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2022.09.14

年金が老後足りるか心配な人に伝えたい基礎知識|生活費との兼ね合いや受給増やす法を知っておこう


受給する年金金額を把握しておけば、老後の生活の計画を立てられます(写真:artswai/PIXTA)

受給する年金金額を把握しておけば、老後の生活の計画を立てられます(写真:artswai/PIXTA)

老後に年金がどれほどもらえるか不安に思っている現役世代のビジネスパーソンは少なくないでしょう。今から準備できることや心づもりは?

水上克朗氏の著書『見るだけでお金が貯まる賢者のノート』から一部抜粋、再構成してお届けします。

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まずは年金の仕組みを理解する

「年金制度はいずれ破綻する」とか「国の年金は当てにならない」などと言われることがありますが、これらに根拠はありません。

日本の年金制度は、「賦課方式」といって、現役世代の払っている年金保険料を、現在の高齢者が受け取る仕組みで、現役世代が高齢世代に仕送りする仕組みです。

現役世代が働き、厚生年金保険料を納め続ける限り、年金制度は維持され、高齢世代が受給し続けられるようになっています。

また、国は年金制度が破綻しないようさまざまな対策を講じています。具体的には、マクロ経済スライド(賃金や物価の改定率を調整して緩やかに年金の給付水準を調整する制度)の導入や、年金積立金の確保、税金の投入、受給開始年齢の引き下げなどを行っています。

このように、年金制度は国が運営管理している社会保障制度であるため、そう簡単には破綻しないはずです。

日本では、厚生年金保険料の半分は事業主が負担します。また、国民年金の半分は税金で賄われています。そのため、年金の額は払った額よりもかなり多くなります。

例えば、厚労省の「2014年財務検証」によると、厚生年金(国民年金を含む)だと、現在45歳の人は払った保険料の2.4倍(国民年金で1.5倍)の金額がもらえます。同様に、35歳の人は払った保険料の2.3倍(国民年金で1.5倍)の金額がもらえます。ですから、国の年金があてにならないとはいえません。

ただし、将来的に受給額が減少することは覚悟しておく必要があります。厚労省「2019年財務検証」によると、中間的な経済ケースで「2047年度に所得代替率(年金を受け取り始める時点の65歳における年金額が、現役世代の手取り収入額と比較してどのくらいの割合か、を示すもの)が61.7%から50.8%になる」といわれています。

(出所)『見るだけでお金が貯まる賢者のノート』(自由国民社、以下同)

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公的年金の平均受給額を見ていきましょう。

厚労省のデータによると、厚生年金の平均年金月額は14万4366円です。

男性の平均月額が16万4742円であるのに対し、女性は10万3808円。

また、基礎年金(国民年金)の平均年金月額は、5万6252円です。

夫婦合算で見ると、共働きのケースでは、合計26万8550円。夫が会社員で妻が専業主婦のケースでは合計22万994円になります。夫婦とも自営業のケースでは合計でも11万2504円にしかなりません。

一方で、老後の生活費は毎月いくら必要でしょうか。

生命保険文化センターによると、老後の夫婦2人の最低日常生活費は月平均22.1万円、ゆとりある老後生活費は月平均36.1万円です。

だとすると、共働きのケースでは平均年金月額は26万8550円ですので、ゆとりのある生活はできないけれども、生活費に困るということはありません。

会社員と自営業でどれほど違うか

また、夫が会社員で妻が専業主婦のケースでは、平均年金月額は22万994円なので、最低生活費は約22.1万円近くになるものの、節約などをすれば、年金だけで生活が維持できそうです。

ただ、自営業の夫婦では、平均年金月額が11万2504円のため、最低日常生活費までに約11万円も足りず、公的年金だけでは生活は難しいでしょう。

上記のケースで考えてみて、図表②の年金額の計算式(ざっくり計算式)に、「勤続中の平均年収」と「払う予定の年数」を当てはめれば、自分がもらえる年金の額がおおまかにわかります。

たとえば、平均年収600万円、勤続年数38年(456月)の場合、基礎年金は73万8910円(=77万7800円×456月/480月)、厚生年金は124万9668円(=6(百万円)×38年×0.5481)もらえます。

