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2022.03.14

「親の介護」に臨む人が知るべき国の2重大制度|仕事と介護の両立を諦めないのはとても重要だ


介護生活のなかで、仕事との両立は重要。そのために、国の制度を活用することも大切です(写真:kazuma seki/GettyImages)

介護生活のなかで、仕事との両立は重要。そのために、国の制度を活用することも大切です(写真:kazuma seki/GettyImages)

親の介護をする際に子どもが悩むのが、仕事との両立。仕事を辞めて介護に専念すると、その間の収入は途絶えてしまい、経済的なダメージにつながります。しかし、仕事と介護の両立を支援する、おトクな制度が国にも会社にもあることをご存じでしょうか。

介護歴約20年の経歴をもち、厚生労働省の補助事業「GO!GO!KAI-GOプロジェクト」の副団長でもある、お笑いコンビ・メイプル超合金の安藤なつさんと、介護・暮らしジャーナリストである太田差惠子さんとの共著『知っトク介護 弱った親と自分を守るお金とおトクなサービス超入門』から一部抜粋・再構成してお届けします(前回の記事はこちら)。

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前回の記事はこちら ※外部サイトに遷移します

介護離職の損失は計り知れない大きさ

安藤:子どもがメインで親の介護をすることになると、やっぱり仕事は辞めなくちゃならないのでしょうか? 105歳まで生きることを考えると私だったら、仕事と介護を一緒にやりたいです!

太田:その考え方が正しいと私は思っています。みなさん、仕事を辞めないと介護する時間がない!と考えがちですが、そんなことはありませんよ。

安藤:そのためにサービスや制度のことを理解してどんどん活用するんですよね。

太田:そうです。辞めなくてもできる介護の方法はあります。それに、介護のためにと仕事を辞めてしまうと、子どもの収入はゼロになりますよね。たとえば、年収450万円で働いていた人が、4年間介護の間を離職すると、1800万円の損失ということになります。

安藤:1800万円! それは大きい!

(出所)『知っトク介護 弱った親と自分を守るお金とおトクなサービス超入門』(以下同)

(出所)『知っトク介護 弱った親と自分を守るお金とおトクなサービス超入門』(以下同)

太田:介護が終わったとしても、子ども自身の老後もすぐそこに見えていて、自分にも介護が必要になるときが来るかもしれません。

安藤:そう考えると、急いで辞める決断をするのは、危険ですね。

太田:介護のために仕事を辞めると、経済的な打撃があるということは想像がつきますが、実は「精神的」「肉体的」にもダメージがあるんです。

安藤:えっ! 介護に専念するから体力的には楽なのでは?

太田:介護を機に仕事を辞めた人の負担感のデータを見てみると、精神面では約64%、肉体面では約56%の人が、負担が増したと回答しています。だからこそ、仕事と介護の両立を目指すことは大事なんです。

安藤:えええ!! そんなに。お金に困るのは想像できるけど、心も体も負担が増えるなんて、意外でした。

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「介護休業」「介護休暇」は要件を満たせばパートでも

安藤:介護のために仕事を辞めると、えらいことになる!というのはわかりました。でも、介護のために休んだり、遅刻したりが増えると、仕事でかかわる周りの人たちに迷惑をかけそうな気が……。

太田:はい。会社に迷惑をかけるからと、離職を決意する人もいるようです。でも、仕事をサボっているわけではないですから、まずは上司に相談してみるなど、とにかく介護についてオープンにすることが大切です。

安藤:介護って、ネガティブなイメージがあるから、人に言いにくい気がしますが、思い切ってオープンにすることが大切なんですね。

太田:それに、日本では、介護を理由に仕事を休めることが法律で定められているんですよ。

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安藤:法律で決まっているんですか! 知らなかった!

太田:絶対覚えておいてほしい制度として、主に2つの制度があります。1つ目は「介護休業制度」。介護対象者1人につき、通算93日までお休みすることができます。原則、2週間前までに書面などで勤務先に申請することで、使えるようになります。93日連続で休むこともできるし、上限3回まで分けて使うこともできます。

2つ目は「介護休暇制度」で、介護対象者が1人なら、年5日、2人以上なら、年10日までとることができます。介護休暇は、会社に「休ませてください!」と申し出れば使うことができ、時間単位でとることもできます。どちらも、必要な勤続期間を満たせば、パートやアルバイトでも使うことができます。

安藤:介護で仕事を休める法律。なんだか心強い!

太田:そうですよね。その法律は、「育児・介護休業法」として定められていて、時短勤務や残業の免除、フレックスタイム制の導入など、さまざまな働き方をしながら、仕事と介護を両立できるように、国も会社も応援しています。

安藤:育児も介護も同じ法律で、仕事との両立を目指せるように決まっているなんて知らなかったです。

太田:会社によっては、法律以上に介護のための制度を充実させているところもあります。一度、自分が働いている会社の制度を確認してみましょう。おトクな制度があるかもしれません。

たとえば、会社の福利厚生で介護の補助金を出してくれるところや、遠距離介護の交通費を補助してくれるところもあります。黙っていないで、会社に報告して、可能な限りおトクな情報を入手するようにしてください。

