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2021.10.08

FIREを目指す人が知るべき「3つの不都合な真実」|38歳で1億円手に入れて引退、後悔した人も


「FIRE」で人は本当に幸せをつかめるのか?(写真:PeopleImages/iStock)

「FIRE」で人は本当に幸せをつかめるのか?(写真:PeopleImages/iStock)

最近、ビジネスパーソンの間で「FIRE」が注目されています。FIREとは「Financially Independence, Retire Early」の頭文字で、若いうちに経済的に自立し、仕事を辞めることです。

ネットや雑誌では、「30代で億り人(資産1億円)になってリタイアし、南の島でのんびり暮らしてます」といった成功事例が紹介されています。また、フィナンシャル・プラナーや証券会社によるFIRE実現のノウハウ指南もよく目にします。

ただ、夢のような話には落とし穴が付きもの。そんなにうまくFIREが実現するものでしょうか。今回は「FIREを目指す人が見落とす3つの盲点」を紹介します。

「年率4%」の盲点

早期退職するには、まず経済的自立を実現する必要があります。資産がどのくらいあれば実現可能なのでしょうか。ここでフィナンシャル・プラナーなど専門家が提唱するのが「4%ルール」です。

「4%ルール」とは、リタイア後の資産運用で4%の利回りを確保し、生活費など年間支出を運用資産の4%未満に抑えることで資産を取り崩すことなく生活できる、という考え方です。

つまり、年間支出の25倍の資産があればFIREできるというわけです。年間支出が200万円なら5000万円、年間支出が400万円なら1億円の資産が必要となります。

ここで1つ目の盲点は、「本当に4%で資産運用できるのか?」ということです。定期預金や国債の利回りはほぼゼロなので、4%の利回りを確保するには株式投資(などハイリスクの資産運用)をする必要があります。

過去の日経平均の複利の年平均利回りは、以下の通りです。

直近10年(2010年末~2020年末)10.36%
直近20年(2000年末~2020年末)3.50%
直近30年(1990年末~2020年末)0.47%

直近10年の数字を見ると、「4%くらいは楽々行けるでしょ」と思いますが、直近20年、直近30年を見ると、4%は高いハードルです。

しかも、日経平均先物は、プロの機関投資家が大半の取引をしており、この利回りはプロの平均的な成績と言えます。4%という利回りは素人投資家がプロと戦って勝つことを意味し、現実的ではありません。

なお、列挙した利回りは税引き前ベースで、そこから所得税や取引手数料を差し引かれるので、実質の利回りは下がります。

さらに、私たちは生活費の支出や非常時に備えて預金を持つ必要があり、資産をすべて運用に回せるわけではありません。「俺は6%で運用しているよ!」という凄腕の個人投資家も、所有資産5000万円のうち6割の3000万円を株で6%で運用しているなら、所有資産に対する利回りは、3.6%(=6%×6割)になるわけです。

「預金取り崩しの恐怖」に耐えられますか?

2つ目の盲点は、「預金取り崩しの恐怖」です。

仮に資産運用の才能があり、4%の利回りを実現できるとしても、それは長期間の平均の話。株は大きく値上がり値下がりするので、ときに利回りが4%を下回り、マイナスになります。つまり、株に投資している限り、生活費などの支出のために運用資産を取り崩すという場面が出てきます。

ここで、「逆にプラスのときもあり、平均ではプラスなんだから、マイナスになったら一時的に取り崩せば済む話」と言い切る専門家がいます。理屈はまったくその通りですが、おそらくこうした専門家は、預金取り崩しの恐怖を経験したことがないのでしょう。

私事ですが、20年前に会社員を辞めてコンサルティング事務所を開業したとき、なかなか受注が増えず、預金を取り崩す生活が7カ月くらい続きました。預金通帳の残高がだんだん減っていくのを見て、「俺はこのまま破産するのか……」と恐怖に身が震えました。妻からは「いつまでこんな生活が続くのよ」と非難され、一時的に夫婦関係も悪化しました。

