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2022.06.28

「40代の8割が歯周病」から逃れたい人の金科玉条|口内環境の悪化は、3大死因や認知症に関与


3カ月に1度程度は歯科に通うと万病の予防になる(写真:ペイレスイメージズ1(モデル)/PIXTA)

3カ月に1度程度は歯科に通うと万病の予防になる(写真:ペイレスイメージズ1(モデル)/PIXTA)

今年6月に政府が閣議決定した「骨太の方針」に盛り込まれたことで注目されている「国民皆歯科健診」。現時点では、「健康診断などの際に唾液を採取し、検査する」といった方法が検討されているとの話もあるが、開始時期なども含めて詳細はまだ明らかにされていない。しかし、なぜ今「歯の健康」にスポットが当たるのか。「医科」と「歯科」が連携して診療にあたる「医科歯科連携」を進め、『認知症専門医が教える! 脳の老化を止めたければ歯を守りなさい!』などの著書を手掛ける認知症専門医の長谷川嘉哉氏に聞いた。

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口内環境の悪化は3大死因すべてに直結する

「国民皆歯科健診」によって、国民全員が毎年歯科健診を受けるという方針が決まりつつあります。長年、大人の定期的な歯と口腔内検査の必要性を説いていた私の率直な感想としては「ようやく国も乗り出したか」というところ。ですが、これで安心していてはいけません。あえて言いましょう、「そんな『歯科健診のお知らせ』など破り捨ててしまえ!」と。

そもそも、なぜ「国民皆歯科健診」が検討されているかというと、歯の健康を維持することで全身疾患の誘発を予防し、国の医療費全体を抑制する狙いがあるためです。

つまり、“歯や口腔の健康状態は、体の健康状態に直結する”ということを前提にした話なのですが、そのあたりの理解があまり浸透していないようにも思われますので、ここで簡単に説明しましょう。

具体的には、口内環境の悪化は「心筋梗塞」「脳卒中」「糖尿病」「誤嚥性肺炎」といった病気を誘発することが明らかになっています。最近は「ガン」にいたるまで歯周病が影響しているといわれていますので、日本人の3大死因すべてにかかわるということになります。

さらに、認知症のリスクをも高めることもわかっています。その大きな原因となるのが、歯周病菌。口腔内細菌の一種である歯周病菌の影響でつくられる炎症物質「サイトカイン」が血管を通じて全身に運ばれることにより、動脈硬化が進行したり、インスリンが効きにくくなったり、脳に「アミロイドβ」というゴミが溜まって脳細胞が死滅するなど、実にさまざまな全身疾患を引き起こす原因になるのです。

歯周病というと高齢者の病気と思われがちですが、そうではありません。歯周病の発症率は35歳前後から上昇し、40代になる頃には程度の差こそあれ、なんと8割もの人が歯周病を発症します。

ごく軽い炎症から始まるので痛みもなく、ほとんど自覚できません。そのまま静かに進行し、違和感に気づいて歯科医院に行くころには、すでに歯茎も歯根もボロボロになっていることがよくあります。そうなると、歯医者さんも抜歯するしかありません。

歯のケアで脳が若返る

この歯と全身疾患との密接な関係に気づいてから、私の認知症外来の敷地内に歯科診療所を建て、常時約400名の患者さんに利用してもらっています。みなさん、基本的にその歯科で受診をしてから私のクリニックを受診されるのです。

「どうして認知症の病院で、歯のチェックを!?」と最初は不思議がっていたご家族も、患者さんの認知症状の改善を目の当たりにして驚き、納得されます。

例えば、ご家族が看取りを意識されていた92歳の男性患者Aさんは、なんと、たった1回の歯のケアで食欲が改善し、以前の食事量に戻りました。定期的にケアを続けた今ではしっかり食欲もあり、看取りを考えていたなんて想像もできないくらいに回復しています。

79歳の女性患者Bさんの場合は、もの忘れが劇的に改善しました。以前は、家族の名前すらすぐに出てこないような状態でした。ほかにも、認知症状を改善させた患者さんは数えきれません。歯のケアによって認知症状が改善し、脳が若返るのです。

しかし、患者さんたちと同じくらい、いえ、それ以上に変わるのが介護者です。歯科受診に付き添っていくうちに歯科の重要性に気づき、ご自分も一緒に受診されるようになる方が非常に多いのです。それくらい、口腔内のケアの威力はすごいということです。

もちろん、歯みがきをはじめとする自身での口腔ケアは大切です。しかし、どんなに丁寧にみがいても、歯並びやみがき方の癖の関係で、みがき残す箇所が出てくることもあります。

プラークは食後4〜8時間程度で発生し、そのまま放置すると、24時間程度で硬い歯石になると言われています。一度歯についてしまった歯石は歯みがきで取ることが難しく、歯医者さんや歯科衛生士さんが用いる器具でしか取ることができません。

3カ月に1度程度は歯科でのメンテナンスを

ですから、定期的に歯科医に通い、日々自分で行っている歯みがきのチェックとケアは必須です。目安としては、歯周病菌が増え始める35歳くらいからは、3カ月に1回程度のケアを行うべきです。