93日間の介護休業、3回に分けて使うべし

安藤:介護でお休みするのも、出産や育児でお休みすることみたいに普通になるといいですよね。でも、93日間の介護休業って、なんとなく、短いような気がしますが……。

太田:確かに、とても93日で介護が終わるとは考えにくいです。でも、介護休業の本来の使い方は、「自分が介護をするための休暇」というわけではなく、親の介護をマネジメントする期間に使うことが本来の目的です。

安藤:「マネジメント」! たしか、身の回りのお世話をすることではなく、 適切なサービスを受けられるよう環境を整えていくことでした。

太田:そうです! たとえば、93日のお休みを3回に分けて使えるのですから、1回目は、介護サービスに慣れるまで様子を見守るために使って、2回目は、施設介護を検討するときに一緒に施設探しをする。3回目は、看とりのとき、最期のときは、そばにいられるようにするなど、それぞれ1カ月間ずつ休むようにするなどの使い方もあります。

介護がはじまった!と慌てて、身の回りのお世話のために93日間がっつりお休みして、つきっきりで介護をしても、親の状態が良くなるわけではありません。長期間の介護を続けられるように、体制を整えたり、適宜調整したりするときに使うほうが、有効的な使い方だと思います。

安藤:介護休業の使い方でも、使い方を間違えるとせっかくのお休みが無駄になってしまうから、気を付けるようにしないと。はじめに理解しておくってやっぱり大切ですね。

親はやっぱり、最期まで自分の家で暮らしたい!と言うことが多いような気がしますが、介護が必要になってきて、子どもが離れて暮らしていてもずっと家で暮らすことって現実的にできるものでしょうか?

太田:「絶対にできる・できない」は、皆さんの事情によるので断言はできません。介護を行った場所を調査したデータによると、要介護1は76.4%、要介護2は68.4%の人が、在宅での介護をしていますが、要介護4だと41.5%、要介護5だと40.4%と在宅介護が少なくなって、半分以上の人が施設へ入居しているようです。

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安藤:やっぱり、介護の必要度合いが高くなってくると、自宅で介護をするのは難しくなるんですね。

太田:1人で食事をとれないとか、火の始末ができないなどになると、在宅での生活を続けることが厳しくなることもあります。親が安全に暮らしていくことを考えると、将来的には施設への入居は、視野に入れておくほうがよいと思います。

安藤:もし親が嫌がった場合は、説得するのは、なかなか大変そうですよね。

太田:親に嫌がられてしまうと、なんだか悪いことをしているような気分になるのは当然です。でも、しつこいようですが、親も子どもも105歳まで生きる可能性があることを忘れないでください。親の介護に全力投球してやっと終わったところで、自分自身の老後は待ってはくれません。それなら、親が安全に暮らせる施設を探して、快適に過ごせるようにサポートするほうが、子どもの人生を守ることができますし、より現実的なプランではないでしょうか。

安藤:そうですね。でもどんな施設があるのか、どこで探せばいいのかまったくわかりません!

太田:施設は、さまざまな種類があり、受けられるサービスもそれぞれです。まずは、いつかは、高齢者施設への入居も検討しなくてはいけなくなることが多いと心に留めておいてください。いざというときに備えて、インターネットなどで、どんな施設でどんなサービスを受けられるのかをチェックしておくことや、身近に介護経験者がいるなら話を聞いておくなど、ある程度、情報収集しておくといいと思いますよ。

安藤:わかりました! 親の施設探しのサポートを全力でできるように知識を備えるようにします。

介護保険制度を使えばサービス費は1割負担

安藤:介護に関する心得みたいなものは、うっすらですが、形が見えてきたような気がします。ここで、「お金」について気になるので聞いてもいいですか? 身の回りのお世話は、介護サービスを使うということですが、お金ってどのくらいかかるものでしょうか?

太田:サービスのことや、それにかかわる費用については少し複雑なので、ここでは、ざっくり大枠のお話をしますね。介護にかかわるサービスを使うためには、もちろんお金がかかります。でも、日本には、「介護保険制度」というのがあって、介護サービスにかかる費用を補助してくれます。これは、日本に住んでいる40歳以上の人のほぼ全員が使えます。

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太田:この制度を使うことで、実際にかかる費用の1割負担すればOK。たとえば、1万円の介護サービスを使った場合、支払いは1000円で済みます(※所得によって、2~3割の場合あり)。

安藤:ええーっ!てことは、9000円もおトクになっちゃうってことですか! おトク感半端ないっす。

太田:もう1つ。これは、「医療保険制度」についても、説明させてください。高齢になると、当然ながら、病気などで、病院にかかる頻度も高まりますよね。病院にかかったときに、実際に支払う金額は、69歳までは、子ども世代と同じ3割負担ですが、70~74歳は2割、75歳以上になると1割と、負担が軽くなっていきます(※所得によって2~3割の場合もあり)。

安藤:つまり、年齢が上がるほど、費用負担が軽くなるってことか。年を取るほど、費用の負担もきつく感じそうだし、きちんと理解しておくことで、不安が和らぎますね。

太田:さらに、介護費も医療費も人によってそれぞれ、支払い上限額というものが決まっていて、その金額を超えた部分は、戻ってくる制度があります。まずは、一定額までは自分で払わなくちゃいけないけど、後は国が何とかしてくれる、ということを覚えておいてください。

安藤:わかりました! ありがとう!日本という感じですね。

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提供元:「親の介護」に臨む人が知るべき国の2重大制度|東洋経済オンライン

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