2022.08.09
脳の活動低下を招く「自己否定」する人の特徴3つ|傾向を知ってマイナス思考のスパイラルを回避
自己否定の沼から抜け出せない人たちの共通点とは…(写真:マハロ/PIXTA)
自分の価値を認め、存在を肯定する感覚を「自己肯定感」と呼びます。人生を前向きに幸福に生きるには、自己肯定感がカギを握るのは確かでしょう。
しかし、この自己肯定感が低いばかりに、本来ならもっと前向きに生きることができるはずなのに、つまらないところでつまづき、落ち込んでしまう人が少なくないと言われています。
「それは大変もったいないことです」と言うのは、脳内科医の加藤俊徳氏です。加藤氏自身、若い頃は自己肯定どころか、自分を否定する気持ちが強い人間だったとか。それが変わったのは、「脳のおかげ」と同氏は言います。
「自己肯定感が低い人は、自分はダメだ、能力が低い、といういわば“脳の回路”ができあがっています。それに気づき、意識的に考え方や行動を変えたことで、脳の回路が変わり、自分を肯定できるようになったのです」
自己肯定感が高まる考え方や習慣とは?加藤氏の新刊『脳の名医が教えるすごい自己肯定感』をもとに3回にわたり解説します(2回目。1回目はこちら)。
『脳の名医が教えるすごい自己肯定感』 クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします
1回目はこちら ※外部サイトに遷移します
自己否定することで、「自分は何をやってもダメだ」と考えるようになり、新しいことに挑戦する意欲が減ってしまいます。そうなると脳全体の活動量が低下し、それによって外部に対する関心や注意力が低下します。すると、ますます脳の活動が弱くなるのです。
自己否定することで自分を守る
脳がフリーズ状態=判断停止状態になると、「自己否定によって自分を防御する」という、困ったパターンにおちいることがあります。自分を否定して「どうせ何をしてもムダだ」と思い込む。すると、前向きになる努力や労力から逃れることができます。
自己否定をいわば言い訳にして、面倒なことから逃げるようになってしまうのです。
脳のカウンセリングで私が、「あなたはもっと能力があるはずです」とか、「日常の行動をこう変えてみたらどうですか?」とはげましたり、提案したりしたとします。ところが、どんなに言っても「いや、自分には無理です」「こんな自分が変われるはずがありません」とかたくなに決めつけ、変化をこばむ人がいます。自己否定している自分に固執してしまうのです。
変化することよりも、自己否定の中に沈んでいたほうが楽だと考えるようになってしまう。こうなると、自己肯定感を取り戻すことがますます困難になってしまうのです。
多くの人がおちいる「自己否定のパターン」を知っておくべきでしょう。
自己否定しやすい人にはいくつかの特徴があります。あらかじめ自己否定しやすい人の特徴を知っておくことで、その落とし穴を上手に避けて、自己否定のスパイラルにおちいらないようにすることができます。
以下、その特徴をいくつか紹介しましょう。
◎自分にうそをついてしまう人
あなたは自分の気持ちにうそをついたり、ごまかしたりすることはありませんか?
そう聞かれて、「私は一度も自分の気持ちにうそを言ったことはありません」と答える人は少ないのではないでしょうか。誰でも、状況に応じて、ときには自分の気持ちをごまかすことがあります。
問題は自分を守るため、あるいは見栄や体裁を気にして、自分の本心をごまかしてしまう場合です。
たとえば好きな相手がいるとして、本当は「付き合いたい」と思っているとしましょう。ところが相手は高嶺の花で、自分などは相手にされないのではないか、という不安があったとします。自分が否定されることを恐れて、「いや、自分は実はそれほど好きじゃないんだ」などと理由をつけて、自分の心をごまかしたとしましょう。
意識的には自分をごまかせても、無意識で自分は自分の本心をごまかしたことを知っています。そして、自分の心にうそをついた引け目を、無意識に抱えることになります。
このような状態を心理学的には「認知的不協和」と呼びます。これが重なると、自分で自分を信じることが難しくなります。自分が信頼できないということは、当然ですが、自己肯定などできないということになります。
あなたは善人?それとも悪人?
