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2022.10.11

「テレワーク頻度」と「幸福度」が正比例しない理由|在宅勤務で増えた余暇は何に使われているのか


テレワークの普及はワークライフバランスにどのような影響をもたらしているのでしょうか(写真:ThanhAn/PIXTA)

テレワークの普及はワークライフバランスにどのような影響をもたらしているのでしょうか(写真:ThanhAn/PIXTA)

景気の先行きも心配だし、マスク生活やレジャー自粛も息が詰まる。でも「幸せ」か、と聞かれれば悪くない毎日かも──。野村総合研究所の「生活者1万人アンケート調査」では、1997年から3年ごとに日本の消費者のトレンドを追いかけているが、直近の調査では、景況感が悲観に振れたにもかかわらず、「幸福度」や「生活満足度」は伸びている。

時系列の大規模アンケート調査をベースにまとめた『日本の消費者はどう変わったか』を上梓した著者が、コロナ禍の中でもしなやかに順応しながら、穏やかで控えめな「幸せ」を見つけている、現代日本の消費者の意識・行動や、今求められるマーケティングの方向性を解説する。

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コロナ禍をきっかけに1500万人がテレワークを実施

新型コロナウイルス感染拡大は、同時に就業においてテレワークという新しい働き方を拡大させた。

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日本では2020年4月の緊急事態宣言の発令に伴い、多くの企業でテレワークが進むことになった。就業者6,700人に対して、直近1年間のテレワーク実施日数を調査したところ、テレワークを1日でも実施した人は22%存在していた(NRIが2021年8月に実施した「生活者1万人アンケート調査」。15歳~79歳までの就業者が対象)。

総務省統計局の労働力調査によると、2021年8月時点(先の調査の実施されたタイミング)の日本の就業者は約6,700万人であることから、約1,500万人がテレワークを行っていたことになる(調査では80歳以上の就業者データは取れていないが、絶対数は少ないため、テレワーク実施比率は79歳以下の就業者と同様の比率として計算)。

さらには年間120日以上、つまり1年の3分の1以上もテレワークをしたという人は就業者全体の5%存在していた(テレワーク実施者<22%>内では約4分の1に相当)。これも同様に人数に換算すると約340万人となる。これだけの数のテレワークヘビーユーザーがコロナ禍をきっかけに生まれたのである。

日本での通勤時間は総務省統計局の社会生活基本調査によると片道40分程度だが、車通勤の少ない首都圏では片道50分程度である。テレワークは勤務先への移動をカットでき、これまで通勤に費やしていた時間を、その分プライベート時間に充てられる。

テレワーク実施者と非実施者の趣味や余暇活動の違いを「生活者1万人アンケート調査」(以下、1万人アンケート)の結果から分析してみよう。

「あなたが休日や自由な時間などによくする趣味・活動は何ですか」という設問に対しての回答は、テレワーク実施者は「国内旅行」や「映画・演劇・劇場鑑賞」など外出を伴い、余暇自体を楽しむアクティビティの割合も、さらに「散歩」「ランニング・ウォーキング」など自宅や自宅周辺で実施できるアクティビティ割合も高くなっている。

具体的には、「国内旅行」(+10%)や「映画・演劇・劇場鑑賞」(+6%)、「パソコン」(+11%)、「ランニング・ウォーキング」(+10%)、「読書」(+8%)、「散歩」(+6%)、「スポーツ・フィットネス」(+5%)と、テレワーク実施者は、非実施者に比べると趣味や余暇活動の数字が相対的に高いことがみてとれる。

これらアクティビティはテレワークの合間の休憩時間にも実施できることを踏まえると、テレワーク実施者に余剰時間が生まれたことが、ライフ面の充実にもつながっていることが推察される。

なお、「積極的にお金を使いたい分野」の調査項目において、「趣味・レクリエーション関連」と回答した人は、テレワーク非実施者34%に対し、テレワーク実施者は41%であることからも、テレワークによる余剰時間が消費への活性化にもつながっていることがうかがえる。

ワークライフバランスの視点ではテレワーク導入によって、「ライフ」側へ大きく加速したといえよう。

テレワーク頻度が高いほど幸福度が高いわけではない

テレワークによって「ライフ」の時間が確保され、人々の生活が充実したように思えるが、果たしてテレワークの実施は生活者の幸せにつながっているのだろうか。またテレワークが多い人のほうが幸せなのであろうか。そこで1万人アンケートにより、テレワークの実施頻度と幸福度の関係について分析を行った。

調査では幸福度を「非常に幸福」を10点、「非常に不幸」を0点としたときの11段階で調査しており、ここでは幸福度の平均値による比較を行った。

結果は、テレワーク未実施者の幸福度平均値6.9に対し、テレワークの実施者の幸福度平均値は7.2であり、テレワーク実施者の幸福度が高いことが示された。

一方で、テレワークが多いほど幸せか、といった点については、テレワーク頻度を加味した分析からは否定的な結果が得られている。具体的には年間30日から120日程度テレワークを実施していた人の幸福度は相対的に高い(7.3~7.5)が、年間120日以上実施している人の幸福度は下がる(7.1)。

就業日数を年間240日程度と仮定すると、テレワークを週に1~3日程度実施している人がもっとも幸せに感じていることになる。

テレワーク頻度が高い人において幸福度が下がってしまう背景には、コロナ禍において「夫婦独立の意識」が高まっていることとも関係があるように思える。

1万人アンケートには、家族観に関する設問として「場合によっては夫婦の間で秘密を持ってもかまわない」や「夫婦はお互い経済的に自立した方が望ましい」といった項目があり、この価値観は2015年調査以降に上昇してきた。背景としてはスマートフォン保有が中高年層中心に伸びたことにより、インターネットアクティビティの個人化が大きく進んだことが大きな要因であると考えていた。

夫婦独立の意識は伸びている

つまり、夫婦それぞれがスマートフォンという個人端末を活用することで、動画を楽しむことやショッピングする、SNSで他者とのコミュニケーションを楽しむといったことができ、夫婦がお互いに何をしているかがわからないが、それでよいとする考えが広まったと考えられる。

この夫婦独立の意識は、2021年調査で大きく伸びている。

具体的には、「場合によっては夫婦の間で秘密を持ってもかまわない」は2018年の61%から2021年は65%に、「夫婦はお互い経済的に自立した方が望ましい」は2018年62%から2021年68%といったように、2021年調査でさらに伸びている。

背景には、外出自粛やテレワークの普及による自宅勤務、通勤時間の削減により余剰時間が生まれ「おうち」時間が増えたことにより、これまで以上に夫婦が同じ場所で時間を共有することになったことが要因となっているのではないか。

コロナ禍以前は出社が当然であり、どちらか一方でも働いていれば、各々が別々の場所で時間を過ごすことから、ある程度の発散やガス抜きができていた。それが、コロナ禍によってその機会が失われてしまったことにより、意識的に個人個人の時間を持ちたいという気持ちが高まったとも考えられる。

夫婦であっても、すべてを相手と共有するのではなく、それぞれの趣味や興味、人間関係などは個人のものとして持ち続ける、新しい夫婦の在り方が求められているといえそうだ。

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提供元:「テレワーク頻度」と「幸福度」が正比例しない理由|東洋経済オンライン

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