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2022.04.18

「怒りが爆発しそうな人」が真っ先にやるべき行動|元自衛隊「メンタル教官」が解説


「怒り」の感情をコントロールしたくても、うまくいかずに悩む人。いったいどうしたらいいでしょうか?(写真:miya227/PIXTA)

「怒り」の感情をコントロールしたくても、うまくいかずに悩む人。いったいどうしたらいいでしょうか?(写真:miya227/PIXTA)

「怒り」の感情をコントロールしたくても、うまくいかずに悩む人は多いもの。「コロナ禍も2年が経ち、イライラ、怒りを潜在的にためた人が増えています。今こそ“怒り”の感情に根本的に向き合うべき時です」と話すのは、『自衛隊メンタル教官が教える イライラ・怒りをとる技術』を刊行した下園壮太さん。元自衛隊メンタル教官、心理カウンセラーとして、心の問題に長年取り組んできた経験から、「怒り」を感じた時にどうすればいいか、実践的な考え方と対処を教わった。

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アンガーマネジメントの特徴

職場や家庭など、日常生活の中でイライラや怒りを感じてしまうのは避けがたいこと。ならば自分自身の「怒り」の感情を上手にコントロールして、理性的でおだやかな人でありたい。そんな思いから、「アンガーマネジメント」の講座に通ったり書籍で学ぶ人も多いようです。

アンガーマネジメントは「その怒りは損か、得か」「あなたが怒っているのは、あなたの価値観が原因」といった論理的なアプローチなので理解しやすく、体系化されていて「学びやすそう」「できそう」な感じが得られやすい点が魅力です。

でも一方で、私のカウンセリングにいらっしゃるクライアントさんなどに話を聞くと、せっかく学んでもうまくいかないケースが少なくありません。

一生懸命学んだのに「実際の場面でうまくやれなかった」「他の人はできているのに」「何日かはできていたのに、結局戻ってしまった」などと悩む人がいます。過去には「前よりも怒りを感じやすくなってしまった」と、状況がかえって悪化してしまった方もいらっしゃいました。

アンガーマネジメントに限らず、既存のメソッドやツールは、長所だけでなく、その限界を正しく理解したうえで使いこなさなくてはなりません。アンガーマネジメントがうまくいかない人がいるのはなぜなのか、ひもといていきましょう。

感情(怒り)には3段階がある

アンガーマネジメントは、基本的に、理性によって感情をコントロールしようとするアプローチです。

ここで、私たちの「理性」と「感情」との関係を見てみましょう。

「感情」には次のように3段階があり、「理性」と「感情」の関係は比例していると私は考えています。

3段階<3倍モード> 感情80%・理性20%
2段階<2倍モード> 感情50%・理性50%
1段階<1倍モード> 感情20%・理性80%

(図:『自衛隊メンタル教官が教える イライラ・怒りをとる技術』より)

(図:『自衛隊メンタル教官が教える イライラ・怒りをとる技術』より)

1段階<1倍モード>は通常の平穏な状態です。理性でものごとを判断することができます。しかし、疲れがたまったりしてイライラしてくると、2段階<2倍モード>になります、つまり、普段の状況と違って、感情の力が強くなってきます。

3段階<3倍モード>は、理性よりも圧倒的に感情の力が強くなっている状態です。怒りの感情でいえば、怒りに乗っ取られている状態です。

激怒して感情が3段階にあるとき、「私は怒るべきでない。ここで相手を怒鳴ったらこれだけのソンをしてしまう」などと自分に言い聞かせても、強い怒りを抑えるのには効きませんよね。

一方、感情の1段階にある時は、同じ言い聞かせでも、なんとか怒りを我慢することができます。

この意味で、理性によって感情をコントロールしようとするアンガーマネジメントは、基本的には「1段階」もしくは「2段階」の下くらいまでの状態に自分がいるならば、怒りに有効なツールだといえます。

ところが、アンガーマネジメントを受ける人の多くは、実際には、怒りのトラブルを強く自覚している人たちです。すでに感情の2段階・3段階にいて、なんらかの対策を切迫して求めていることが多い。こういう人たちにとって、理性で感情をコントールしようとするのは「わかるけれど、そうはできない」方法になるケースが多いのです。

「わかるけれど、そうはできない」は、人の自信を低下させます。「やっぱり自分はダメだ」と自責の念を刺激するので、余計にイライラの感情を敏感にしてしまいます。

「考え方(価値観)を変える」は挫折しやすい

アンガーマネジメントは「自分の受け取り方を変えましょう」ということが基本です。

どうして自分はそれが許せないのか、怒ってしまうのか、自分の考え方や価値観を変えたり、ゆるめたりすることを目指していこうとするものです。

感情を発動する根本の考え方を変えることは、問題発生の基を正すこと。いわば、怒りという敵の「本丸」を攻めるやり方ですから、根源的で一番良い方法に見えますね。

ただし問題は、現実的にそれができるかどうかです。

染み付いた価値観とは、そう簡単にゆるめられるものではありません。例えば「仕事とは一生懸命やるべき」「遅刻は絶対にしてはいけない」「他人には優しくあるべきだ」「人に迷惑をかけてはいけない」など、私たちにはいろいろな考え方(価値観)があります。

それらは、親や祖父母からの教え、自分なりの失敗や成功体験などをベースに、意識的にも無意識的にも身につけてきたもの。いわば「その人そのもの」であり、頭で考えて、そう簡単に変わるものではないのです。

