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2022.03.17

「他人の幸せを願う人」ほど幸せになれる衝撃事実|一方、嫉妬しやすい人ほど健康を害することも


幸せは他人がもたらしてくれるもの(写真:outa/PIXTA)

幸せは他人がもたらしてくれるもの(写真:outa/PIXTA)

嫉妬や恨みから卒業して、幸せを手に入れるために人は何をすればいいのでしょう?明治大学法学部教授の堀田秀吾氏と、医師の木島豪氏の共著本『科学的に自分を思い通りに動かす セルフコントロール大全』より一部抜粋・再構成してお届けします。

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「自分は嫉妬深い」という認識がある人は、少なくないかもしれません。嫉妬深いという自己認識をお持ちの人は、「嫉妬はよくないこと」という意識はありつつ、どうしても嫉妬してしまうのでしょう。

人は、他者と自分を比較せずにはいられない生き物です。ただし、比較して相手が自分よりも上の立場にいると認識することと、その相手をねたむことはイコールではありません。できることならセルフコントロールをして、嫉妬心を抱かずに過ごしたい――そう願う方は多いと思います。

そもそもの話ですが、嫉妬は人間になくてはならない感情です。狩りや農耕だけで食事・生活を賄っていた時代から、人間の内面は変わっていないとする進化心理学的に説明するなら、嫉妬とは自分の子孫繁栄の障害になるものを防ごうとする行動力の源になる感情です。自分より魅力にあふれた存在を嫌悪して攻撃することで、自分の子孫繁栄の可能性を高めるわけです。

言わば、怒りと同じような自己防衛本能の現れであり、人間にとって必要不可欠な感情ですから、嫉妬を抱くことは人間として当たり前の感情とも言えます。だからこそ、嫉妬をバネに行動するときは、「あのライバルに負けないようにがんばろう」とポジティブなアクションにつなげなければいけません。

「良い嫉妬」と「悪い嫉妬」がある

「どうせ私なんて……」と落ち込んだり、自分を傷つけたり、あるいはライバルを排除するための暴力に発展してしまうのは避けないといけない。嫉妬も怒りのように、メリットとデメリットがあるというわけです。

心理学では、ポジティブなアクションにつながるねたみを「良性ねたみ」、そうではないねたみを「悪性ねたみ」と呼びます。ねたみにメリットがあるといっても、嫉妬という言葉にあまりポジティブなイメージがないように、多くの場合、人間の嫉妬心は「悪性ねたみ」のほうに向かい、心身に悪影響を与えてしまう可能性が高くなります。

実際に、イェーテボリ大学のヨハンソンらによる、スウェーデン在住の女性800名(研究開始の1968年時点で平均年齢46歳)を38年間追跡調査するという貴重な研究があります。

この研究によると、怒りや不安や嫉妬などを抱きやすい傾向を持つ女性は、アルツハイマー型認知症の発症リスクが高まるという結果が報告されています。ヨハンソンらは、男性も同じ傾向にあるとみており、嫉妬心が長期的な健康に大きく影響する可能性を示唆しています。

また、東フィンランド大学のネウヴォネンらによる研究でも、他者に不信感を抱く傾向がある人は、認知症のリスクが約3倍になるとされています。これらの研究から考えると、やはり健康面にリスクのある嫉妬はしないに限るといえるでしょう。

では、どのようにして嫉妬と上手に付き合えば良いのでしょうか?

