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2021.11.17

年金は収入の低い人ほど「手厚く」もらえるワケ|基礎年金には「老後の備え」以外の役割もある


年金といえば制度や世代間の負担の問題にばかり焦点が当たりがち。だが、日本の年金は老後の備えの役割だけを担っているわけではない(写真:ak_yamauchi/PIXTA)

年金といえば制度や世代間の負担の問題にばかり焦点が当たりがち。だが、日本の年金は老後の備えの役割だけを担っているわけではない(写真:ak_yamauchi/PIXTA)

先頃の自民党総裁選挙では、各候補者の間でさまざまな論争が繰り広げられましたが、中でも話題になったのは河野太郎氏が提言した年金の問題です。年金についてはつねに話題性のあるテーマなので、政争の場では何度も論争が繰り広げられてきました。私は、現在の公的年金制度が万全とまではいえないまでも、かなり安定した制度になっていると思っています。

それに、かつてのマスメディアは年金に関してネガティブな報道が多かったものの、最近ではとてもまともな記事も増えてきています。とくに最近では公的年金の本質が「貯蓄」ではなく「保険」であることが比較的知れ渡るようになりました。

これはとても良いことだと思いますし、年金の本質的な役割として保険機能はとても重要です。ところが、実はあまり知られていないのですが、公的年金にはもう1つ大事な役割があります。

高所得者から低所得者への「再分配」が重要

それは「所得再分配機能」です。所得再分配とはどういうことかというと、高い所得のある人から低い所得の人に対して所得の分配がされることです。といっても、高所得者が直接、低所得者にお金を渡すということではありません。政府がその間に入り、税や社会保障という機能を使って調整していくという役割が「所得再分配」なのです。

これが進みすぎると共産主義社会のようになってしまいますが、さりとてアメリカのようにすべて自助努力で市場機能に委ねてしまうというのもいかがなものかと思います。以前、アメリカの医療問題をテーマにした『シッコ(Sicko)』(2007年、マイケル・ムーア監督)というドキュメンタリー映画がありました。

この映画は慶應義塾大学の権丈善一先生に教えていただいたのですが、自助努力と市場万能主義が行き着くところの社会の病巣が描き出されており、その結果はかなり恐ろしい社会であるということがよくわかります。やはり基本は「自助」であっても、それだけでは足りない部分を「共助」によって賄い、最後のセーフティーネットは「公助」でカバーするというのが最も安定した社会になるのだと思います。

では、日本の公的年金の場合、どういう所得再分配機能があるのでしょう

わが国は国民皆年金制度で20歳以上のすべての人は何らかの年金制度に加入していますが、全員が加入しているのが国民年金です。サラリーマンの場合は厚生年金という制度に入っていますが、その中に国民年金に相当する部分が基礎年金としてありますので、基本はすべての人が加入しています。

実はこの基礎年金の存在が、年金支給額の格差を是正し、所得再分配の機能を果たしているのです。ここでちょっと下の図をご覧ください。

手取り給与18万円弱でも、年金は17万円余もらえる

記事画像

この図は、手取り給与が35万7000円のAさんと17万9000円のBさんが負担する毎月の年金保険料と将来受け取る毎月の年金額の比較を表しています。また、35万7000円という手取りは税・社会保険料控除後の金額ですから、額面にすると43万9000円となり、これは厚生労働省がモデル年金額を算出するときの賃金という前提です。AさんとBさんの給料が2倍違うのは比較しやすくするためです。いずれも夫婦2人で、どちらかは働いていないという前提です。

さて、年金保険料の負担額は給料に比例しますから、Aさんが払う保険料4万円に対して、給料が半分のBさんは2万円となります。ところが年金給付額を見てみると、Aさんの年金給付額は22万円であるのに対してBさんの場合は17万5000円です。Bさんの払った保険料はAさんの半分なのに、支給される年金額はAさんの8割ぐらいとなります。

これはいったいどういうことなのでしょうか。その答えは「基礎年金部分」にあります。

厚生年金保険の場合、給付は報酬比例部分と定額部分に分かれます。報酬比例部分というのは、給料の額に比例して将来の年金給付額が変わる部分です。たくさん給料をもらった人は将来受け取る年金額も多くなります。一方、定額部分というのは基礎年金の部分で、これは現役時代の給料に関係なく一定金額が支給されます。国民年金の支給額が、払い込み期間が同じであればすべて同じ金額になるのと一緒です。

河野氏の年金改革案では仕組みに無理があった

この例の場合、AさんもBさんも基礎年金部分は夫婦合計で13万円となります。一方、報酬比例部分はAさんが9万円、Bさんが4万5000円ですから、これは払った保険料と同じくBさんのほうが半分になっています。この結果、Aさんの年金支給額は9万円+13万円=22万円、Bさんの支給額は4万5000円+13万円=17万5000円となります。

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別な観点からみると、所得代替率(現役時代の手取りの何%を年金の給付額で賄えるか)ではAさんは22万円÷35万7000円=61.6%、一方Bさんは17万5000円÷17万9000円=97.8%ですから、この場合、何とBさんは現役時代とほとんど変わらない収入を年金だけで得ることができるということになります。

夫婦世帯で手取り給与が17万9000円というのは、決して高い給料とはいえません。それだけに、低所得層に対する所得再分配機能として、このように報酬とは関係ない基礎年金部分の存在が大きく役立っているということになります。

これは、河野氏が主張したように税を使って基礎年金部分を切り分けてしまうと、とても実現できない仕組みとなってしまいます。このように、公的年金制度は一見単純ですが、比較的よく考えられた仕組みがビルトインされているということは知っておいてもいいと思います。

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提供元:年金は収入の低い人ほど「手厚く」もらえるワケ|東洋経済オンライン

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