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2021.11.05

人生100年時代を見据える人が採るべき5つの行動|「ライフシフト2」が伝える「本当に大切なもの」


長く移行の多い人生において欠かせないこととは?(写真:adam121/PIXTA)

長く移行の多い人生において欠かせないこととは?(写真:adam121/PIXTA)

本書では、テクノロジーが急速に変化するなかで長い人生を送る私たちにとって、健康、スキル、人生の目的、雇用、人間関係を維持することがいかに重要かを強調した。私たちがそのような生き方を実践するには、もっと柔軟な働き方とキャリアの道筋を選べる必要がある。こうした側面で日本社会に大きな変革が求められていることは、以前から指摘されていたし、これまでに進展もあった。それでも、長寿化の進展とテクノロジーの進歩がもたらす試練に対処するにはまだ十分とは言い難い。しかし、今回のパンデミックが変革を加速させる可能性があると、私は考えている。(「日本語版への序文」より)

長寿社会を生き抜くための指南書である2016年のベストセラー『LIFE SHIFT』の続編『LIFE SHIFT2: 100年時代の行動戦略』(アンドリュー・スコット、リンダ・グラットン 著、池村千秋 訳、東洋経済新報社)の冒頭で、著者のひとりであるアンドリュー・スコット氏はこう述べている。

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パンデミックが変革を加速させる3つの理由

パンデミックが変革を加速させるという予測を裏づける理由は3つ。

第1は、新型コロナが社会のあり方を変革させたことで、これまでの社会に根づいていた“現状維持”の力が弱まったこと。つまり、そのぶん変革を推進させやすくなったわけだ。

第2は、現在の日本には経済成長が強く求められているということ。いうまでもなく、コロナ対策によって政府の債務が膨張し、飲食や観光などの主要産業が大きな打撃を受けたためだ。したがって、長寿化の進展とテクノロジーの進化を経済成長の原動力に転換すべきなのである。

そして第3が、パンデミックの“機会”としての機能性だ。あらゆる意味において変化を加速させたパンデミックは、個人、企業、国にとって、将来のリスクへの対応力を試すストレス・テストの役割を果たし、(もちろん結果論だというべきだが)変化に適応するための学びを提供したという考え方である。

さらにいえば、スコット氏は日本が平均寿命を大きく伸ばしたことをも評価している。今回のパンデミックで私たちは健康の重要性を実感させられたが、だからこそ、長寿化の点においては、日本が成し遂げた進歩を称賛すべきだというのだ。

長く生き続ける、同時に高い生産性を保ち続けるためには、経済のあり方を大きく変えなければならない。そのペースがどの国よりも速い日本は、長寿化と健康の改善を経済成長に結びつけ、「長寿の配当」を経済面でも獲得する必要があるということだ。

「長寿の配当」を実現するには、新しい人生のあり方を構築することが求められる。人々が長い人生を金銭面で支えるために、長期の職業人生を送れるようにし、健康な人生を生きるために、柔軟な働き方とキャリアの道筋を選べるようにする必要がある。具体的には、人々がスキルを錆びつかせず、アップデートする機会を用意し、子どもと老親の世話をする時間を確保できるようにしなくてはならない。ひとことで言えば、本当に大切なものを重んじて生きるために、バランスの取れた生き方を実践できるようにすべきなのだ。(「日本語版への序文」より)

いまこそ考えるべきは、この「本当に大切なもの」という部分の本質ではないだろうか? 少なくとも、個人的には強くそう感じる。

人間の本質に根ざした3つの要素

本書において注目すべきは、「物語」「探索」「関係」という3つの要素に焦点が当てられている点だ。いずれも人間の本質に根ざしたものだという。

「物語」とは文字どおり、自分の人生の物語(ストーリー)を紡ぎ、その道筋を歩むこと。それは人生に意味を与え、生きていくうえでさまざまな選択を行う際の手引きになるようなものでなくてはならないという。具体的には、以下の問いに答える必要があるそうだ。

