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2021.11.04

「繊細さん」も心がスーッと軽くなる僧侶の思考法|「気がつきすぎて疲れる人」を救う古代の知恵


「繊細さん」(HSP=Highly Sensitive Person)とは、生まれつき敏感な人のこと。ほかの人が気づかない細かいことに気がつき、深く考える性質を持っています(写真:Graphs/PIXTA)

「繊細さん」(HSP=Highly Sensitive Person)とは、生まれつき敏感な人のこと。ほかの人が気づかない細かいことに気がつき、深く考える性質を持っています(写真:Graphs/PIXTA)

私たちはつい、人の目を気にしすぎたり、自分よりも他人を優先してストレスを感じたり、無理を重ねて疲労困憊してしまう。では、どうすればより自分らしく、肩の力を抜いて生きられるのだろうか?

4000万人ものSNSフォロワーを誇る作家、ポッドキャスターのジェイ・シェティは、僧侶となるべく修行を重ねた経験をもとに、自分らしく生きるためのメソッドを紹介し、世界中から熱狂的な支持を得ている。

世界30カ国以上で刊行され、ニューヨーク・タイムズ・ベストセラー1位ともなり、8月に日本語版が刊行されたシェティの著書、『モンク思考』。

今回、『「繊細さん」の本』の著者で、HSP専門カウンセラーの武田友紀氏に話を聞いた。

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繊細さは生まれつきの気質

HSPとは、アメリカの心理学者エレイン・アーロン博士が提唱した心理学上の概念で、生まれつきとても敏感な人のことです。ほかの人が気づかない細かいことにもよく気づき、深く考える性質を持っています。私はHSPを親しみを込めて「繊細さん」と呼んでいます。

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繊細さんたちの性質は、これまで「神経質」「考えすぎ」などと言われ、「治すべきもの」と認識されてきました。しかし、アーロン博士の調査により、繊細さは性格上の問題ではなく、生まれつきの気質であり、脳の神経システムに違いがあることがわかってきたのです。

アーロン博士によると、性別や国籍に関係なく、5人に1人は「繊細さん」だそうです。近年は、職場で悩みを抱えて、ネットなどで調べ、自分はこれに当てはまるのではないかと気づいて相談にいらっしゃる方が増えています。

しかし、繊細な気質と生きづらさはイコールではありません。繊細さんでも元気に働いている方がたくさんいますし、困っていなければ、自分が繊細さんだと気づく必要もないと思います。ただ、労働環境が悪くなり、非正規雇用が増えるなど、自分が生き残れるかどうかわからないという社会環境で、繊細さんか非・繊細さんかを問わず、悩む人も増えているように思います。

安価なものを大量に提供するという社会の流れのなかで、職場には余裕がありません。スピードも速くなり、マルチタスクが増えました。

コロナ禍でテレワークが広がり、残業が減る、休まざるをえない状況になるなど、社会のスピードが落ちました。すると、緊急事態宣言が明けてから「元のスピードに戻れない」という話を聞く機会が増えたのです。

つまり、もともとが速すぎて、みなさん無理をしていたわけですね。多くの方が、このことに気がつきはじめたように思います。

一方、家にこもってニュースやSNSをみる時間が増えたこともあり、不安も高まりやすくなっています。もともと不安とは、先のことを考えている状態です。過去をもとに未来をシミュレーションし、「こうなったらどうしよう」と悩むんですね。これはすべて頭が考えることです。「心が落ち着かない」という表現がありますが、本当に落ち着いていないのは、心ではなく頭です。ひっきりなしに考え続けている状態なのです。

「脳」を休ませるために今すぐできること

現代は、ネットニュースにSNS 、メールなど、多くの情報にさらされており、脳にはその情報を消化する時間が必要です。繊細さんの場合、深く考えるという性質がありますから、つねに大量の情報を処理しています。ひっきりなしに情報を取り入れていると、交感神経が活性化し続けます。ずっと考え事をしている状態になり、眠ってもうまく休めない状態になってしまいます。

武田 友紀(たけだ ゆき)/HSP専門カウンセラー。自身もHSPである。大手メーカーで研究開発に従事後、カウンセラーとして独立。HSPの心の仕組みを大切にしたカウンセリングとHSP向け適職診断が評判を呼び、全国から相談者が訪れる。著書に『「繊細さん」の本』(飛鳥新社)、『繊細さんが「自分のまま」で生きる本』(清流出版)などがある(写真:本人提供)