幸い私の預金取り崩し生活は7ヵ月で終わりましたが、1989年にピークだった日経平均がバブル崩壊後の最安値を2009年に付けた通り、株価下落は5年、10年と続くことだってあります。よほど精神的にタフな人か、ずっと取り崩しを続けても問題ないくらい大きな資産を準備したという人でない限り、預金取り崩しの恐怖からは逃げられないでしょう。

以上2つの点から、専門家が提唱する「4%ルール」はかなり楽観的。保守的に「2%ルール」で年間支出の50倍の資産を用意するか、完全にリタイアせずセミリタイアで勤労収入を獲得するほうがまだ現実的です。

3つ目の盲点は、「早期退職して幸せなのか」という点です。何に幸せを感じるかは人それぞれですが、FIREが「必ずしも幸せにつながらない現実」を直視する必要があります。

松園亮さん(仮名、独身)は、父の遺産が入ったことと勤務先が上場して保有自社株が高騰したことで、1億円近い資産を手にしました。元々人付き合いが苦手だった松園さんは、職場の人間関係が悪化したことで会社勤めに嫌気がさし、38歳の時に思い切って会社を退職します。

四国に移住し、小さな農場を借りて、晴耕雨読の生活を始めました。しかし2年経った今、東京に戻るべきか悩んでいます。

「会社勤めをしていた時は、風光明媚な田舎でのんびり農作業する生活に憧れていました。しかし実際に来てみると、3カ月くらいで飽きました。いくら人付き合いが嫌いな私でも、1日中誰とも会話しないというのは、ちょっと耐えられません。東京に戻ってアルバイトでもして社会との繋がりを取り戻そうかと思案中です」

何かやりたいことがあるなら早期退職は幸せでしょう。しかし、松園さんのように「会社勤めが嫌だから」といった後ろ向きな理由で退職すると、「苦痛な会社を辞めて、もっと苦痛な生活が待っていた」という笑えない事態に陥ります。

FIREは目指さないほうがいいのか?

ここまで読んで、「日沖という書き手は、FIREにずいぶんと批判的だな」と思われたかもしれません。しかし、まったく逆で、私はFIREに大賛成です。会社員の皆さんには、ぜひFIREに挑戦してほしいところです。

今後、日本の会社員は賃金がなかなか上がらず、会社の経営が傾くと容赦なくリストラされます。公的年金は、財政難から支給開始年齢が70歳、75歳、80歳と繰り下げられ、支給額も削減される可能性も高いでしょう。

会社も国も頼れない状況で貧乏生活をしたくなかったら、早期退職するかどうかは別にして、若い頃から経済的自立に向けて資産運用を学んでおくことは損ではありません。

また、自分がやりたいことをやる(=やりたくないことをやらない)のが幸福な状態だとすれば、FIREの目標を立て、努力することで、人は幸福に近づけます。

いま多くの会社員は、幸福について考えることを避けています。たとえば「音楽の演奏活動に打ち込みたい」と願っても、会社勤務をしていては実現できないので、「できないことを考えても仕方ない」となります。そうすると、FIREに向けて資産運用などに真剣に取り組まないので、いつまで経っても夢は夢のままです。

ここで、「40歳までに1億円の資産を作ってFIREし、演奏活動に打ち込む」と目標を立てたら、目標に向かって懸命に努力するので、達成の確率が高まります(あくまで確率が上がるだけで、絶対ではありませんが)。もちろん、会社の仕事が面白いなら、リタイアせず好きな仕事を続けるというのも幸福な状態です。

20代・30代の若手ビジネスパーソンには、ぜひFIREの目標を立て、3つの盲点にくじけず着実に努力を続け、幸福を掴んでほしいものです。

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提供元:FIREを目指す人が知るべき「3つの不都合な真実」|東洋経済オンライン

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