「私はどのような仕事に就くのか」

「そのために、どのようなスキルが必要になるのか」

「どのようなキャリアを築くのか」

「老いるとはどのような経験なのか」

人生の期間が長くなり、しかも移行と移行の間隔が短くなれば、必然的に新しい人生のストーリーが必要となる。
具体的に言えば、3ステージの人生ではなく、マルチステージの人生が当たり前になるだろう。この変化は、「仕事とは何か」「どのような働き方をするのか」「どのようなキャリアの道筋を描くのか」「老いるとはどのようなことなのか」といった問いに対する答えを根本から変える。(58ページより)

(筆者注:3ステージの人生とは、「教育を受ける段階〜仕事に携わる段階〜引退生活を送る段階」からなる従来的な人生の方向性。そこからマルチステージへと移行することは、本書において重要な意味を持つ)

「探索」とは、学習と変身を重ねることにより、人生で避けて通れない移行のプロセスを成功させること。答えるべき問いは以下のとおりだ。

「長寿化によりキャリアの選択肢が広がるなか、どのように選択肢を検討するのか」

「そのために必要なスキルは、どのようにして身につけるのか」

「どのような変化を試み、これまでより多くの移行を経験する人生をどうやって歩んでいくのか」

人間は、学習と変身を目指す動物と言えるだろう。今後数十年の間、私たちが社会的開拓者として取り組むべき魅力的な問いが続々と浮上してくる。それに、人生で経験する移行の回数が増えるのに伴って、探索と学習をおこない、新しいスキルを習得することの重要性が高まる。新しい行動を実験することへの抵抗感もなくす必要がある。(59ページより)

「関係」とは、深い絆を育み、有意義な人間関係を構築して維持すること。以下の問いに答える必要があるという。

「家族のあり方が変わりつつある状況に、どのように対処するのか」

「子どもの数が減り、高齢者の数が多くなる世界は、どのようなものになるのか」

「世代間の調和を実現するために、私やほかの人たちには何ができるのか」

人は他人との関係を通じて、帰属意識をいだき、自分が評価されているという感覚を味わえる。人は、愛し、愛されるとき、自分が幸せで、大切にされていて、尊重され、理解されていると感じられる。逆に、ほかの人との関係を築けない場合は、拒絶されたように感じ、他人に対する信頼も弱まる。その結果、孤独と寂しさを感じ、不安が高まる。(60ページより)

5つの主要なメッセージ

人生が長くなっていく反面、その人生で多くの移行を経験するようになる結果として、1つひとつの活動の期間やステージが短期化する。著者らによれば、それが本書の主要なメッセージだ。そして、そのような変化を前提にすると、次の5つの行動をとることが重要になるという。

(1)先手を打つ

いうまでもなく私たちはいま、大きな変化の時代を生きている。それは、変化の影響から逃れることのできる人は存在しないということを意味するだろう。しかも、そうした変化に対する責任は、ますます個人にのしかかるようになっている。だからこそ、いますぐ行動を起こして先手を打つべきだということだ。

(2) 将来を見据える

いま何歳だったとしても、私たちに残されている人生は、過去のどの世代よりも長いということになるに違いない。したがって今後は、未来を重んじた選択をし、先々に大きな影響をもたらす行動を慎重に選ぶ必要がある。

(3) 「ありうる自己像」を意識する。

人生が長くなれば多くの移行を経験することになり、その結果、「ありうる自己像」の選択肢は大きく広がることになる。そこで重要なのは、その恩恵に浴するために、それらの選択肢をじっくり検討し、選択肢を早く閉ざしすぎないこと。

(4) 可変性と再帰性を意識する。

どのように年齢を重ね、どのように人生を構成し、どのように時間を割り振るかは、画一的に決まったものではなくなると著者らはいう。人生の可変性が高まることにより、いま取る行動は再帰性を帯びるようになるのだ。すなわち、現在の自分の行動が、将来の自分に返ってくるということ。いいかえれば、将来どのように老い、どんな将来の選択肢を手にするかは、いま、どのように行動するかによって決まるのである。

