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2021.10.01

「年下妻のいる夫」は年金を大幅加算できる「裏技」|夫の年金が500万円以上上乗せになるケースも


厚生年金に20年以上加入した人で、年下の65歳未満の配偶者がいれば加算される年金がある。意外にも高額な上乗せをしてくれる(写真:msv/PIXTA)

厚生年金に20年以上加入した人で、年下の65歳未満の配偶者がいれば加算される年金がある。意外にも高額な上乗せをしてくれる(写真:msv/PIXTA)

長引くコロナ禍の影響で、仕事のモチベーションが下がったという人が少なくないかもしれません。

筆者はファイナンシャルプランナーとして個人のお客様のライフプランについてご相談に乗っていますが、先日、玲子さん(49歳)から次のような悩みを打ち明けられました。

「夫の仕事に対する意気込みが、以前とは全然違うんです。そろそろ、老後の生活設計を考えておきたいのですが……」

玲子さんの夫、武夫さんは15歳年上の64歳。以前は「できるだけ長く働きたい」と考えていましたが、コロナによって仕事上の制限が多くなり、同時に、やりがいもなくなり、今では「早く辞めたい」と言い始めたそうです。

筆者はまず、武夫さんの年金の状況を拝見しました。すると、何歳まで働くかによって老後の生活が大きく変わることがわかりました。どういうことなのでしょうか?

働きながら年金を受給したい「64歳の夫」

実は、玲子さんが老後の生活設計について考え始めたのは今に始まったことではありません。1年前、武夫さんは65歳前に支給される厚生年金があることを知り、年金事務所に行きました。ところが、今は仕事で給料をもらっているので「年金が全額カットされる」と言われたのです。しかし武夫さんは高額所得者ではありません。低年金のために年金が全額カットされるというのです。

筆者が、武夫さんの厚生年金からカットされる金額を計算したところ、月2万円でした。武夫さんの厚生年金の受給額が毎月2万円以上あれば、一部でも支給されるのですが、実際はちょうど2万円しかないので、全額カットになってしまうのです。

武夫さんの厚生年金が月2万円しかないのには、理由があります。武夫さんが会社員になったのは48歳のときでした。厚生年金の加入期間が短く、しかもけっして高いとはいえない年収だったため、厚生年金が少ないのです。

年金事務所からは「60代前半と60代後半では年金カットとなる基準額が違いますから、65歳からなら支給されます」と説明を受けました。しかし、がっかりした気持ちは消えず、一方で仕方ないと思う気持ちもあり、武夫さんは割り切れなかったようです。そこにきてコロナの長期化で武夫さんは仕事に対するやる気を失い、玲子さんは、いよいよ本気で夫婦の老後について考え始めたようです。

「15歳下の妻」のおかげで大幅に加算される年金

玲子さんと武夫さんは年金事務所に行った際に、「65歳からの年金額」と「70歳からの年金額」を教えてもらいました。武夫さんは元気なうちはずっと働きたいと考えているものの、70歳を節目と考えていますし、玲子さんは年金を65歳より後に受け取ると受給額が増える「繰り下げ制度」を知っていたからです。

年金は1カ月受け取り時期を遅らせると、受給額が0.7%増えますから、70歳まで受け取りを遅らせると42%増額されることになります。しかし、70歳まで繰り下げたとしても、そもそも武夫さんの年金額が小さいので、金額的に大きなインパクトはありません。とはいえ、65歳からの年金額で生活していくのは厳しそうですから、できるだけ繰り下げを考えたいところです。

65歳の年金と70歳の年金を見比べて、玲子さんは「70歳からだと加給年金があるのですよね」と言います。加給年金とは厚生年金の家族手当で、厚生年金加入歴のある人が65歳になったとき、年下の配偶者や18歳までの子がいると厚生年金に上乗せして支給される年金です。

武夫さんの場合、15歳年下の玲子さんがいます。支給期間は玲子さんが65歳になるまで。加給年金の金額は39万円ですから、玲子さんが65歳になるまで毎年39万円が上乗せされ続けることになります。年金額の少ない武夫さんにとっては、非常にありがたい金額です。

加給年金は65歳からが支給対象ですが、武夫さんの場合、65歳では加給年金の記載はなく、70歳で加給年金が上乗せされています。これは、もう1つの支給要件である「厚生年金加入期間20年以上」を武夫さんが65歳時点で満たしていないためです。武夫さんが会社員になったのは48歳のときですから、65歳時点で厚生年金加入期間は17年です。3年足りないので、65歳からは支給されません。

65歳で仕事を辞めてしまうと加給年金は一切支給されないのです。玲子さんは「やっぱり70歳まで働かないといけないですよね。年金事務所では『仕事を辞めないと加給年金は支給されない』とも言われました」と不安そうな表情です。

しかし、加給年金をもらう目的であれば70歳退職にこだわる必要はありません。武夫さんは48歳で厚生年金に加入したので、68歳で加入期間が20年なります。68歳で仕事を辞めても加給年金は支給されます。武夫さんが68歳のとき、15歳下の玲子さんは53歳です。玲子さんが65歳になるまでに支給される加給年金の合計は39万円×(65歳−53歳)=468万円になります。

なお武夫さんは会社員になるのがやや遅かったので468万円ですが、普通に会社員となり年金を納めていたら、15歳年下の妻の場合は585万円(=39万円×15)上乗せになります。

「20年加入」達成しても、働き続けると受給できない

年の差夫婦というだけで468万円も年金が増えることがわかり、表情がぱっと明るくなった玲子さんですが、こんな疑問も浮かんできました。

「68歳で退職をしたら、ということですから、70歳まで働くと68歳からは加給年金を受け取れないということですか?」

現行の制度ではそういうことになります。厚生年金に加入すると老後の厚生年金も増えることになりますが、現在は、年金を受け取りながら働いても、増えた年金はすぐに受け取れない仕組みになっています。これは、年金情報の更新が退職したときや70歳になったときに行われるためです。

武夫さんの場合、働きながら65歳から年金を受け取り、68歳時点で厚生年金20年加入を達成したとしても、その情報が更新されるのは退職したときあるいは70歳のときです。よって、仕事を辞めないと68歳からは加給年金を受け取ることができません。

しかし、2022年から制度が改正され、仕事をしていても年金情報が更新されることになります。したがって、65歳以降年金を受け取りながら働いていても、働くことによって増やした年金を受け取ることができるようになります。

武夫さんの場合、65歳から年金を受け取りながら働いたとしても、68歳になった時点で、働いて増やした年金に加え、加給年金も支給されることになります。仮に、年金の受け取りを3年遅らせて68歳から受け取るなら、繰り下げによる年金増額分と、65〜67歳まで働いて増やした厚生年金分、さらに加給年金も受け取ることになります。

老後の働き方は年金受給とセットで考えよう

玲子さんは、武夫さんが70歳まで元気に働いてくれるだろうかと心配していましたが、もう少し短めの目標年齢ができたこと、年の差夫婦だからこそ加給年金支給期間も長いことを知り、気持ちがすっきりしたようです。武夫さんも68歳までという低めの目標ができたことで肩の荷が少し下り、モチベーションも上向きになったようです。

働き方と年金は深く関係します。働き方を考える際は、長い目で考えると思いますが、その際は年金もセットで考えてみてはいかがでしょうか。より自分にとって好ましい老後の設計ができるでしょう。働き方に対する迷いも消えるかもしれません。

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提供元:「年下妻のいる夫」は年金を大幅加算できる「裏技」|東洋経済オンライン

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