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2022.03.15

「自分は幸運」と思う人になぜか好機が巡る理由|思考の悪循環を断ち、「点をつなぐ力」を高める


自分を幸運と見る人とそうでない人の違いとは? (写真:mvpda/PIXTA)

自分を幸運と見る人とそうでない人の違いとは? (写真:mvpda/PIXTA)

人生において重要な転機となるようなチャンスが、ほかの人よりも頻繁に巡ってくるように見える人と、そうでない人はどこが違うのか。

その秘密を解き明かし、幸運なサプライズの頻度を増やし、それをいい結果につなげるフレームワークをまとめた本『セレンディピティ: 点をつなぐ力』がついに刊行された。

経済学分野で世界トップクラスのロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)で博士号を取得し、起業家としても活躍する著者が書いた同書から、自分を幸運と見る人とそうでない人の違いについて、抜粋・編集してお届けする。

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困難な状況に直面したときの受け止め方

「悪いことが起きたときには、長い目で見よ」と言ったのはリチャード・ワイズマンだ。

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人生においてとりわけ困難な状況には、たいてい大きな価値がある。私は今、そうした状況に直面するたびにこう自問する。

「これは10年後にも本当に重要なことと思えるだろうか。そうではないなら、なぜ心配するのか。逆にそうならば、貴重な学習の機会とするために今できることは何だろう」と。

くじけそうになると、スクール・オブ・ザ・デジタルエイジ(SODA)創設者のグレース・グールドから教えてもらった言葉を思い出す。グレースはジョン・レノンの有名な言葉をこんなふうに言い換えていた。

「物事はたいてい最後にはうまくいく。うまくいっていないなら、まだ最後ではないということだ」

一方、ワイズマンが勧めるのは反事実的思考、つまりほかにはどのような可能性があったか考えてみることだ。

私はティーンエイジャーのときに起こした例の交通事故で、身体に障害を負っていたか、命を落としていたかもしれなかった。また共同創設者となった組織がもし追加出資を受け入れていなかったら、財政的に行き詰まっていたかもしれない。これが反事実的思考だ。

ワイズマンの研究チームは興味深い実験をしている。自らを「幸運」あるいは「不運」と考える人々に、次のようなシナリオを提示した。

「あなたが銀行に行ったら、武装した強盗が入ってきて肩を撃たれた。軽い傷を負ったが、逃げることができた」

あなたなら、この状況をどう捉えるだろうか。

自分を不運だと思っている人は、この状況を「自分の身に起こりがちなこと」と捉えるらしい。人生において数ある不運な出来事が、もう1つ増えただけだ、と。

一方、自分を幸運だと思っている人はこう捉えるらしい。「撃たれて死んでいたかもしれない」「銃弾が頭に当たっていたかもしれない」。

つまり、もっと悪い状況になっていたかもしれないという捉え方をする。

これはいったい、どういうことか。

幸運な人は、もっと悪い状況になっていたかもしれないという方向で反事実的思考をする。一方、不運な人は「こうだったらよかったのに」、あるいは「私の人生はこんなもの」という捉え方をする。

思考の悪循環と好循環の違いを生むもの

要は、幸運な人は自らを不運な人と比べる(たとえば銀行強盗に殺されかねなかった人など)のに対し、不運な人は自分より幸運な人と比べる傾向がある(まったくケガをしなかった人など)のだ。

これが思考の悪循環、あるいは好循環につながる。不運な人は自分を幸運な人と比べることで、わざわざみじめな気分になる。

一方、幸運な人は不運な人と自分を比べ、自らの不運をそれほどひどいものではないと考える。どちらのほうが、人生のなかでセレンディピティを見つけやすいだろうか。

ワイズマンの実験は、不運な人は運をよくしようと効果のない方法に頼る傾向があることも示している。たとえば迷信に頼ったり、占い師に相談にいくといったことだ。

一方、幸運な人は状況を把握し、そこから何かを学ぶために問題の根本原因を突き止めようとする。これは言葉遣いにも表れる。

「こんな目に遭った」という人は、物事を受け身的に捉えている。運不運を甘んじて受け入れるだけになる。だが自分がコントロールできる要素に意識を集中すれば、運に主体的に関与できるようになる。

