

さらに、繊細な感覚を知ると、認識も繊細になります。そのため、このような感覚をたびたび経験することで、普段の物事の感じ方、とらえ方が次第に変化し、感性を磨くことにもつながっていきます。

抹茶の成分も、気分や思考活動のバランス調整に、大きく貢献しています。抹茶には、ビタミン、ミネラル、食物繊維のほか、カテキン、テアニン、カフェイン、サポニンなど健康によい成分が豊富に含まれています。

身体への作用としては、カテキンの効果がよく知られています。抗ウイルス作用や、免疫細胞であるマクロファージの活性化作用をはじめ、悪玉コレステロールを減らして動脈硬化を予防する効果、アミロイドベータの毒性を低減してアルツハイマー型認知症を予防する効果などが注目されています。

抹茶は腸内フローラのバランスを整える

ほかにメカニズムはわかっていませんが、抹茶が腸内の悪玉菌の一部を減らし、善玉菌を増やして腸内フローラ(腸内細菌叢)のバランスを整える作用も示されています。

心への作用としては、何といってもリラックス効果が大きいでしょう。さらに農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)の研究では、カフェインとテアニンの絶妙なバランスによって、心理的ストレスの影響が軽減され、ストレス耐性も高めている可能性が示されています。

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抹茶には、覚醒作用があるカフェインが含まれているのですが、別の成分、テアニンがその働きを抑制するため、興奮状態になることはありません。リラックスしながら、頭が明晰に冴えた状態に整えられます。

その一方、コーヒーはテアニンを含んでいないため、カフェインが中枢神経を刺激して交感神経の働きを高め、興奮状態に導きます。眠気をすっきり覚まして一時的に集中力を高めるにはよいのですが、抹茶とは作用が異なっているのです。

このテアニンは、それ自体にもリラックス効果と抗ストレス作用があります。テアニンを摂ると30~40分後にはアルファ波が発生し、摂取量を増やせば不安傾向が高い人にも効果があることが確認されています。

またマウスを使った農研機構の研究では、抹茶を継続して飲んでいると、急性ストレスによって起こる意欲の低下を抑える可能性があるとしています。

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提供元:「茶道は古臭い」と思う人に伝えたい驚くべき効能|東洋経済オンライン

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