合計年額は198万8578円となり、月額に換算すると16万5714円になります。

さらに正確な年金額を知りたい方は、誕生月に送られてくる「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」を確かめてみるといいでしょう。自分や世帯の年金額を把握しておくことはとても大切です。

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一方で、受給する年金額を上げられないのでしょうか。

ここでは年金を増やす方法を3つ紹介します。

(1)厚生年金に加入して収入を上げ、長く働く

会社員の場合、「厚生年金に加入して収入を上げてかつ長く働くこと」で、将来受給できる厚生年金の額を増やすことができます。

厚生年金は70歳まで加入できます。たとえば、60歳以降に平均月収20万円で60歳から65歳まで働いた場合は、年間で約6万6000円、同様に60歳から70歳まで働いた場合は年間13万2000円、厚生年金額を増やすことができます。

年金は生涯ずっと受け取れるので、長生きすればするほどもらえる額が増えます。

(2)65歳以降「年金を繰り下げて受け取る」

65歳以降は「年金を繰り下げること」(年金の受給開始を遅らせること)で年金を増やすことができます。現在、年金を受給できるのは原則65歳からですが、65歳から75歳の間で受給のタイミングを選ぶことができます。

年金の受給開始を1カ月遅らせるごとに、受け取れる年金の額は0.7%ずつ増加し、70歳まで繰り下げれば42%(75歳まで繰り下げれば84%)も受給額を増やすことができます。老齢基礎年金、老齢厚生年金ともに繰り下げることも、どちらか一方だけ繰り下げることもできます。

何歳から年金をもらうのがよいかは「何歳まで生きるか」によりますが、損益分岐点は、受給開始年齢から約11年11ヵ月目です(100%÷8.4%≒11.904)。
70歳まで繰り下げた場合は、約81歳11ヵ月です(税金や社会保険料、加給年金などは考慮せず)。

平均寿命が延びていることを考えると、少しでも多くもらえる繰り下げ受給も選択肢の1つになります。

免除や猶予の措置を受けていた人は?

(3)老齢基礎年金の受給額を増やす

国民年金に10年間加入していれば、老齢基礎年金を受け取ることができます。

もっとも、満額を(令和4年度77万7800円)受給するためには、国民年金に40年間加入している必要があり、この間に保険料の免除期間や猶予期間があると、受給額が少なくなってしまいます。最大で過去10年までさかのぼって納められるので、免除や猶予の措置を受けていた方は、できるだけ追納して受給額を増やしたほうがいいでしょう。

また、60歳から65歳までに「任意加入」をして保険料を支払うことでも、老齢基礎年金の受給額を増やすことができます。

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先に述べましたが、老後の夫婦2人の最低日常生活費は月約22万円、ゆとりのある生活をするために必要な費用は、月約36万円です。そして、リタイア後30年にそういった生活をするとしましょう。

公的年金の平均受給額が月約22万円(夫:会社員、妻:専業主婦の場合)だとすると、最低日常生活費で暮らす場合は必要額0円。30年続けても毎月マイナスが発生しないため、余分に老後資金を準備する必要はありません。

ゆとりある老後生活を送りたいなら?

ただし、ゆとりある老後の生活を送りたい場合は、公的年金平均受給額が月約22万円(夫:会社員、妻:専業主婦の場合)だとすると、毎月14万円足りず、年間168万円程足りません。それが30年続くので、約5040万円を準備する必要があります。

老後は悠々自適、旅行に行ったり、クルマを買い替えたり、子どもの結婚資金も援助したりなど、そういったゆとりを持ちたければ、上記のように準備すべき老後資金は跳ね上がります。

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ですから、どういった生活をしたいのか考えて、おおよその必要額を具体的に計算しておく必要がありそうです。

ただ、大事なのは「お金」だけではありません。どんな老後(セカンドライフ)を過ごしたいのか、「健康」や「生きがい」なども含め、自分らしい生き方を考えることがなにより大切です。

つつましくも夫婦で過ごす時間を大切に考えるのか、現役中は忙しく、旅行などのレジャーに充てられる時間が無かったので、夫婦でアクティブに過ごしたいと考えるのか、でも大きく変わってきます。

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提供元:年金が老後足りるか心配な人に伝えたい基礎知識|東洋経済オンライン

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