武田 友紀(たけだ ゆき)/HSP専門カウンセラー。自身もHSPである。大手メーカーで研究開発に従事後、カウンセラーとして独立。HSPの心の仕組みを大切にしたカウンセリングとHSP向け適職診断が評判を呼び、全国から相談者が訪れる。著書に『「繊細さん」の本』(飛鳥新社)、『繊細さんが「自分のまま」で生きる本』(清流出版)などがある(写真:本人提供)

意識的して副交感神経を働かせ、交感神経を休める必要があります。そのためには、散歩をするのもいいですし、野菜を切る、洗濯物をたたむなどの単純な作業も効果があります。マインドフルネスや瞑想も、脳を休めることにつながっています。

カウンセリングでも、「周りに振り回される」という方には、ネットの閲覧時間を減らし、ニュースを見るのをやめるなど、情報から離れましょうとお伝えすることがあります。情報から離れると、少し落ち着くんですね。

SNSの使い方にも工夫が必要です。ホーム画面に滞在していると、次から次へと情報が飛び込んできて、頭が忙しくなります。本当につながりたい人とだけつながる、読んで元気が出る投稿だけを選んで見るなど、情報を絞ることをおすすめしています。

カウンセリングには、「いまの会社が自分に合っていないのはわかる。でも、自分が何をやりたいのかがわからない」という方が多くいらっしゃいます。

このとき、自分のやってきた仕事のなかで「ここが嫌だった」という点ばかりを見ても、自分に合う仕事を見つけることができません。

カウンセリングでは「これまでの仕事で、つい集中してしまう業務は何ですか」「漠然とでもいいので、この仕事ができたらいいなと思うものはありますか」といった質問をして、相談者さんと一緒に、情熱の湧く対象を見つけていきます。

繊細さんからは、「自分の感性を生かして仕事したい」という言葉をよく聞きます。この場合も、過去の経験にヒントがあります。これまでの業務だけではなく、学生時代のアルバイトやプライベートも含めて、やりがいを得られたことや、集中していたこと、つい考えてしまうことなどを思い出していただくんです。充実した経験のなかに、その人ならではの感性が働いているものです。質問を通して、自分ならではの感性に気づいていただくようにしています。

自分の本当の気持ちを確認する

『モンク思考』には、見つける、止まる、切り替えるといった言葉が何度も出てきますが、これは、まさに「繊細さん」に必要な感覚です。

繊細さんは、周りの人のニーズを感じ取り、半自動的に動くことがよくあります。相手の状況にもよく気づくので、「そろそろお茶を飲みたいんじゃないかな」「忙しそうだから、やっておいてあげよう」と先回りして動き、それらが積み重なって、自分ばかりが忙しい状態に陥ってしまうのです。

ですから、気づいたことに半自動的に応答するのではなく、一度立ち止まって、自分はそれをやりたいのか、やる余裕があるのかを考えるとよいでしょう。

たとえば、同僚の仕事が大変そうだと気づいたとき、「手伝おうか」と声をかける前に一呼吸おいて、「本当に手伝いたいのか、手伝えるだけの余裕があるか」を考えるのです。

『モンク思考』には、押し流されるのではなく、「見つける」「止まる」「切り替える」という行為によって、それが自分の価値観なのかどうかを具体的にチェックするエクササイズも紹介されています。

これらは、私がみなさんにお伝えしていることとよく似ています。古代からの僧侶の教えも、現代のカウンセリングやキャリアコンサルティングも、使っている言葉は違えど、根底は同じことを伝えているのかもしれませんね。

拙著『繊細さんが「自分のまま」で生きる本』(清流出版・2019)に詳しく書いていますが、繊細さんは、周りのニーズをくみ取りやすいだけに、会社でも頑張り続けて体調を崩してしまうことがあります。

そういうときは、まずは「休む」ことが必要です。これは『モンク思考』でいう、現状を「手放す」にあたります。

休むことへの焦りや罪悪感が出ることもあるのですが、自分に合う仕事にたどりつくためにも、しっかり休むことが大切です。自分のペースで好きなように過ごしながら、何がうれしくて、何が悲しいのか、自分の感覚を思い出していく必要があるのです。

目の前の仕事に追われていると、いつのまにか会社の価値観と同化してしまいます。会社の価値観が自分の価値観を侵食してしまうと、「嫌だ」「疲れた」という感覚さえぼやけてきます。ぼんやりとしたつらさを感じながら何年間もずっとそのまま、という状態になってしまう。

自分に合う仕事をみつけるには、自分本来の感覚を取り戻す必要があります。そのためには、立ち止まって休む時間が必要なんです。忙しいまま転職活動をすると、どうしても、いまの会社に求められていることが染みついていて、本心からそれをやりたいのかを見分けにくい。

