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2022.10.13

疲れも心の傷も3倍モード、うつが深刻化する過程|大切な人が塞ぎこんでいたらどう対応するか


大切な人がふさぎ込んでいたらどう対応すればよいのでしょうか(写真::Pangaea / PIXTA)

大切な人がふさぎ込んでいたらどう対応すればよいのでしょうか(写真::Pangaea / PIXTA)

夏から秋へ、季節の変わり目は体調を崩しがち。でも、それって、本当に気候のせいなのでしょうか。肩こりや腰痛、頭痛がひどくなったり、肌荒れやアトピーが悪化したり……体の不調は、ストレスが原因であることも少なくありません。もしも、あなたの大切な人が、いつもより落ち込みやすく、猜疑心でいっぱいだったら、それは“うつ”の始まりかも。メンタルレスキュー協会理事長の下園壮太氏、公認心理師の前田理香氏による共著『家族が「うつ」になって、不安なときに読む本』から、“疲れ”が引き起こす心の病についてお話しします。

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うつ状態の人は、すべてにおいて「3倍モード」

現代人のうつ症状の多くは「疲労困憊」が原因です。人は元気なときと疲れているとき、疲れているときと疲れ果てているときでは、心や体が変化するだけでなく、体の感じ方や物事の見え方まで変わってきます。疲労の蓄積とともに落ち込みの度合いが高まり、うつの症状が出現してくるのです。

この疲労は、通常徐々に、しかも連続的に変化していくものですが、うつの当事者や周囲の方にイメージしてもらいやすくするため、あえて3つの段階(1倍〜3倍モード)に分けて説明します。

「蓄積疲労の3段階(1倍〜3倍モード)」(本書より引用)

「蓄積疲労の3段階(1倍〜3倍モード)」(本書より引用)

通常の疲労を「1段階疲労(1倍モード)」とし、次の段階を「2段階疲労(2倍モード)」、そして疲労困憊し、理性的になれない状態を「3段階疲労(3倍モード)」と呼んでいます。段階が進むにつれ、うつも深くなるプロセスと理解してください。

【蓄積疲労の3段階】

●1段階疲労(1倍モード)

ざっくり言うと、その人が「普通に元気」に暮らせている状態です。1日仕事や勉強をして疲れても、一晩ぐっすり眠れば、疲れがとれて、翌朝元気に会社や学校に行けます。もし、結構ハードな1週間を過ごしたとしても、週末ゆっくり休めば心身の疲労が回復し、月曜日には出社(登校)ができる程度の疲れです。

●2段階疲労(2倍モード)

「まぁまぁ疲れているな」から「かなり疲れているな」と感じる段階で、土日休んだくらいではなかなか疲れがとれません。

ゴールデンウィークや年末年始などの1週間以上の連休でしっかり休めば、なんとか少し疲れがとれますが、またすぐに疲れが溜まってしまい、常に疲労を溜め込んでいる状態を言います。

1段階疲労のときの疲労感をa、回復にかかる時間をbとすると、2段階疲労では、同じ出来事に対して2倍疲れて(2a)、回復にも2倍時間(2b)がかかります。

疲れているのに寝つけなかったり、睡眠が浅くなったり、食欲不振、体調不良などの身体症状が出始めます。また、自信が低下したり、なんとなく自分が頑張っていないような気がしたり、周囲の視線が怖くなるなど、精神状態にも変化が出てきます。

長めな休みが必要な3倍モード

●3段階疲労(3倍モード)

いよいよ「疲れ果てている」状態で、かなり長めな休みをとって心と体を休ませないと、疲労がとれない段階です。

同じ出来事に対して3倍疲れて(3a)、回復にも3倍時間(3b)がかかってしまいます。3段階疲労の状態では、さまざまな身体症状や精神症状が悪化し、どんどん不安が大きくなっていきます。そして、「もう終わりにしたい」「自分などいないほうが良い」という気持ちまで出てきてしまうのです。

1倍モードで8時間働いたときの疲れが、2倍モードでは倍の時間働いた疲労に感じます。3倍モードでは24時間働き続けたような疲労を感じるので、通勤するだけで、さらに言うと「会社に行かなければ」と想像するだけでヘトヘトになってしまいます。言わば「別人モード」で、理性的に物事を考えることがむずかしくなっている状態です。

疲労の感じ方だけではなく、傷つきやすさも1~3倍です。

例えば、朝出勤したときに「おはようございます」と隣の席の人に声をかけました。そのとき、隣の席の人はもう仕事を始めていて、忙しそうに何かをパソコンに打ち込んでいたため、あいさつを返してくれなかったとします。

1倍モードのあなたは「忙しそうだな。集中しているから聞こえなかったんだろうな」と思うかもしれないし、もしかすると気にならないかもしれません。ところが、2倍モードのあなたは、「あっ、無視された」と感じ、傷ついてしまうのです。

これが3倍モードにいると、「無視された」と感じるだけでなく「みんなから嫌われているんだ」「私なんか辞めればいいと、みんな思っているんだ」と考えてしまうのです。

カウンセリングのなかで、3倍モードと思われる方に「例えば、遠くで同僚が2人で話をしていて、チラッとあなたを見ただけで『自分の悪口を言っているんじゃないか?』って感じることはありませんか?」と尋ねると、ほとんどの方が「はい、よくあります」と答えます。

このように3段階疲労(3倍モード)にいる人は、3倍疲労するだけでなく、日常のすべてを3倍の傷つきやすさで感じ、3倍神経を使い、3倍考え続けてしまうのです。

疲労モードは常に変化する

うつの症状の進展には、「体の不調開始期」「別人モード開始期」「底期」「回復期」「リハビリ期」という5つの段階があります。詳しくは拙著をお読みいただくとして、体の不調開始期〜底期は、ここで紹介した1倍モードから3倍モードに至る過程、回復期〜リハビリ期は、3倍モードから1倍モードに上がる過程と理解してください。

図表「回復過程を正しくイメージする」(本書より引用)

図表「回復過程を正しくイメージする」(本書より引用)

最初は文字どおり、その人の身体的に弱い部分から変化が出始めます。肩こりや腰痛、頭痛がひどくなったり、喉の弱い人は喉が腫れたり、アトピーが悪化したり、さまざまな不調が現れます。

また、多くの人が、寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなったり、朝早く目が覚めてそれから眠れなかったりする、睡眠のトラブルを感じ始めます。胃腸の調子がわるくなったり、食欲がなくなる人もいれば、反対に甘い物などを食べ過ぎる人も少なくありません。

うつは、非常に波が大きいので、5段階のどの期でも、今日は3倍モード、明日は1倍モードというように、短期間(短時間)でも状態が大きく変化します。

うつの症状は人それぞれ

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『家族が「うつ」になって、不安なときに読む本』(日本実業出版社) クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします

そのため、大きな症状の進展プロセスだけでなく、1倍モードから3倍モードまでのどの状態なのか把握することを意識してほしいのです。

たとえリハビリ期に入っていても、今日が3倍モードの状態なら、リハビリのためのトレーニングは中止して休養しなければなりません。

うつの症状は人それぞれ、回復までの期間も数カ月という人から何年も続く人までさまざまです。

病に対する正しい知識を身につけ、回復過程をイメージしながら、焦らずに向き合うことが大切です。

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提供元:疲れも心の傷も3倍モード、うつが深刻化する過程|東洋経済オンライン

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