その一つとして、セルフ・アファメーションという方法があります。この言葉は、「自己肯定」という意味の英語で、効果も実証されている心の整え方です。単に自己を肯定するというわけではなく、一定の型に沿って自分のことを語っていくというものです。さまざまな効果が実証されていますが、嫉妬心を軽減する効果も報告されています。

たとえば、スタンフォード大学のコーヘンとカリフォルニア大学サンタバーバラ校のシャーマンの研究によれば、自身にとって重要なことについて語ることが挙げられています。

「ダンスが私の大事なこと。ダンスは私の情熱であり、人生だ。ダンススタジオは私の第二の我が家だし、ダンスチームは私の第二の家族だ。でも、家族はもっと大事だ。家族なしでは生きられない」といった具合に、言葉にしてみる、あるいは紙に書くなどして、自身にとって重要なことを思い返すのです。

方法が研究者によって多少異なるものの、セルフ・アファメーションをする際に概ね一致しているのは、病気などのネガティブなことは書かず、なりたい自分をイメージして、ポジティブな事象のみを書くという点です。そして、できるだけ現在進行形や現在の状態で表すことがポイントです。自分にとって重要かつポジティブなことを確認するだけで、心の負担は軽減されるというのです。

空を見上げてみては

また、東京大学の田戸岡らによる、「自己他者概念と上下の運動感覚が、ねたみと羨望の生起に及ぼす影響」という研究も興味深いでしょう。

研究内容を要約すると、何かを「上げる」や「下げる」運動をする感覚と、人を「上に見る」、「下に見る」感情に関連性があるかについて実験を行っているのですが、意外にも関連性があるという結果がでています。

実験では、「自分」や「他人」と書かれたカードの位置を上げる動作と下げる動作を比較します。すると、「他人」を上げる動作の場合は良性ねたみといえる「羨望」の感情が、「自分」を下げる動作の場合は悪性ねたみと言える「嫉妬」の感情が、より目立つ結果になったといいます。

誰かをねたみそうになったら、その人の名前を紙に書いて持ち上げてみると、羨望という「良性ねたみ」に変わる可能性があるというわけです。また、視線を上げながら考えるとポジティブな出来事、視線を下げながら考えるとネガティブな出来事が思い起こされやすいとする研究もあります。嫉妬という感情がわきでそうなときは、とりあえず空を見上げてみてもいいかもしれません。

最後に、「他人の幸せを願うことが自分の幸せにつながる」ことを覚えておいてください。ひがみや恨みを募らせるよりも、自分のことを好意的に思っている人に対して幸せを願う気持ちを持つことの方が大事です。

アイオワ州立大学のジェンタイルらの研究に、「他人の幸せを願うと自分も幸せになれる」というものがあります。496人の大学生を対象に行い、彼らに12分間にわたって大学構内を歩いてもらい、その際にすれ違う人に対して、心の中で“あること”を考えてくださいと伝えました。そのあることの内容を、次の4つのグループに分けました。

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【グループ1】その人が幸せになってほしいと優しい気持ちを抱く、【グループ2】その人と自分にはどんな共通点がありそうか考えてみる、【グループ3】その人より自分のほうが優れていそうな点はどこかを考える、【グループ4】その人の服装やもちものについて考察してみる。

このように4つの考え方をもつグループにわけて実験を行い、そのうえで散歩の前後に不安、幸福度、ストレス、共感性、他者とのつながりなどの要素をスコア化しました。

最も幸福度が高かったのは「グループ1」

その結果、【グループ1】の他人の幸福を願うグループがもっとも幸福度が高く、不安が減少し、共感性や他者とのつながりにおいてもプラスの作用が働いたことがわかったそうです。さらに、この実験の興味深いところは、個人差が実験結果にほとんど影響をもたらさなかったという点です。つまり、自己愛が強いナルシストな人でも、協調性のある人でも、他人の幸せを願った人たちは等しく効果があったというわけです。

人間である以上、嫉妬を抱くことから逃れることはできません。大事なことは、どのように嫉妬と向き合い、コントロールするかです。嫉妬を抱く自分に嫌悪感を覚えるのではなく、心の負担を軽くしたり、友人や家族の幸せを願ってみたりすることで、自分を肯定してあげてください。

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提供元:「他人の幸せを願う人」ほど幸せになれる衝撃事実|東洋経済オンライン

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