ましてや感情の2段階より上になると、根本的な自分の感じ方や考え方を頭で考えて変えることは、とても難しくなります。

勉強やスポーツを頑張りたいと努力しようとしても、病気にかかってしまった時は無理があって、なかなかうまくいきませんよね。これと同じで、イライラや怒りのトラブルを自覚している2段階、3段階にある人が、価値観の修正を試みようとするのは、論理的には正しくても、現実的には無理があります。本人の負担も大きく、挫折しやすいのです。

怒りの「6秒我慢」はうまく使えないこともある

アンガーマネジメントにはいろいろな気づきを与えてくれる内容がありますが、中でも「6秒ルール」という方法はよく知られています。

「6秒ルール」とは、強い怒りも6秒我慢すれば、そのピークを過ぎるので、なんとかその秒数を耐えましょう、というスキルです。

6秒耐えて気持ちの暴発をやり過ごせれば、相手を罵倒してしまったり、モノに衝動的に当たってしまったりする言動を防止して、トラブルの発生や状況がエスカレートするのを防いでくれます。その点では、とても意味がある方法です。しかも6秒だったら、「なんとかやれそう」「使える」感じもしますね。

しかし実際には、せっかく6秒を耐えても、目の前にまだ怒りの原因となった相手がいて、不服そうな顔で再び文句をつけてきたとしたら、怒りはすぐ爆発してしまいます。

逆に6秒我慢したぶん、怒りに勢いがついてしまうことさえあります。このパターンを経験した人にとっては、6秒ルールは「使えない」という実感になってしまうことでしょう。

6秒ルールはうまく使えることもありますが、使えない場合も多いのです。

それでは、実際に強い怒りを感じてキレそうな時には、どのように対処するのがいいのでしょうか。

「時間」よりも「距離」のほうが大事

重要なのは、6秒という時間ではなく、危険(相手)との「距離」です。

私はよく「もしこれが原始人だったら」という話をします。原始人モードで考えてみると、「怒り」の感情とは、自分や自分の仲間に危険がある時に、ただちに「敵に威嚇、反撃する」ための本能です。

怒りのピークが収まるのは、自分たちを脅かす危険が低下した場合です。危険(相手)が目の前にいるという「一触即発」の間合いでは、襲われるかもしれないという警戒を解くことができません。

けれども、もし相手が数メートル離れていれば、鉄拳は飛んで来ないでしょう。さらに10メートル離れれば相手と戦うだけでなく、逃げるという選択肢も生まれてきます。

「怒り」という感情をおさまりやすくするには、危険(相手)との「距離を取る」、つまり「その場を離れる」のが最も効果的なのです。

それでは、私たち現代人が強い怒りを感じた場面で「その場を離れる」には、具体的にはどうしたらいいでしょうか。

行動のアイデアとしては、例えば化粧室に行く、喫煙所に行く、コンビニに行く、電話だと言って席を外す……などが考えられます。

相手が視界から消え、できれば声も聞こえない場所に移動すれば、自然と怒りはピークを過ぎて、感情は2段階に落ちてくれるのです。

とはいえ、すぐに「その場を離れる」ことができないシチュエーションも多いでしょうから、その場合は工夫が必要です。

イメージの中で相手と距離を取る、イヤホンやスマホの動画をうまく使う、他の人と話す、電話をする、深呼吸をする、などでもいいでしょう。この意味で、代替案の一つとして「6秒を集中して数える」というのも有効です。

強い怒りを感じたら、とにもかくにも「その場を離れる」。その場を離れられない場合は「イメージで距離を取る」。

怒りという敵に対して、柔道でいうところの「受け身」の態勢を、まずとる感じです。

大切なのは「受け身」で怒りのピークをやり過ごして、現実的なトラブルやエスカレーションの発生をひとまず防ぐことです。夫婦喧嘩が始まったら、反論したい気持ちをぐっとこらえて違う部屋に移動することです。それが大きな衝突へとエスカレーションすることを防いでくれます。

イライラしやすいなと思ったら、すぐにするべきこと

また、私がイライラ・怒りの対処法として重視しているのが、「疲労のケア」です。普段、温厚な人でも、疲れがたまってくるとイライラします。逆にいえば、怒りっぽいと思われている人も、元気で余裕があるときは穏やかなこともあり、いつも怒っているわけではありません。

先にも述べたように「怒りは自分を守ろうとする強い感情」です。だから、疲れて弱っているときは、弱っている自分を守ろうとして、余計に周囲を警戒して、ピリピリとするのです。普段だったら、カチンと来ない一言にも反応してしまいます。

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『自衛隊メンタル教官が教える イライラ・怒りをとる技術』(朝日新聞出版) クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします

つまり、イライラは「性格」の問題ではなく「疲労」の問題なのです。イライラや疲れていることの、最もわかりやすい特徴です。だから、最近、イライラしているなと思ったら、とにかく疲労のケアに努めます。具体的には、いつもより1時間長く寝るようにする、週末は予定を入れずにゴロゴロとして体を休める、消化に良い物を食べて内臓も休ませる、といったことです。

ランニングするとすっきりする、ゴルフが趣味、という人もいるとは思いますが、疲れているときに「動的」なストレス解消法はお勧めしません。スポーツで余計に疲れることも、よくあるからです。

カチンと来たらその場を離れる、最近、イライラしているなと思ったら、とにかく休む。怒りの感情は強力で、本当におさまるには実はかなり時間がかかるのですが、まずはこの二つを実践するだけで、穏やかな生活にかなり近づけると思います。ぜひ、実践してみてください。

(取材/構成 向山奈央子)

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提供元:「怒りが爆発しそうな人」が真っ先にやるべき行動|東洋経済オンライン

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