冒頭の話に戻りますが、私が強調したいのは、この部分です。健康診断の一部に歯科健診が盛り込まれるにしても、「歯科健診に行きましょう」というハガキが届いて歯科に足を運ぶにしても、結局、口内をチェックして虫歯や歯周病などの病気が見つかれば治療し、特に異常がなければそれで終わり、となってしまうのは目に見えています。

ですが、大事なのは治療だけではなく、定期的なメンテナンスによる虫歯や歯周病の予防。つまり、1年に1回の健診の機会を待って口腔内を検査するようでは遅いのです。

もちろん、クリーニングをはじめとするメンテナンスは自費診療になります(虫歯や歯周病治療の一環であれば保険治療となりますが)。なるべく安いところを探して通いたいと思うかもしれませんが、短い時間で大雑把にメンテナンスするのでは意味がありません。

日本で、メンテナンス重視の歯科は、まだ歯科全体の2〜3割ほど。その2~3割の中にも、高度なメンテナンスをしてくれるところと、そうでないところがあります。どうせならケチらず、少々高くても高度なメンテナンスをしてくれる歯科を探すべきです。そのほうが全身疾患を防ぐことができ、結果的に生涯医療費を大幅に抑えることができるからです。

以下に、定期受診に通う際、どんな歯科なら信頼できるか、そのポイントを記します。ぜひ参考にしてください。

(1) ホームページが充実している

今の時代、患者さんへの丁寧な説明は必須です。そのためには、ホームページで、自身が経営する歯科クリニックの理念・取り組みを情報発信することは、患者さんへの最低限の義務だと思います。ホームページがない、あっても丁寧な情報発信をしていない歯科クリニックは論外です。

(2) 歯科衛生士さんがいる

歯科衛生士さんは、メンテナンスに力を入れている歯科クリニックに集まります。平成28年の調査によると、約10万人程度の歯科衛生士さんがクリニックで働いていると言われています。

クリニックの数は全国で7万軒程度。つまり、クリニック1軒当たりの歯科衛生士さんの数は平均1.5人程度です。しかし、これはあくまで平均値。腕のよい歯科衛生士さんほど、自分を積極的に登用してくれてメンテナンスに力を入れている歯科クリニックに集まります。

ちなみに、歯科衛生士さんがいない歯科クリニックは問題外。「歯が痛くなったら治療する」という昔のスタイルを通しているレベルの歯科クリニックには、そもそも歯科衛生士さんは不要ですからいないのです。

メンテナンスには経営的基盤が不可欠

(3)歯科用チェアユニットの数が多い

できれば歯科クリニックの歯科用チェアユニット数は、5台以上あると安心です。実は歯科クリニックの歯科用チェアユニット数の平均は3台。しかし、3台ではどうしても治療が中心になってしまい、メンテナンスが十分に行えません。

近年、メンテナンスに力を入れる優秀な全国の歯科医院を中心に、歯科衛生士さんが活躍するようになり、歯科用チェアユニットを10台以上備えるような歯科クリニックも登場してきています。

(4)医療法人である

メンテナンスを積極的に行うには、それなりの設備・人の雇用が必要になります。そのためには、歯科クリニックの経営的基盤が不可欠です。一般的には、多くの患者さんに支持されて年商が1億円を超えると、個人から医療法人になることが多いようです。

2016年10月の資料によると、歯科クリニック6万8940軒のうち、医療法人は1万3393軒。全体の約19.4%です。私は、認知症専門医でありながら、歯医者さんや歯科衛生士さんと協力して包括的な治療を行う「医科歯科連携」を実践していますが、彼らと仕事をするようになって、積極的にメンテナンスをしてくれる歯科医院は全体の2〜3割だと感じるようになりました。歯科の医療法人の19.4%という割合は、不思議とこの数字に近いのです。医療法人であるかどうかは、ホームページや看板に記載されています。

銀歯にはデメリットも

(5)保険外診療のメリットを説明してくれる

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歯科治療において、保険診療で行われるのは必要最低限の医療です。ゆえに、保険診療で使われる材料には、健康上のデメリットがある場合もあります。

例えば、「歯科鋳造用12%金銀パラジウム合金」。いわゆる「銀歯」ですが、これにはアレルギーの原因となる可能性がある「パラジウム」が含まれています。このパラジウムは、ドイツでは安全性に問題があるとして使用禁止になりました。

また、銀歯の場合、詰め物や被せ物の下が虫歯になる「2次虫歯」のデメリットもあります。治療の際に、保険診療のデメリットを説明してくれるかどうかも、信頼できる歯科医選びのポイントです。

なるべく通いやすいところで、この5つを満たしている歯科医を見つけるのがよいでしょう。一生お付き合いをするつもりで、定期受診のためのクリニックを選んでください。

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提供元:「40代の8割が歯周病」から逃れたい人の金科玉条|東洋経済オンライン

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