先進国の豊かな家庭に生まれた子どもと途上国の貧しい家庭に生まれた子では、セレンディピティの初期値に歴然とした差があるのは否定できない。

初期値に大きな差があるのも、また集団の人間関係など構造的制約が大きな壁になることも事実だが(時にはそれがセレンディピティの芽を完全に封じてしまうこともある)、南アフリカの元ドラッグ密売人から世界トップクラスのリーダーまで、幅広い人々が自らセレンディピティを生み出していることが私たちの研究で明らかになっている。

そうした人たちの誰もが、生まれつきほかの人より賢いわけではない。違いは人生への向き合い方にある。人生への向き合い方の違いが、優れた判断を下し、ふつうの人より多くのセレンディピティを経験することを可能にしているのだ。

自らの置かれた状況をどんな枠組みで見るか、とりわけ一見不運な出来事をどう捉えるかはきわめて重要だ。感情的そして認知的にそのためのいい土台をつくる方法はたくさんある。

たとえば瞑想すること、抽象的な試練や不安を具体的な行動計画に転換すること、目の前の状況の危険な要素を抑えつつ、好ましい要素に注目することなどだ。

自らの世界に対する枠組みと、自己実現的予言との深い関わりを示す興味深い実験がある。物事がうまくいくと思っていればうまくいくことが多く、その逆もまたしかりだ。考えていることが「実現」し、語ることが「現実」になる。

自分ではない誰かが、点をつないでくれる

あらゆる状況、とりわけあらゆる会話を、セレンディピティを経験する機会として捉えるには、意識して取り組む必要がある。

たとえば誰かの話を聞くときには、その内容がわずかでも自分の、あるいはほかの誰かの関心と重なっていないか考える。ほかの人のアイデアと「競い合う」のではなく、それを発展させようとすれば、自分や周囲のために点と点をつなぐ能力が鍛えられる。

シャー・ワズムンド・ムベの例を見てみよう。事業家として成功し、ベストセラーも出版している。貧しい家庭で育ち、LSE在学中はマクドナルドで生活費を稼いだ。そんななか雑誌のコンテストで優勝し、イギリスのボクシング世界チャンピオン、クリス・ユーバンクにインタビューする機会を得た。

インタビューで2人はすっかり意気投合し、驚いたことにユーバンクはワズムンドに自分のPR担当の仕事をオファーした。

ワズムンドはそれを受け、ボクシングのPRの経験などゼロであったにもかかわらず、すばらしい成功を収めた。その後は独立してロンドンでPR会社を立ち上げ、ダイソンの掃除機の発売などさまざまなプロジェクトを手がけた。

私は研究を通じて、多くの成功者がこのようなセレンディピティを経験していることを学んできた。何らかの目的を持ってある場所へ出かけていくが(ムベの場合は記事執筆のためにボクサーをインタビューすること)、予想外の展開にもオープンだ。

セレンディピティが起こるのは、たいていこのような状況だ。そしてたいてい私たちのために点と点とをつないでくれるのは、ほかの誰かである。

ただ自分が何を求めているのか何となくでもわかっているほうが、点はつながりやすい。私たちの研究では、成功している個人や組織には、軸となるような壮大な野心、強い意欲、信念、あるいは「指針となる考え方」がある。「北極星」と呼んでもいいだろう。

置かれた状況のなかで意識的あるいは無意識的に指針にするような点、原則、あるいは理念である。それがなければ漂流するか、停滞するしかない。

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【あわせて読みたい】※外部サイトに遷移します

セレンディピティに気づく人と気づかない人の差

「日本人のリモートワーク」最大の問題はここだ

沢木耕太郎が説く「偶然の出会いに身を委ねよ」

提供元:「自分は幸運」と思う人になぜか好機が巡る理由|東洋経済オンライン

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