2022.06.29
進化した「iPhoneのマップ機能」を使いこなすコ|「坂道を除外できる」自転車での経路検索に対応
5月にアップデートされたiPhoneのマップ機能をご紹介します(筆者撮影)
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2021年9月に登場したiOS 15で、iPhoneのマップ機能が大幅に拡充された。ただ、マップは国や地域によって細かなニーズの違いもあり、一部の機能は日本でお預けになっていた。こうした機能が、徐々に日本でも利用できるようになり始めている。「AR(拡張現実)」を応用したナビゲーションはその1つだ。iPhoneのカメラで映し出した目の前の建物や道に、道案内を重ねて表示できるため、平面的な地図を見ながら目的地にたどり着くのが苦手な人には、うれしい機能と言える。
次々と対応するマップの新機能
自転車での経路検索に対応したのも、新たなトピックだ。コロナ禍で、特に都心部では、密になりがちな電車を避け、自転車で移動する人が増えているが、こうしたニーズにこたえた機能と言えるだろう。最近では、シェアサイクルも増えているため、活躍の機会は多いはずだ。ほかにも、車での移動中に渋滞や通行止めといった交通情報を簡単に確認できる、ドライブマップのような機能も増えている。
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登場当初は機能が少なく、地図の間違いも多かったiPhoneの純正マップだが、10年の月日が経ち、今では競合であるGoogleマップと比べても遜色ないクオリティになりつつある。iPhoneの各種機能と連携しているという点では、Googleマップより使いやすい場面すらあるほどだ。ここでは、そんなiPhoneの標準マップで“迷わない”ためのテクニックを紹介していこう。
iPhoneの高い処理能力や、センシング技術を生かし、AR対応のコンテンツやサービスに積極的なアップルだが、マップでも、その技術を取り入れている。AR Walkingと呼ばれる機能が、それだ。マップのナビゲーションは便利だが、地図はあくまでコンピューターが描いたもので、現実の光景と比べると、情報量はかなりそぎ落とされている。抽象化されているため、見やすくなるのはメリットだが、現実の光景と地図の情報がうまくマッチしないと、目的地とは別の方向に向かってしまうこともありえる。
進むべき道が一発でわかる「AR Walking」
特にビルが林立して、小さな路地が複雑に入り組みあう都市部の繁華街では、マップを見ながらでも、道に迷ってしまうことがあるはずだ。AR Walkingは、そんなときに活躍する機能と言える。iPhoneのカメラに映った現実のビルや道に対して、進むべき方向や道、建物などの名前が表示されるため、ナビゲーションに沿って歩いていることがわかりやすい。
呼び出し方は簡単。対応している場所で徒歩によるルート検索をすると、「AR」を意味する立方体が点線で描かれたアイコンが出現する。このボタンをタップしたあと、カメラをビルなどの建物に向けると、案内が表示される。実際に試してみたが、建物を見たあとに地図上のそれと頭の中で照合する必要がなく、道案内として直感的だと感じた。地図が苦手な人にとっても、いい機能と言えるだろう。
対象地域ではARを表す立方体のボタンが表示される。ここをタップすると、AR Walkingに画面が切り替わる(筆者撮影)
AR Walkingという名称のとおり、この機能は徒歩でのルート検索にのみ対応。自動車や電車移動中には利用できない。また、日本に対応したものの、全国区で利用できるわけではない点には注意が必要だ。現時点では東京、大阪、京都、名古屋、福岡、広島、横浜などが対応しているが、例えば東京でも、23区のすべてで利用できるわけではなく、繁華街など、主要なスポットが中心になる。
便利なAR Walkingだが、画面を見ながら歩くのは危ないため、経路の確認だけにとどめておいたほうがいい。画面を通して目の前が見えるとはいえ、視野が狭まってしまう点は“歩きスマホ”と同じだ。いったんiPhoneを下に向けると、AR Walkingは自動で終了するため、タップなどの操作をする必要はなく、すぐに元のナビゲーション画面に戻ることが可能だ。
同様の機能はGoogleマップにもあり、AR Walkingはアップル独自の機能というわけではない。一方で、メールに書かれていた住所などをタップすると、すぐに起動するのはiPhone純正のマップだ。ARを使ったナビゲーションを活用したい人が、わざわざアプリを起動し直さなくてよくなり、iPhone純正マップの利用価値が高まったと言えそうだ。
