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2021.12.14

年金大改正!「何歳」でもらえば最もおトクか?|老後30年間で7200万円もの額を無視できない


年金は何歳から受給するかで、受け取る総額が大きく変わってくる。人生100年時代、先を見据えた計算が必要だ(撮影:尾形文繁)

年金は何歳から受給するかで、受け取る総額が大きく変わってくる。人生100年時代、先を見据えた計算が必要だ(撮影:尾形文繁)

老後の30年間、年金をいくらもらえるのか――。

会社員にとって「定年延長」と「年金の繰り下げ」はセットである。公的年金の受給開始が65歳からになるのに合わせ、企業には65歳までの雇用機会の確保が努力義務とされた。2022年年4月には年金法が改正される。それによって何が変わるのか。

公的年金(厚生年金)の標準的な受給開始年齢は65歳だが、受け取るタイミングは自分で選ぶことができる。60~64歳で早めに受け取ることを「繰り上げ受給」、66~70歳で遅めに受け取ることを「繰り下げ受給」という。22年4月からは繰り下げ受給の上限が75歳まで延長される。

65歳を70歳に遅らせると、42%増額になる

12月6日(月)に発売された『週刊東洋経済』12月11日号では「定年格差」を特集。70歳まで雇用が実質的に延びる中、ミドル・シニアの会社員が受け取る年金についても取り上げている。

『週刊東洋経済』12月11日号では「定年格差」を特集 クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします

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まず、繰り下げ受給では、受け取りを65歳から1カ月遅らせるごとに、0.7%ずつ年金額が増える。70歳に遅らせると総額で42%増、75歳まで遅らせると84%もの増額だ。

一方、繰り上げ受給を選ぶと、早く受け取るメリットはあるが、年金額は減ってしまう。現状では1カ月早く受け取るごとに0.5%ずつ減額される(2022年4月からは減額率は0.4%に縮小)。増減率は生涯固定されるので慎重に選びたいところである。

この増減率に加え、繰り上げ・繰り下げの損益分岐年齢についても、見ておく必要がある(2022年4月以降)。

もし受け取りを60歳まで繰り上げると、年金は65歳開始と比べて24%減、受取総額は80歳未満で65歳開始に追い付かれ、その後に差は広がっていく。63歳で受け取ると、年金は9.6%減、総額は83歳未満で追い越されるのだ。

ただ、繰り下げた場合、寿命も考えなければならない。67歳まで繰り下げると、年金は65歳開始と比べ16.8%増、総額は78歳以上で65歳開始を上回る。70歳で受け取ると42%増で、65歳開始時の場合とトントンになる損益分岐年齢は81歳以上。75歳で受け取ると84%増だが、損益分岐点は86歳以上になって、それ以上生きなければ損をしてしまう。

ちなみに2020年時点の日本人の平均寿命は、女性が87.74歳、男性が81.64歳。寿命はまだまだ延びる余地があるという。特に女性は繰り下げ受給を選んだほうが有利に受け取れる可能性が高い。

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税金や社会保険料を気にしすぎる必要はない

年金には税金や社会保険料がかかる。住民税や社会保険料は、65歳以上で年18万円以上の公的年金を受け取れば、原則天引きされる。所得税は、65歳未満で108万円超、65歳以上で158万円超の公的年金を受け取ると、源泉徴収される(収入が公的年金のみの場合)。

繰り下げによって公的年金が増えると、天引きされる税や社会保険料も増える。ただ、年金が増えたほうが、結果的に手元に残るお金も増える。繰り下げた期間は年金を受け取っていないため、関連する税や保険料も発生しない。税や保険料の負担を考慮し、繰り下げをためらう必要はない。

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また、年金の繰り下げ・繰り上げとなると、年金のみの損得に関心が向きがちだが、60歳以降の働き方や暮らし方も併せて考えたい。資産や負債を把握するのも大切である。
例えば、住宅ローンなどがまだ残っていたり、日々の家計が赤字になったりする場合、年金を繰り上げて受給する選択肢はありうる。反対に、資産があって家計に余裕があれば、あえて数年は貯金などの取り崩しだけで暮らし、繰り下げ受給による年金増額で将来の経済的余裕を確保する、という方法も考えられよう。

かつてより寿命が延びたことによって、高齢期の過ごし方も多様になりつつある。65歳で年金受給スタートというイメージはいったん忘れ、それぞれの事情に合わせて、受け取る時期を見直すとよい。