(5) 移行を受け入れる

自発的な移行であれ、不本意な移行であれ、人生を大きく変えることはときに難しいものだ。今後、そうした移行の機会がますます増え、移行の経験がマルチステージの人生の節目になるという。

これらは個人の行動指針だが、人生を通して人間としてどのくらい花開けるかは、他の人たちとの関係にも大きく左右される。人はひとりでは社会的開拓者になれないからだ。そうでなくとも、人生において人との関係が大きな意味を持つことは間違いない。

みんなで力を合わせて変革を

しかも、あるべき人間関係は放っておいて生まれるようなものではないから、互いに対して責任を負い、信頼関係に基づいたオープンな会話を重ねる必要があるわけだ。

また当然ながら、家庭をはじめとするさまざまなコミュニティーで、世代間の良好な関係を育むことは非常に重要だ。さらには長く移行の多い人生においても欠かせない要素として、生涯にわたる人間関係を織り込むことも不可欠である。

さらにいえば著者は、みんなで力を合わせ、政府や企業や脅威・危機感に変革を求めるべきだと主張する。

変化は容易でなく、技術的発明に社会的発明が追いついていないために、さまざまなリスクが生まれることは間違いない。しかし、その一方で、私たちは空前のチャンスを手にしてもいる。これまでになく長く生きられるようになって、自由が広がり、選択肢も増えつつある。新しい選択肢を前にすると、不安を感じるかもしれない。それでも、私たちが個人のレベルと社会のレベルで賢明な選択をすれば、より健康に、より長く、より充実した人生を送れる可能性が出てくる。(327〜328ページより)

既存の社会的規範は崩壊し始めたかもしれないが、新たな長寿時代が内包する可能性に期待をかけることができるのだ。

すぐそこにいそうな人たち

なお、本書の説得力を際立たせている要因のひとつが、随所に登場する架空のキャラクターたちである。

たとえば20代半ばの日本人カップルであるヒロキとマドカは、これからの人生を見据え、親の世代とは違う新たな生活様式を見つけ出したいと考えている。

インドのムンバイで専門職のフリーランスとして働くラディカは、「ギグ・エコノミー」がもたらす自由を満喫しているが、今後の人生で厳しい選択が待っていることにも気づいている。

ロンドンで暮らす30歳のシングルマザーのエステルは、昼は高級スーパーのレジ係のアルバイトをし、夜は老人ホームで働いている。そのため、安定した正規雇用の職に就くことを望んでいる。

アメリカ・テキサス州ダラスに住むトムは、40歳のトラック運転手。妻と、すでに成人した息子と共に暮らす。注目すべきは、彼が自動運転車の進化に目を向け、新たなテクノロジーが自身の仕事にどんな影響を及ぼすのかについて考えている点だ。

オーストラリアのシドニーで暮らすインは、55歳の会計士。パートナーとは離婚しており、先ごろ解雇を言い渡された。携わっていた業務が自動化され、年齢と職歴に見合う給料を支払えないと判断されたからだ。自分ではまだ何年も生産的な職業生活を送れると思っているが、現実との折り合いがついていない。

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『LIFE SHIFT2(ライフ・シフト2):100年時代の行動戦略』 クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします

クライブは、イギリスのバーミンガム近郊に住む71歳の元エンジニア。65歳で引退し、妻や4人の孫たちとの日々を楽しんでいるが、お金の問題が気にかかるため仕事に復帰したいと考えている。また、その一方で、地域コミュニティーに携わりたいとの思いも抱く。

このような“すぐそこにいそうな人たち”の生き方や考え方、苦悩などが映し出されているため、読者はそれをわがことのように、あるいは知人の悩みを聞いているような感覚で受け止めることができるのだ。

また当然のことながら、それは最終的に各読者のこれからの生き方ともどこかで交差していくことになるのである。

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【あわせて読みたい】※外部サイトに遷移します

「コロナ後の生き方」に鈍感すぎる日本人の大問題

「稼ぎが少ない方が家事をするのは当然」の落し穴

日本人が「世界一、仕事が苦痛」と感じる根本理由

提供元:人生100年時代を見据える人が採るべき5つの行動|東洋経済オンライン

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