2022.10.12
もしもがんに…「治療効果を上げる」告知の受け方|押さえておくべきポイントをがん専門医が解説
的確な質問、相談ができるかが、今後の治療がうまくいくか否かの岐路となるといっても過言ではありません(写真:Luce/PIXTA)
この病院でいいのか、この治療法でいいのか、受けている治療がうまくいっていない気がするが、誰に相談すればいいのか……。そんな不安が常につきまとうのががんという病気です。
たとえ同じ治療をしていても「効果が上がりやすい患者さんには多くの共通点がある」と、抗がん剤治療の名医である井岡達也氏は分析します。それは一体何でしょうか?
治療法の選択、主治医を味方にする話し方からお金の使い道など……。後悔のない治療をし、効果を最大限にするために患者側でできることを親身かつ具体的にアドバイスする同氏の新刊『がん治療 うまくいく人、いかない人』より、抜粋してお届けします(1回目)。
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がんと診断されると、医師から告知を受けます。誰にとっても初めてのことで、気が動転します。家族も冷静ではいられないことでしょう。
患者や家族にとって、オーバーな言い方をすれば「死刑宣告」を受けたともいえるかもしれません。
医師からがんの告知、治療計画の話がある際に、どのくらい冷静に受け止められるか、的確な質問、相談ができるかが、今後の治療がうまくいくか否かの岐路となるといっても過言ではありません。ここでは医師としてどのように告知を行い、治療計画を話すかをご紹介し、押さえておくべきポイントを説明しましょう。
どのように告知されるのか
がんと診断された人は、どういう経緯で診断に至るのでしょうか?
腹痛や食欲不振などの症状が気になって、近くの病院を受診したら、もう少し大きな病院を紹介されて、がんと診断された人もいれば、症状はまったくないのに人間ドックや検診でひっかかって、精密検査を追加して受けたところ、がんと診断される人もいます。
どちらにしても町の開業医によってがんの診断や告知が行われることはほとんどなく、追加の精密検査を受けた大学病院や市中病院で確定診断されて告知されることになります。
外来の検査で診断された場合、多くは外来診療を担当する中堅以上の医師から告知されることになりますが、入院の検査で診断された場合は、比較的若い先生から告知されることもあります。大きな病院では、入院患者さんは若い先生が担当することが多いからです。
外来での告知は、普段の外来診療を行っている診察室で行われます。
「次回、大事なお話があるから、ご家族が同席してください」と言って、患者さんが家族と一緒に告知を受けられるようにしてくれる医師もいますが、患者さんがお一人で受診しても淡々と告知される医師もいらっしゃいます。
たとえ予想していたとしても、がんの告知は患者さんにとって一大事ですから、できれば複数人の親族が同席することが大切です。
また、外来診療では、非常にたくさんの患者さんを次々に診察しなければなりません。いろいろと聞きたいことがたくさんある場合は、ひと通りの説明を受けた後、いったん、診察室から退出し、その日の診察がすべて終わった時間に再度時間をとってもらうか、別の日に時間をとってもらうのがよいと思います。
入院中の告知の場合、担当の若い医師から説明されることに不安があるなら、入院を指示した中堅の医師がその病状説明(医療者はムンテラという用語を使います)に同席できるか確認するとよいと思います。
担当医師からご家族に、「病状を説明しますから、明日の17時にご家族は来院してください」などとひと言ありますから、その際に「外来主治医の山田先生(仮名)はその説明に同席されるのですか? お忙しいでしょうが、本人が安心するので、山田先生にも同席していただきたいのですが……」とお願いすれば、多くの場合うまくいくと思います。
もしも、「山田先生は、その時間、手術中なので、同席できません」などと返された場合には、「遅い時間でも家族は集まりますから、ご対応いただけませんか?」とか、「明後日でしたら、山田先生にも同席していただけますか?」などとお願いすればよいでしょう。
がんはどんな検査で見つかるのか
診断には、組織検査でがん細胞が確認される確定診断と、CT検査などで判断される画像診断があります。
画像診断は、いわゆる見た目で診断しますので、間違えることもありますが、遠隔転移が明らかな場合、画像診断でもがんの診断に間違いはないでしょう。
胆のうがんなど一部のがんでは、組織を採取することに危険を伴うことがあるので、画像診断だけで外科手術を勧められることがあります。一方、遠隔転移が明らかでも、組織を診断した結果によって治療が変更になる場合には、画像診断だけでなく組織検査も積極的に行います。
また、最近、がんの組織を調べ、がんの遺伝子情報に合わせて治療するというゲノム医療の可能性も出てきましたから、治療前の組織検査の重要性は増しています。
組織検査なしで大きな手術をすることを推奨された場合、腫瘍によって血液中や排泄物中に増える物質である腫瘍マーカーなどの情報や、良性疾患の可能性について尋ねたほうがよいでしょう。
大きな手術の結果、摘出せずに放っておいても問題のない良性の腫瘍であることがわかって「よかったですね」と言われても、その手術で摘出した臓器の機能は戻ってきません。一方で、かなり悪性が疑われるのに、手術を躊躇して治療が遅れ、結果的に手術がうまくいかなかったら、もっと残念です。
進行が速いがんと遅いがんがある
ここで問題となるのは、いろいろな決断を急いだほうがよいか否かということです。
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がんには一般的に進行が速いがんと、遅いがんがあります。膵がんは進行が非常に速いがんとして有名ですし、前立腺がんの場合、一般的に進行はゆっくりです。
また、高齢者の場合、一般的に進行はゆっくりと言われていますが、膵がんでは高齢者でも進行は速いことが多いようです。もちろん、40代や50代といった壮年の患者さんは、進行が速いので素早い決断が要求されると思います。
複数の有名医師のセカンドオピニオンを検討し、納得して治療を受けようと思っていたら、全国あちこちのセカンドオピニオン外来受診に数カ月もかかって、当初の病状とまったく変わった結果、手遅れになってしまったなどということのないように、ご自分の病気の進行速度を予想して対処するとよいでしょう。
病状の説明を受けるときに、医師に確認しなければならないのは、次の8つのポイントとなります。病院へ行く前にメモをしておくなど、参考にしてもらえれば幸いです。
(1)どこのがんか?
(2)転移はあるのか?
(3)組織検査はしたのか?
(4)外科手術ができそうか? 一般的な再発率は?
(5)術後の生活には、どのくらいの支障があるか?
(6)現在の体力や持病のある状態で、手術を乗り越えられるか? リスクは?
(7)(手術できないと言われた場合)どんな治療があるのか?
(8)今の病院ではできないが、ほかの病院なら可能になる治療はあるのか? たとえば、放射線治療など
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提供元:もしもがんに…「治療効果を上げる」告知の受け方|東洋経済オンライン