2022.03.14
ただ読んでもNG!「知肉」になる「本の読み方」5選|読むとき「意識をちょっと変えるだけ」でOK!
ただ読むだけでは身につけられない「知肉になる本の読み方」5つの秘訣をご紹介します(写真:Kazpon/PIXTA)
テクノロジー、政治、経済、社会、ライフスタイルなど幅広い分野の情報を発信し、日本のインターネット論壇で注目を集める佐々木俊尚氏。
「ノマドワーキング」「キュレーション」などの言葉を広めたことでも知られ、2006年には国内の著名なブロガーを選出する「アルファブロガー・アワード」も受賞している。
その佐々木氏が、このたび、『現代病「集中できない」を知力に変える 読む力 最新スキル大全』を上梓した。
「ネット記事」「SNS」「書籍」などから、「読むべき」記事をいかに収集し、情報を整理し、発信していくか、自身が日々実践している「新しい時代の読み方」の全ノウハウを初めて公開した1冊で、発売たちまち4万部を超えるベストセラーになっている。
そんな佐々木氏が、「ただ読むだけでは得られない『知肉になる本の読み方』5大秘訣」について解説する。
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「ただ読む」だけでは「知肉」にはならない
みなさんは「どんな目的」のために、本を読むだろうか? 勉強? それとも教養? あるいは娯楽だろうか?
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わたしは、読書の目的を分ける必要などまったく「ない」と考えている。本を読むのはどこまでいっても「自分のため」であり、自分の頭脳にさまざまな教養や豊かな情感や考える力を蓄積していくためである。
それは小難しい哲学書や歴史書や高尚な文学だけのものではない。ミステリーを読んでも、漫画を読んでも、それが「いい本」であれば、あらゆる「いい本」は自分のための蓄積になってくれる。
本は、決して「暇つぶし」などではない。「学び」であるのと同時に「娯楽」でもあり、自分の人生に蓄積していくものなのである。
しかし、「ただ読む」だけでは自分の「知肉」にはならない。「感動したこと」があっても、読み終わったあと、どの部分だったか忘れてしまうことが多いものである。
ここでは「『知肉』になる本の読み方」の5つの秘訣を紹介する。
ひとつめは「気になるところは『視界に入っているうち』にチェックすること」である。
「家に帰ってから」では忘れてしまう
【1】「気になるところ」は「視界に入っているうち」にチェックする
「本」というのは夢中になればなるほど、以前に読んだページのことはどんどん忘れていってしまうものだ。
「気になったところ」があって「家に帰ってから付箋をつけよう」などと思っていても、そのころにはもうだいぶ先を読み進めていて、どのページに何が書いてあったかなんてたいてい忘れている。
最初にとっかかりとしてやるべき作業は、「気になる文章などをチェックしていくこと」である。
「紙の本」なら「ポストイット」などの付箋を貼っていく。「電子書籍」の場合には、リーダーやタブレットの画面を指でなぞるだけの「ハイライト」という機能が便利である。
ちなみに、わたしは、いつもポストイットを常備している。仕事で移動する際も、つねにポーチにも用意しており、電車の中で立ったまま紙の本を読んでいるようなときでも、気になるところがあれば、すかさず付箋を貼る。
「気になるところが視界に入っているうち」に、すかさず付箋をつけるのがポイントだ。
【2】チェックするだけでなく、テキストで「整理・保存」する
唐突だが、学生のころを思い出してほしい。学校の期末試験前の勉強で、教科書に蛍光マーカーを引いただけで満足し、それで「勉強した気になってしまった経験」を持っている人はけっこう多いのではないか。
そして、その若いころの記憶とともに思い出してほしいのは、「マーカーを引いただけではまったく頭に残らないし、実にはならなかった」ということだ。マーカーを引いた場所を記憶に焼きつけ、自分の中に「知肉」として蓄積させるためには、さらに一段階必要なのである。