自転車のナビゲーションに対応
自転車での移動が多いユーザーにとっても、新しいiPhoneのマップは活躍する機会が増えるだろう。経路検索をする際の乗り物に、自転車が加わったからだ。車道を走るのが原則の自転車だが、高速道路などは自動車限定。自転車専用レーンなどもあり、必ずしも経路が車や歩行者と一緒になるとは限らない。専用のナビゲーションが加わったのはうれしい人も多いだろう。
利用方法は、徒歩や公共交通機関を使った経路検索と同じ。まず目的地を検索してから、「経路」をタップ。次に自転車のアイコンをタップすれば、自転車を使ったルートが表示される。経路検索では、複数のルートが表示されるため、通りたい道を選ぶといいだろう。その際に参考になる時間や距離といった情報も表示される。
自転車ならではなのが、坂道の情報だ。電動機付き自転車であればあまり気にならないかもしれないが、そうでないときには平坦な道のほうが体力を消耗せずに済む。iPhoneのマップの経路には、このような情報も表示される。ほぼ同じ時間で目的地に到着するルートが提示された場合、坂道が少ないほうを選べばいいというわけだ。「幹線道路と脇道」や「幹線道路と舗装された遊歩道」といった概要も表示される。
自転車に特化したルートを表示できるようになった。坂道の情報などが表示されるのがうれしい(筆者撮影)
また、そもそも坂道を通りたくない場合は、「利用しない」という項目で、「坂道」をオンにすればいい。こうすると、平坦な道のりだけが表示されるようになる。例えば、東京は一部の場所の起伏が激しく、急な坂が長く続く場所もある。距離の短さだけに基づいた経路をうのみにしてしまうと大変なことになるが、坂道を除外できるのは安心だ。
「利用しない」には、「交通量の多い道路」という項目もある。ここをオンにしておくと、車の多い道を外して経路が検索される。交通量が多いと、車道を走る際に危険を感じることも多い。安全に自転車で移動するためには、この設定を覚えておいたほうがいいだろう。シェアサイクルも広がり、自宅の周辺以外で自転車に乗る機会も増えてきた。あまり詳しくない場所で自転車に乗る際には、こうした機能が心強い。
iOS 15の機能として、もう1つ挙げておきたいのが、ドライブマップだ。これは、運転に最適な情報を表示するための機能。このモードにすると、マップ上に「国道〇〇号」や「県道〇〇号」といった道路名が表示され、道がわかりやすくなるほか、「神宮前」のように運転にあまり必要がない情報は色が薄くなる。マップそのものを目的に応じて変え、見やすくするというのがこの機能の特徴だ。
渋滞情報が色分けで表示
また、運転に特化した情報として、渋滞情報が色分けで表示される。多少遠回りになったとしても、赤やオレンジになった道を避ければ、目的地に早く到達できる。さらに、事故情報や通行止めといった情報まで表示される。運転しているときにナビとしてiPhoneを使っている際にはもちろん、助手席でドライブマップに切り替え、運転手をサポートするのにも役立つはずだ。
切り替え方法は簡単で、マップを表示したら画面右上に表示されている地図マークのアイコンをタップする。すると「詳細マップ」「ドライブ」「交通機関」「航空写真」という4つの地図が表示される。ここで「ドライブ」を選ぶと、マップがすぐにドライブマップに切り替わる。応用として、電車移動したいときには、「交通機関」を表示することも可能だ。路線が表示されると、駅がどこにあるのかがわかりやすくなる。
自動車での利用に特化した「ドライブ」に切り替えることが可能だ(筆者撮影)
ドライブマップの事故情報やハザードは、ユーザーの報告に基づいて表示されている。正しい報告がされていることは大前提だが、利用者が増えれば、そのぶんリアルタイム性や精度が増し、マップの価値がさらに高まるはずだ。こうした情報は、マップを起動したあと、検索窓のあるウィンドウを上にドラッグして、「問題を報告」をタップすると報告できる。Siriに「ここで事故があった」と話しかけるだけでもいい。
このように、マップはユーザーが迷わないよう、着実に進化している。当初は日本で利用できなかった機能も、次々と対応を始めている状況だ。また、秋に配信される予定のiOS 16では、経路に経由地を設定できたり、マップ上から直接Suicaにチャージができるようになったりと、さらに新機能が加わる。何となくGoogleマップを使い続けていた人も、一度、使ってみることをお勧めしたい。
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提供元:進化した「iPhoneのマップ機能」を使いこなすコ|東洋経済オンライン