給与と年金で月47万円までなら大丈夫

さらには、雇用延長で60代になっても働き続ける人が増える中、「在職老齢年金」の仕組みについても知っておきたい。

在職老齢年金とは、定年を過ぎて働いている場合、給与と年金が合計で毎月一定額を超えると、年金が減額されたり、支給されなくなくなったりする制度である。この支給停止の上限額が引き上げられる。対象は特別支給の老齢厚生年金を受け取る会社員になる。

現在は60~64歳の人が月28万円、65歳以上の人は47万円を超えると、上限の対象になっている。2022年4月からは60~64歳の上限も47万円へと引き上げられるのだ。つまり、月47万円までは年金と給与をもらっても、制約がない。2022年度の在職老齢年金の受給者のうち、ほぼ半数の37万人が減額の対象。この改正によって、減額対象者は11万人まで絞られると試算され、恩恵を受ける人が増えるだろう。

ただし、厚生年金の受給開始年齢は、改正で段階的に65歳へ引き上げられている。1961年4月2日以降(男性)に生まれた人は、受給開始が65歳に設定されているため、そもそも60~64歳で年金を受け取ることはない。また1957年4月1日以前に生まれた人は、改正時点で65歳以上になるため、対象ではない。

具体的に関係するのは、2022年4月以降に60〜64歳で特別支給の厚生年金を受給できる、1957年4月2日から1961年4月1日までに生まれた男性と、1957年4月2日から1966年4月1日に生まれた女性になる。

ほかには65歳の会社員が対象の「在職定時改定」にも注意しよう。

現在、厚生年金は長く加入するほど年金が増えるが、65歳以降に働く期間の年金を再計算していない。退職して1カ月過ぎるか、70歳になった時点で、まとめて再計算して上乗せする仕組みだ。要は保険料が毎月天引きされているものの、年金額は据え置きという状態になっている。

これが2022年4月以降、毎年1回再計算して上積みする、在職定時改定という仕組みに変わる。在職中でも年金の改定が行われ、額が年々増えていくことになる。厚生年金の増額のタイミングが早まることで家計に余裕が生まれ、国民年金を繰り下げる選択肢が生まれるかもしれない。

改定によっていついくら増えるのかは条件が少々複雑だ。毎年9月1日時点で厚生年金に加入していれば、前年9月からその年の8月までの増加分を計算し、10月分(12月支給)から増額が始まる。2022年4月の改正時に65歳を過ぎている場合は、それまでの上積みはまとめて行われる。例えば、改正時で68歳になる人は、「65歳以降の増額3年分」と「68歳の4~8月まで5カ月分」が、2023年10月分から上乗せになる。

1年分の増額をざっくり計算するには、年収に0.55%をかけてみよう。年収が約240万円(標準報酬月額20万円)なら、1年間働くと約1万3000円。年収360万円(同30万円)で1年働けば、約2万円が年金に上乗せされると考えるとよい。少ない金額に思えるが、この増額は生涯続くため、メリットはある。

月20万円で20年間なら、給付は4800万円にも

2022年に行われる改正にはほかにも「アルバイト・パートに対する厚生年金の適用範囲の拡大」や「iDeCo(個人型確定拠出年金)加入条件の要件緩和」などがある。

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「一般論はもういいので、私の老後のお金『答え』をください!」(日経BP) クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします

これらの改正はどれも長くなった高齢期に対応するためのものである。

公的年金はなかなかメリットを感じにくい。働いている間は保険料が天引きされ、いざ受給するときも生活費で日々費やされるから、実感する機会が少ない。が、仮に世帯の年金が月20万円とすれば、20年間で4800万円、30年間で7200万円の給付を受けることになる。決して少なくない金額だ。

もし年金制度がなければ、自前で用意しなくてはならない。準備できなかった場合、75歳以降の後期高齢者になっても働き続けるか、貧困に近い生活で我慢することになる。確かに保険料の負担は軽くないが、老後を支える大事な仕組みだ。繰り下げ受給など、できるだけ年金を増やしておくと、人生の保険として役立つのは間違いない。

『週刊東洋経済』12月11日号(12月6日発売)の特集は「定年格差」です。 ※外部サイトに遷移します

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提供元:年金大改正!「何歳」でもらえば最もおトクか?|東洋経済オンライン

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