◎道徳心が低い人
あなたは自分を「善人」だと思いますか?それとも「悪人」のほうに近いと思いますか?簡単な質問のように見えて、実はよく考えるととても難しい問題です。
「自分は周囲とあまり衝突することもなく、相手を立てることも多いから善人かな」と考える。同時に、「いや、でも言葉とは裏腹に相手のことを否定していたり、うそを言ったりすることもあるから、悪人かもしれない」と考え直す……。自分だけでなく誰に対しても、善人とか悪人と決めつけることは難しいと思います。
ただし、人間は誰もが心の中で「善くありたい」「正しくありたい」と思っているのです。「正しく」「善く」あることで自分で自分を認め、他者からも認められるということを、本源的に知っているのです。
とはいえ、この気持ちには個人差があると思います。善くありたいと思う反面、人間にはさまざまな欲望があり、相手よりも上に立ちたいとか、裕福になりたいと思うものです。ときに、それによって相手を攻撃したり、おとしめたり、嫉妬などを覚えたりします。
その葛藤の中で、自分を律し、正しくて善い行動を行う人もいます。自分の中に「こうありたい」とか、「これだけはやってはいけない」という規範ができているからこそ、自分を律することができるのです。
自分の中の基準、道徳心といってよいでしょう。これが曖昧な人は、自分の欲望に流されて、自分の中の悪が勝ってしまうのです。すると、結果として自分自身を受け入れることが難しくなり、自己肯定感も育ちにくいということになります。
◎根拠のない優越感に取りつかれている人
自信満々で、何事にも積極的な人は、一見、自己肯定感の高い人に見えます。ただし、なかには「過剰な自意識」と、半ば妄想に近い万能感に基づいた「虚構の自己像」に酔っているだけの人がいます。あなたの周りにも、こんな「イタい」人がいるのではないでしょうか?
根拠のない自信や万能感は、幼児性からくるとされます。
赤ちゃんはおなかが減ったり、排泄をしたりすると、大声で泣くことで自分の状態や要求を伝えます。すると、すべての世話を親や周囲の人がしてくれます。ある意味、自分が世界の中心であり、つねに誰かから手が差し伸べられる存在です。そんな幼児の万能感や自己中心的な感覚は、通常は成人するほどに現実を知ることで、消えていきます。
ところが、まれにその感覚が成人しても残っている人がいるのです。当然のことですが、冷静な自己認知に基づいた自己肯定感を得ることは難しいでしょう。本来根拠のない自信ですから、それをごまかし補うため、つねに他人からの評価や賞賛を欲します。
しかしながら、他人に対する優越性を望めば望むほど、現実と自分の描いた自己像とのギャップが広がり、無意識の中では強い自己否定に取りつかれてしまうことになります。
自分と子どもを分離できない親たち
最後に、自己否定しやすい「親」の特徴を紹介しましょう。
アドラー心理学で知られるようになった「課題の分離」ということがあります。「自分の課題」と「他者の課題」を混同することで、余計な心的葛藤やストレスを抱えてしまうことです。それを避けるべく、「課題を分離しなさい」とアドラーは指摘します。
たとえば、自分の子どもにもっと勉強に力を入れて、いい学校に進学してほしいと多くの親は期待するでしょう。しかし、勉強するのは子どもであり、それによって進学、就職して人生を切り開くのは、子どもたちの問題です。
『脳の名医が教えるすごい自己肯定感』 クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします
子どもの課題に首を突っ込み、あたかも自分の課題として錯覚する親が多いのです。それによって、思い通りにいかないと嘆き、親としての自信を失ったり自己否定したりしてしまう。
そもそも子どもの課題なのですから、自分が何とかできる、何とかしようと思うことが錯覚であり、傲慢なことなのです。
コントロール不可能なことまで抱え込み、それがうまくいかないからと、自信を失い、自己肯定感を低めてしまうのは、実にナンセンスです。ところが、往々にして私たちはこの過ちを犯してしまうということを知っておく必要があるでしょう。
【あわせて読みたい】※外部サイトに遷移します
提供元:脳の活動低下を招く「自己否定」する人の特徴3つ|東洋経済オンライン