つまり、「ハイライト」や「付箋」を貼った場所は、それで満足して終わらせないことが大切だ。
「電子書籍」なら、「メモアプリ」などテキストで残せるところに、マーカー部分をコピペして整理・保存する。紙の本なら付箋を貼った場所を開き、そのノンブルとともにメモを順にする。ただし、一字一句、正確に書き写す必要はない。「意味がわかる程度」にざっとまとめるだけで十分である。
3つめは、「感銘した箇所に『なぜ保存が必要か』を『具体的』に書きとめること」である。
【3】「なぜ保存が必要か」を「具体的」に書きとめる
「感銘した箇所」は、自分がその文章の何に感銘を受け、なぜ「保存の必要がある」と感じたのかを「覚え書き」でいいから添えておくことだ。そのときは鮮烈に感じたことでも、数週間もするとすっかり忘れてしまうことが多いからだ。
文章は短くてもいい。しかし、「面白い」「感動した!」というような「ふわっとした感想」だけでは、あとから見返しても「何に面白いと感じたのか」がわからなくなってしまう。
大事なのは、自分が何にピンときたかを、「より具体的」に記録しておくことである。
「この解説は、前に読んだ『○○』という本にも出てきた」「これって△△のニュースにもつながるのでは?」というように、できるだけ具体的な言葉で記しておこう。
「芋づる式」に関係している本を次々に読んでいく
【4】「参考文献」や「引用」にも、「いい本」が隠れている
いい本は「参考文献リスト」や「引用」などもしっかりとつくられていることが多い。そういう引用されている本にも目を向けよう。
1冊の本を読んだら、そこから「芋づる式」に関係している本を次々に読んでいくことも大切である。キンドルの無料サンプル機能などを使えば、それらの本をちょっとのぞき見してみるなど、お金をかけなくても「広げていく読書」は可能だ。
読み進めてみて面白くなかったら、また元の本に戻り、別のアンテナを立てていく。そうすれば、そのテーマについて自分の中に「ふくらみのある知」を持つことができ、「立体的なイメージ」を描けるようになる。そうなれば細部もよく見えるようになり、俯瞰できる位置も高くなっていくのだ。
読書の際に気をつけなければならないのは、いい本ほど大量に付箋を貼ったりハイライトをつけたりをしたくなるが、「チェックの量が多すぎると、あとでまとめてコピペするのが逆に面倒になってしまう」というジレンマだ。
【5】「保存作業」は「持続しない集中力」を利用する
そこでわたしが実践しているのは、「付箋やハイライトの内容を保存しつつ、同時に本も読み進める」というスタイルである。
15分ほど読み進めて、ちょっと飽きてきたり疲れてきたりしたら、いったんページをめくるのをやめ、付箋を貼った文章をパソコンやスマホで「整理・保存」するのだ。
「自分は集中力がなく、いつも注意散漫だ」と自己嫌悪になっている人も多いと思うが、たいていの人には集中力なんてそもそも備わっていないのである。「持続しない集中力」を逆利用してしまえば、「読書」も「整理・保存」も無理なく進められるだろう。
読書で得た知識を「知肉」に変えていく
「いい本を読む」ということは、自分の「知肉」にしていくということだ。つねに「この本は、どのように自分の知肉になるだろうか」ということを意識しながら読んでいく。
とはいえ、慣れないと、そこまで考えながら読むのは難しいだろう。いまでこそ「佐々木さんの読み方は、すごいですね」と言われることもあるが、わたし自身も「知」と無縁の半生を送ってきた。しかし、そういう「知」と縁遠い人間でも、このぐらいまでは到達できるのだ。
「『知肉』になる本の読み方」をうまく使いこなすことができれば、読書で得た知識を「知肉」に変えていけるはずだ。ぜひ、みなさんも「読む力」を磨いてほしいと思う。
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提供元:ただ読んでもNG!「知肉」になる「本の読み方」5選|東洋経済オンライン