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2021.11.11

「適応障害」なりやすい人・なりづらい人の特徴|「軽い不調」と見過ごすのは絶対NGな理由


適応障害をなめてはいけない(写真:taa22/iStock)

適応障害をなめてはいけない(写真:taa22/iStock)

「適応障害」という精神科の診断名を耳にしたことのある人は多いのでは。

女優の深田恭子さんが今年5月に適応障害で芸能活動休止を発表しましたが、9月には現場復帰されました。スポーツ選手や著名人でも、しばしば適応障害と診断されたという話をニュースで聞きます。

では「適応障害」とは、どんな病気のか? 「軽症のメンタル疾患」という印象ですが、実は放置したり、軽んじたりすると、たいへんなことになる可能性があるのです。

精神科の「とりあえず、適応障害」の危険

理由1:適応障害は「暫定診断」の可能性がある

内科の診断は、血液検査、レントゲンやCT検査など、客観的な検査データをもとに診断されます。しかしながら、精神科には、直接、診断に結びつくような科学的な検査はなく、「問診」と「観察」で診断していくことになります。

初診時に患者さんから、できるだけ詳しく話を聞くのですが、診察時間としては1時間くらいでしょうか。たった1回の診察で、あらゆる症状を根掘り葉掘り聞き出すことは不可能です。また、患者さんも、初対面の医師に対して、心をすべてオープンにすることはありません。例えば「死にたい」と思っても、それをいきなり最初から打ち明ける人は少ないです。

精神科の診断を正しく行うには、何ヵ月も観察する必要があります。「診断がわからないと治療できないじゃないか」と思うかもしれませんが、精神科では「病名診断」でなく、「状態診断」で治療していきます。

今の状態がどういう状態か? 「うつ状態」であれば、抗うつ薬を投与し、「不安状態」であれば、抗不安薬を投与する。そうした治療の効果、薬への反応も考慮しながら、数ヵ月治療、観察していくと、正しい診断にたどりつくのです。

しかしながら、明日から会社を休むためには、診断書が必要です。なので、初診時に暫定的に「診断名」を書く必要があるのです。その場合、書きやすい診断名として適応障害や、状態名である「うつ状態」なとが多用されます。

統計による「外来で精神科治療を受けている人のうち、適応障害を主診断とする人の割合は、およそ5〜20%である。病院での精神科コンサルテーションでは適応障害が最も多い診断名で、しばしば50%に達する」(医学書院『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル」P285より)と言います。

この「50%」というのは、おそらく暫定診断を含んでいるのでしょう。「とりあえず、ビール」ではありませんが、「とりあえず、適応障害」で診断書が出されることが多いのです。

適応障害は精神科の定番の診断基準「DSM-5」によると、「はっきりと確認できるストレス因に反応して、ストレス因の始まりから3ヵ月以内に情動面、行動面の症状が出現」する、と書かれています。

わかりやすく言うと、「明らかな原因があって、最近、心や体の調子が悪くなった」という疾患です。具体的にどのような症状を呈するかについての規定はないので、「うつ状態」でも「不安状態」でも、いろいろな症状に適用可能。つまり、非常に使いやすい診断名ということになります。

適応障害をなめてはいけない

適応障害に限りませんが、精神科において初診時に出される診断名は、ほとんどの場合「暫定診断」です。初診の所見に基づき、暫定的に診断された診断名なので、それで一喜一憂するものではありません。

しかしながら「なんだ、適応障害か。あまり心配ないな」と自己判断して、処方された薬を飲まなかったり、通院をやめてしまうなど軽視するのは禁物です。その後に症状が著しく悪化するということもありえます。

理由2:実は重たい病気である

うつ病の診断基準には、9個のうつ症状のうち「5つ以上が、同じ2週間の間に存在する」という基準があります。

仮にあなたが「抑うつ気分」「睡眠障害」「食欲低下」「疲労感」「集中力低下」など、典型的なうつ症状を5個以上認めたとしても、調子が悪くなったのが「1週間前」からであれば、「うつ病」と診断されることはないのです。その場合、「適応障害」と診断されるかもしれません。

しかし、1週間後にもう一度受診して、同じ症状か続いていたとしたら、今度は「2週間」続いているので、「うつ病」の診断基準に合致するのです。精神疾患の診断基準は、このように「症状の個数」や「持続期間」が明記されているものが多いのですが、そこに当てはまらないものはとりあえず「適応障害」と診断されることがあります。

名医だからといって正しい診断ができるわけではなく、最低でも数週間。できれば、何ヵ月か観察しないと、正しい診断ができないのです。ですから、最初「適応障害」と診断されても、実はもっと「重たい病気」である可能性もあります。

理由3:原因に対処しないと治らない

適応障害というのは、原因(ストレス因)に対する不適応反応と考えられます。原因に対して、それをうまく処理できずに、ストレスを増やしてしまい、結果としてメンタル的な不調や体調不良が現れます。つまり、原因があるから結果が出るのです。

それゆえ原因やストレス因が取り除かれると、すぐに良くなる場合が多いです。逆を言うと「原因が取り除かれないと、なかなか良くならない」ということでもあります。

例えば、新しい上司が赴任してきたとします。彼は威圧感のある押しの強いタイプ。細かいことをガミガミ言われたのが原因で、1ヵ月後に「気分の落ち込み」や「意欲の低下」などが現れ、医者からは適応障害と診断されました。

その上司との人間関係が原因だとしたら、別の上司に代わるか、あなたが別の部署に転属でもしないかぎり、そのストレス因は取り除けないということです。あるいは、その会社を辞めるか。いずれにせよ、原因を取り除くのは、簡単ではないと思います。

適応障害は、原因を取り除くことができれば、短期間でスッキリ治ることが多い。しかし、原因について適切に対処していかないと、長引いたり、症状が悪化することも充分にありえるので、注意が必要です。

大事なのは「レジリエンス」

理由4:適応力を高めないと、何度も繰り返す

適応障害は、ストレス因に対する不適応反応です。つまり、ストレスに上手に対応できる人は適応障害にはなりづらいとうこと。

例えば、威圧的な上司が赴任してきた場合。同じ部署に15人働いているとして、メンタル不調を起こすのは1人だけ。他の人も同じストレスを受けているはずなのに、まったく大丈夫な人もいます。一体なぜでしょう?

それは、「適応力」「順応力」が高いからです。レジリエンス(ストレスをやりすごす力)が高いとも言われます。今回、あなたが「上司のせいで適応障害になった」としましょう。しかし会社を辞めて別な会社に転職できたとしても、そこの上司とまたうまく行かない可能性があります。レジリエンスを高めないと、何度もメンタル不調を繰り返すかもしれません。

適応障害は、非常によくある診断名です。仮に適応障害と診断されても、深刻になる必要もないし、落ち込む必要もありません。しかし、軽く考えすぎるのもよくない。

どう対応するのか、主治医を信頼し、主治医とよく相談してほしいと思います。

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提供元:「適応障害」なりやすい人・なりづらい人の特徴|東洋経済オンライン

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