2022.02.25
学校では習わない「上手な絵の描き方」裏ワザ3つ|「知識もセンスも不要!」誰でもできるコツは?
学校で教えてくれない、身近なものを使って「上手な絵」を描く方法とは?(写真:YosukeNakada/PIXTA)
この記事の画像を見る(5枚) ※外部サイトに遷移します
世界で最も人気のある著名な絵画講師のひとりで、アメリカの大人気番組『マーク・キスラーのイマジネーション・ステーション』の司会を長年、務めるマーク・キスラー氏。
優れたテレビ番組、テレビ業界の功績に与えられる、最も権威ある文化賞のひとつ「エミー賞」も受賞し、2011年に出版した初の著書『You Can Draw in 30 Days』(未邦訳)は、世界中で大ベストセラーとなるほど人気を博している。
そのキスラー氏がこの度、前著をさらに進化させた「超時短30分バージョン」として、「キスラー式メソッド」をすべて1冊に凝縮した『誰でも30分で絵が描けるようになる本――たった「4つのステップ」で、驚くほど絵が上手くなる!』を上梓した。
「わかりやすく」「親しみやすく」「ユーモアに満ちた」解説が添えられた本書は、キスラー氏にとって待望の初の日本語の訳書で、日本でも発売後たちまち大増刷するなど、話題を呼んでいる。
「誰でも30分で絵が描けるようになる!」という「キスラー式メソッド」はどんなものか。本書の内容を再編集しながら、「学校で教えてくれない『上手な絵』を描く裏ワザ」について解説する。
『誰でも30分で絵が描けるようになる本――たった「4つのステップ」で、驚くほど絵が上手くなる!』 クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします
「思い込み」が絵を苦手にする!?
「絵を描く」ということについて、みなさんはどんな風にお考えでしょうか?
『誰でも30分で絵が描けるようになる本:たった「4つのステップ」で、驚くほど絵が上手くなる!』 クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします
私が長年、たくさんの大人たち、子どもたちに向けて絵の描き方を教えるなかで、「絵を描くこと」を難しく考えている人がとても多いことに気がつきました。たとえば、「フルーツを盛った皿と何時間もにらめっこする」とか、「美術館で半日近くかけてスケッチする」という風に捉えているのです。
でも実際には、絵が描けるようになるためには、膨大な時間も、特定の場所も必要ではないのです! そのことを多くの人に伝えたくて「あっという間に絵が描ける実践的な方法」として「キスラー流30分方式」を考えました。
私の「30分方式」では、絵を「賢く、すばやく、きれいに」描くための「小ワザ」がたびたび登場します。おそらく学校の美術の時間には教わらなかった方法、あるいは「邪道」とされてきた方法かもしれません。
しかし、これまで「当たり前」とされてきた教え方だと、子ども時代にとんでもない努力をしなければならず、結局は絵を描くのが嫌いになってしまうと私は考えます。
それよりも、簡単な「小ワザ」を使って「自分にも描けた」という体験を持ち、「絵を描くコツ」をつかんだほうが、くり返し創作活動をする意欲が生まれ、上達につながると思うのです。では、キスラー流の「小ワザ」を詳しく説明していきましょう。
学校の美術の時間に「静物画」の題材として、ワインなどの瓶を描いた経験をお持ちの人も多いかと思います。瓶の形を正確に捉え、ガラスに反射する光や影を表現することは、難しかったのではないでしょうか?