仕事を休めない場合もありますので、そんなときは少しでも残業を減らしたり、就業中の仕事のペースを落として頑張りすぎないようにするなど、仕事と心の距離をとることをおすすめしています。

いまの仕事が合わなくて変えたいとき、必要なのは、「つらい」とはっきり認識し、行き詰まり切る、ということです。「嫌だけど何とかなっている」という時が、いちばん動けないものです。「こうすべき」という思考の奥にある、「もう嫌だ」という本音をつかむことが重要で、カウンセリングでも大切にしています。

本音をつかむには、空いている時間をみつけて、好きなことをするといいですよ。たとえば、週末に、好きだった手芸を再開してみるといったことです。すると、合わない環境で過ごす時間がどれだけ負担になっているかがわかります。「もうこんなのは嫌だ」とはっきり自覚することで、辞める踏ん切りがつく、という変化も起きます。

これまでの価値観と距離をとり、好きなことをする時間をとるなかで、「そう言えば、自分はこれが好きだったな」「昔から文章を書くのが得意だったっけ」「人を応援したい気持ちがあるな」など、本来の自分を思い出していきます。休んで、遊んで、自然体の自分が出てきた段階で転職活動をすると、自分に合う仕事をみつけやすいです。

ネガティブ人間との接し方

『モンク思考』には、繊細さんに活用していただきたいことがたくさん書かれています。

ネガティビティについての章で紹介されていた、「ネガティブ人間1人につき、ポジティブ人間3人と付き合うようにする」という方法など、現代らしく取り入れやすいと思いました。

「ネガティブ人間と付き合うのはやめましょう」と言われても、現実には、そうはいかないこともありますよね。同居している親御さんなど、ご家族が愚痴ばかり言う場合もあるからです。

そんなときでも「ポジティブな人間3人といるようにする」という考え方は、取り組みやすいと思います。繊細さんの場合は、SNSで共感できる人を3人見つけるなどもいいですね。ブログやツイッターで「#繊細さん」「#HSP」など、ハッシュタグで検索すると仲間を見つけやすいです。同じ悩みを持った人とつながり、コメントのやりとりに励まされているという繊細さんもいます。

繊細さんは、相手の気持ちを受け取るのが上手な人が多いんですね。むやみに否定せず、寄り添って話を聞くという姿勢を持っている。すると、困っている人や、愚痴を言う人が寄って来やすいという面があります。「これ以上は聞けない」という線引きなしに受け入れていると、相手に依存されてしまうことがあるんです。

延々と愚痴を言い続けたり、相手に強く依存する方は、根っこにトラウマを抱えている場合があります。そういう相手に1人で対応し続けるのは難しいものです。

『モンク思考』では、そういう人を「溺れかけている人だ」と考え、「ライフガードを呼びに行こう」と書かれていますね。もしそういう相手に出会ったら、「カウンセラーが必要なのかもしれない」と考え、自分一人ですべて背負おう、助けようとは考えないことが大事です。

もっとわがままになろう

『モンク思考』では、奉仕が重要視されていますが、繊細さんは、基本的には奉仕の精神がある人々です。周りの人のことをよく考えますから、自然と奉仕の方向へ進んでいくのです。

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『「気がつきすぎて疲れる」が驚くほどなくなる「繊細さん」の本』(飛鳥新社) クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします

ただ、奉仕は本来、自分が元気でなければできないものです。自分をないがしろにして相手のために尽くすと、それは奉仕ではなく自己犠牲になってしまいます。本書に書かれている奉仕とは違い、我慢がたまりますから「あんなにやってあげたのに」と見返りが欲しくなるのです。

ですから私は、繊細さんには、「もっとわがままになろう、もっと自分のために生きよう」とお伝えしています。元気であれば、自然とまわりに目が向く人々なのですから、奉仕の前に、まずは自分のための時間を持つことです。

自分を大事にできてはじめて、本書に書かれている本当の意味での「奉仕」に行き着けるのだと思います。

幸せな道を見つけるには、立ち止まることが大切です。そのためには、頭の思考に振り回されず、体(五感)で感じる時間が必要です。ぜひスマホをオフにして、ヨガをしたり、洗濯物をたたんだり、散歩をしたりと、頭を使わないことをやってみてください。

情報から離れて頭を休め、「自分以外の誰か」の価値観から距離をおく。そうすることで自分本来の感覚が戻ってきます。感覚を取り戻し、ニュートラルな状態で物事を見ることで、自分を幸せにする選択をしやすくなりますよ。

(構成:泉美木蘭)

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提供元:「繊細さん」も心がスーッと軽くなる僧侶の思考法|東洋経済オンライン

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