2021.12.08
ジェネリック医薬品「安くても安全」といえる根拠|超高齢化社会に向かう日本には必要不可欠な薬
なぜジェネリック医薬品は安いのか?(写真:pearlinheart/PIXTA)
この記事の画像を見る(3枚) ※外部サイトに遷移します
CMでもよく見聞きする「ジェネリック医薬品」。過去に開発された同じ薬よりも安く買えるのはなぜなのか? サイエンスライターのかきもち氏による新刊『これってどうなの? 日常と科学の間にあるモヤモヤを解消する本』より一部抜粋・再構成してお届けします。
『これってどうなの? 日常と科学の間にあるモヤモヤを解消する本』 クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします
病院で診察を受けたとき、「薬はジェネリックにしますか?」と医師から聞かれることがあります。ジェネリック医薬品は、過去に開発された薬と同じ効果をもちながら、安価に購入することができる薬です。
ミクロにみると患者さん一人一人の負担を軽減でき、マクロにみると国全体の医療費を減少させることができるとして期待が高まっており、普及が進んでいます。
ジェネリック医薬品はなぜ安いのか?
しかし、どうして同じ効果の薬を安価に入手することができるのでしょうか。同じ効果ならば、同じだけの対価が必要そうです。実際には、薬を開発するまでの過程と、薬に関する特許が関係しています。ここでは、ジェネリック医薬品とはどんなものか、どうして安いのかをご紹介します。
ジェネリック医薬品の「ジェネリック」は、英語で「一般的」「商標登録されていない」という意味をもちます。名前にもあるように、ジェネリック医薬品は特許の切れた薬を基に開発された、同様の作用をもつ薬のことです。
(出典:『これってどうなの?日常と科学の間にあるモヤモヤを解消する本』)
新しい薬の開発には長い時間がかかります。研究開発に2〜3年、効果や作用についての試験に3〜5年かかります。その後実際に患者さんや志願者に薬を使用してもらい、安全性などについてテストを行います。ここに3〜7年かかります。
その後、医薬品医療機器総合機構などによって1年ほどかけて審査が行われます。最短9年、最長16年……薬を開発する会社にも研究者にも、かなりの負担がかかります。
そこで、製薬会社は新薬の特許を出願します。特許とは、国が技術などの発明者に、その発明をしばらく独占して使用できる権利を与える制度です。特許を与えられた製薬会社は、その薬を5〜10年ほど独占して販売することができます。
特許の有効期間が切れると、特許をもっていなかった製薬会社でも同様の薬を作ることができるようになります。ここで、特許の切れた薬を基に作られるのがジェネリック医薬品です。
すでに薬の安全性が確認され、製造方法も確立されているため、2〜3年ほどで開発することができます。新しく薬を開発するよりもコストが低いというわけです。そのため、ジェネリック医薬品は先に開発された同じ成分の薬よりも安価になります。
先に開発された薬との違いは?
それでは、ジェネリック医薬品と先に開発された薬の違いは何でしょうか。それは、薬の飲みやすさや誤飲の起こりにくさです。成分がすでに開発されている分、より飲みやすいものとなるよう、形に改良が加えられているものがあります。
日本におけるジェネリック医薬品の使用率は年々増加しています。使用率は、先に開発された薬とそのジェネリック医薬品が処方された数のうち、ジェネリック医薬品が処方された数が占める割合です。2020年9月時点では約79%。これからも普及の余地がありそうです。
これから日本が超高齢化社会に向かう中で、国全体の医療費が増加することが予想されています。
(出典:『これってどうなの?日常と科学の間にあるモヤモヤを解消する本』)
ジェネリック医薬品を使うことは、一人一人の負担の軽減につながるだけでなく、国全体の医療費を抑えることにもつながります。
『これってどうなの?日常と科学の間にあるモヤモヤを解消する本』(翔泳社) クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします
普段飲んでいる薬は、生活の視点から見ると健康を支えてくれるものであり、研究開発の視点からみると研究開発の成果であり、国の政策の視点からみると医療費につながります。同じ一つの薬も、生活、科学、政策と、見方によってさまざまな側面が見えてきます。
【あわせて読みたい】※外部サイトに遷移します
提供元:ジェネリック医薬品「安くても安全」といえる根拠|東洋経済オンライン