私の「ワインボトル」を描くレッスンでは、「小ワザ」として身近な道具を使います。
きれいなシルエットがあっという間に描ける
【小ワザ(2)】「コイン」を使って描く
私の「30分方式」では、描き方の手順を4ステップに分け、それぞれ5~10分の制限時間を設けています。
最初のステップでは、描く対象を「自分にとってなじみのある単純な図形に分解」し、設計図を作成します。ワインボトルは、長方形が2個と円が1個、たったそれだけです。ここで登場するのが「10円硬貨」と「クレジットカード」で設計図を描く「小ワザ」です。
まず、紙の真ん中あたりに10円硬貨をなぞって円を描きます。その円の下半分をふさぐようにクレジットカードを縦に置き、カードの上、下、左の3辺をなぞります。カードを平行にずらして右側の長辺を描き、短辺の長さが円の直径と同じ長方形を描きます。これがワインボトルのボディーになります。
コインをなぞった円に重ねて長方形を描き、ワインボトルのボディーの形を描く(出所:『誰でも30分で絵が描けるようになる本』)
2個の長方形、1個の円に分解して描いたワインボトルの設計図。余分な線はあとで消す(出所:『誰でも30分で絵が描けるようになる本』)
ボトルネックは細長い長方形で描きます。太さはボディーのちょうど半分、長さはボディーがネックの2.5倍になるようにするのがポイントです。ボトルのキャップと、ネックに巻いてあるキャップシールの線を描けば設計図は完成です。ここまでの制限時間は5分です。
「小ワザ」を使えば、ワインボトルを長時間眺めて試行錯誤するよりも、ずっと簡単に、あっという間に美しいシルエットを描き上げることができるのです。
身近な道具をなぞって描く「小ワザ」は、コインのほかにもいろいろあります。なかでも便利なのは「自分の指」です。
【小ワザ(2)】「自分の指」を使って描く
バレエの「トーシューズ」を描くレッスンも『誰でも30分で絵が描けるようになる本』に登場します。
片方のシューズを反対側のシューズに立てかけた構図で描きます。トーシューズは、よく見ると1個の円と3個の楕円形で成り立っています。3個の楕円形のうち、2個はシューズ本体、1個は立っているほうのシューズの履き口の部分になります。
後ろ側のシューズのつま先には、円がはっきりと見えています。リボンは基本図形がはっきりしないので、設計図の段階では描かないことにします。
ここで、楕円形を描きたいときに便利なのが、自分の指です。
親指をなぞり、紙を上下さかさまにして、ふたたび親指をなぞります。これで、立っているほうのトーシューズの設計図「少しいびつな楕円形」が描けました。
ちょうど真ん中のあたりに「しるし」を描き込み、そのしるしをふさがない位置に親指を置いて、重なり合う後ろ側のシューズを楕円形で描きます。
トーシューズを3つの楕円形と1つの円の基本図形に分解し、親指をなぞって楕円形を描いた設計図(出所:『誰でも30分で絵が描けるようになる本』)
大きさ、角度の自在な「指」は便利
「自分の指」は、親指から小指まで描きたいもののサイズに合わせて選べ、指を曲げることで、カーブもうまく描くことができるので、私のレッスンにはたびたび登場する便利な「小ワザ」です。
「ペンギン」を描くレッスンでは、親指をなぞって胴体の設計図を描き、2つの羽は「半楕円形」に分解できるので、小指の側面をなぞって描きます。
「小ワザ」に使う道具のなかでも最も身近なものなので、ぜひ覚えておいていただければと思います。
ここまで、コインや指を使って設計図を描く「小ワザ」を紹介してきました。さらに、描く題材の「実物」を使う小ワザも私のレッスンに登場します。
【小ワザ(3)】「スープ缶」を使って描く
スープ缶の基本図形は、長方形と、同じ幅の楕円形に分解できるのは、もうおわかりですね。長方形を描き、長方形の上辺に二等分される楕円形を描けば、あっという間に設計図ができます。
次に、長方形の内側に缶の底となる半楕円形を描き、元の長方形の幅から鉛筆1本分内側の場所に「しるし」をつけます。
これを長方形の上の頂点とつなぎ、底に向かって「先細り」になるよう線を引いて「奥行き感」を表現します。半楕円形を描くときに本物のスープ缶の輪郭をなぞったり、長方形や「先細り」の直線を引く際に、缶の側面をなぞったりしてもよいでしょう。
スープ缶の底の半楕円形に「しるし」をつけて長方形の頂点とつなぎ、奥行き感のある「先細り」の形にする(出所:『誰でも30分で絵が描けるようになる本』)
「小ワザ」で楽しく絵が上手くなる
アンディ・ウォーホルの代表作、キャンベルのスープ缶の絵を見たことがありますか? 32種類のスープ缶をプロジェクターでキャンバスに投影して、その形を描き写した作品で、ニューヨーク近代美術館(MoMA)にも展示され、世界中で話題になりました。
驚くなかれ、ウォーホルも「小ワザ」を使っているのです! 「芸術家」と呼ばれる人たちも、道具や助手の力を借りて作品をつくってきました。レオナルド・ダヴィンチもウォルト・ディズニーも見習いを雇いました。
「小ワザ」を使うからといって、けっしてズルをしているわけではないのです。マグカップの底をなぞって円を描くのも、ただ道具を使っているというだけで、邪道でもなんでもありません。
みなさんにもぜひ、「目に見えているもの」をより正確に写し取る「小ワザ」を身につけ、この先いろいろなものを自由に描けるようになってほしいのです。
そして実物が手元になくても、写真があれば絵を描くことはどこでも楽しめます。私の本には、今回紹介したようなユニークな25のモチーフが写真で掲載され、それを見ながら描いていきます。
ぜひ固定観念から解放されて、「キスラー式メソッド」で、絵を描くことをのびのびと楽しんでみませんか?
【あわせて読みたい】※外部サイトに遷移します
提供元:学校では習わない「上手な絵の描き方」裏ワザ3つ|東洋経済オンライン