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2022.09.30

定年後の年収「60代後半の中央値180万円」の実態|定年前に下がり、定年後にもう一段低下する


高齢でも高収入を得ている人は少数派(写真:Fast&Slow/PIXTA)

高齢でも高収入を得ている人は少数派(写真:Fast&Slow/PIXTA)

定年後も働き続ける傾向が高まっている。しかし、定年後の働き方については漠然としたイメージはあるものの、本当のところはよく知られていないのが実情だ。そこで定年後の年収はどの程度になるのか、データと併せてみていきたい(※本稿は『ほんとうの定年後 「小さな仕事が日本社会を救う」』より一部抜粋・再編集してお届けしています)。

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安定した老後を送るためにはなんといっても経済的な裏付けが欠かせない。果たして現代の定年後の就業者はどのくらいの収入を得ているのか。また、将来において、定年後に高所得を得ることは可能になるのか。収入の額の分布から現実を見ていこう。

意外と知らない「定年後の年収」

まず、定年後の年収はいくらなのだろうか。

国税庁「民間給与実態統計調査」によれば、2019年の給与所得者の平均年収は436.4万円となっている。この調査には、国内で働くすべての給与所得者が含まれており、フルタイムで正社員として働く人はもちろんパート労働者なども含まれた数値となっている。

給与所得者の平均年収は、20〜24歳の263.9万円から年齢を重ねるごとに右肩上がりで上昇し、ピークを迎えるのが55〜59歳の518.4万円となる。そして、多くの人が定年を迎える60 歳以降、給与は大きく減少する。平均年間給与所得は、60〜64歳には410.7万円、65〜69 歳では323.8万円、70歳以降は282.3万円まで下がる。

図表1‒1では、現在の年齢区分で比較可能である最も古い年次である2007年における平均年収も記している。定年後の就業者について、2007年当時の給与水準と比較すると、はっきりと上昇している年齢区分は存在しない。高齢者人口の増加や労働参加の促進によって高年齢者の就業者数は増えていることから、厳密にいえば高い収入を稼ぐ人の絶対数も徐々に増えているとは考えられるが、まだまだ定年後の就業者の平均的な収入水準は低いといえそうである。

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この調査が集計しているのは、民間給与所得者でかつ一年間を通して就業している人の給与額の平均値である。現役世代の収入については給与所得者のデータで概ねその全体像がわかるが、高齢就業者は自営業者であることも多く、サラリーマンとして給与を得る人はそこまで多くない。

定年前後以降の年収分布をより仔細にみるために、また自営業者を含む就業者全体の給与を調べるために分析を行ったものが次の図となる(図表1‒2)。

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ここからも、定年以降は年齢階層が上がるにつれて所得が徐々に低下していく様子が確認される。60歳以降の就業者全体の年収分布をみていくと、60代前半では平均収入は357万円で、上位25%所得は450万円、収入の中央値は280万円となる。

60代後半に目を移すと平均額は256万円まで下がり、上位25%所得は300万円、中央値が180万円まで下がる。定年後の就業者の収入の実態を探っていくと、300万円以下の収入の人が大半であることがわかる。

また、収入の平均値やその分布は、就業者を分母として算出される。このため、当然であるが非就業者は算定の対象外になる。定年後は非就業となる人、つまり収入がゼロになる人が多くいるため、高年齢者全体である程度の収入を得る人は非常に少ないというのが実情ということになる。

定年前に下がり、定年後にもう一段低下

先の図表では、定年前の収入額の変遷を分析するために、40代後半から50 代まで3歳おきの収入分布を掲載している。このデータから、収入のピークは定年直前の50代後半ではなく、50代中盤にあることがわかる。

収入低下の第一のタイミングは50代後半に訪れる。これは、定年を前にした役職の引き下げによるものだと考えられる。一定数の企業は役職定年制度を定めており、それと同時に給与も下げる傾向がある。

役職定年制度の実態は、人事院が公務員の給与を算定する際に活用している調査である「民間企業の勤務条件制度等調査」からつかむことができる。2017年時点において、企業全体の16.4%、従業員規模500人以上に絞れば30.7%の企業が役職定年制度を導入している。

役職定年制度を正式に採用している企業は多くはなく、潮流としては一律に年齢で役職の上限を設けるという企業は減る傾向にある。しかし、役職定年制度がない企業でも異動によって実質的な役職を下げて賃金を抑制するなど、運用によって賃金を引き下げているケースもある。50代後半になると早期退職で収入水準を下げる人もいるなど、個人の年収のピークは50代半ばにあることが多いと考えられる。

そして、第二の給与削減の波は、定年直後に訪れる。これは想像の通り、定年を迎えた段階で会社を退職したり、同じ会社で再雇用に移行したりすることで給与が減少するからである。

60歳から64歳の平均給与所得は55歳から59歳の8割程度である。これは、女性配偶者などもともとパートで働いている人なども含まれた数値となるため、50代で正社員で高収入を得ていた人などは低下幅はより大きくなると予想される。正社員で勤め続けていた人に限定すれば、同じ勤務体系でも定年直後は定年前と比較して3割程度給与が下がるというのが実情のようである。

歳を重ねるごとに収入は減少する

定年後、多くの人が年齢を重ねるにつれて徐々に稼得水準を下げていることにも着目したい。つまり、定年後の所得状況をみると、年収水準は定年前後に不連続かつ一時的に減少するというよりも、むしろ定年前後以降に緩やかにかつ断続的に減少していくというのが実態に近い。

これはなぜかというと、歳を取るごとに自身に様々な変化が起こり、より無理のない範囲で働くよう就業調整をしているからだと推察される。仮に50代でセカンドキャリアに向けて起業をしたとして、優秀な方であれば気力あふれる当初においては事業を順調に営むことができる。

しかし、65歳、70歳、75歳と歳を重ねれば、自身の健康面や仕事に向かう気力や体力などに変化が訪れる。やっと事業に目途がたったと同時に、その事業の縮小を余儀なくされることも珍しくない。

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あるいは、定年後に嘱託やパート・アルバイトといった形で非正規雇用で就業を続けている人であっても、歳を取るごとに収入をある程度犠牲にしてでも就業時間を制限し、より無理のない仕事に調整することがある。

定年後のキャリアに向けて、仕事で挑戦を続ける姿勢を否定しているのではない。むしろ、多くの人が高齢になってもスキルアップを続けて社会に貢献することは、社会的に好ましい。実際に70歳時点で700万円以上の年収を稼ぐ人は就業者のなかで5.2%と一定数存在している。

世の中にあふれている成功体験をみるまでもなく、年齢にかかわらず挑戦を続け、大きな成功を手にする人が存在することは疑いのない事実である。

しかし、現実の収入分布をみると、そういった働き方を続ける人は少数派だとわかる。今後ますます人々の就業期間の延長は進むであろうが、過去からの推移をみても、定年後に高い給与を得る人が急速に増加していくことはこれからも考えにくい。定年後高収入を実現している人は現実的な人数としてはそう多くないのである。

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提供元:定年後の年収「60代後半の中央値180万円」の実態|東洋経済オンライン

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