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2021.09.28

糖尿病を「太っている人の病気」と信じる人の盲点|知らぬ間に進行している「かくれ高血糖」の恐怖


痩せていても糖尿病になる可能性があります(写真:ペイレスイメージズ1(モデル)/PIXTA)

痩せていても糖尿病になる可能性があります(写真:ペイレスイメージズ1(モデル)/PIXTA)

糖尿病は決して、メタボ、肥満の人だけの病気ではないことをご存知でしょうか? 「痩せている人でも糖尿病になる理由」を、テレビでも活躍する話題の医師・池谷敏郎氏の新刊『健診・人間ドックではわからない!かくれ高血糖が体を壊す』より一部抜粋・再構成してお届けします。

『健診・人間ドックではわからない!かくれ高血糖が体を壊す』 クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします

たいして太ってもいないし、血糖値も高くない。糖尿病だなんて言われたこともない。そういう人でも、食後、ゆっくりとくつろいでいるあいだに体のなかでは血糖値が急激に上がり、血管を傷つけ、血管の老化を進めているかもしれません。

「かくれ高血糖」が大きな病気につながる

そんな「かくれ高血糖」の人が増えています。こちらのグラフを見てください。

出典:『健診・人間ドックではわからない! かくれ高血糖が体を壊す』(青春出版社)

出典:『健診・人間ドックではわからない! かくれ高血糖が体を壊す』(青春出版社)

体温や血圧が一日のなかで変わるように、血糖値も一日のあいだに変化しています。どんな人でも血糖値が上がるのが、朝食後、昼食後、夕食後という「食後」です。糖分を体内に取り入れれば、血糖値も上がるので、間食や夜食のあとにも上がっています。

ただ、その上がり具合は、人によってかなりの差があるのです。3つの折れ線グラフのうち、全体的に高いのが「糖尿病の人」、全体的に低めでゆるやかな山を描いているのが「健康な人」ですが、気になるのが食事のたびに一時的にグーンと上がってまた下がることを繰り返しているグラフです。こうした血糖値の急激な上がり下がりを「血糖値スパイク」または「グルコーススパイク」と言います。

このタイプの人は、健康診断で血糖値を測っても、ほぼ見つかりません。通常、健康診断では「前日の夜から何も食べないで来てください」と言われますよね。健康診断で測っているのは、空腹時の血糖値、あるいは「HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)」と呼ばれる過去1〜2カ月の血糖値の平均をあらわす値です。これらの値だけでは、「食後、血糖値がどうなっているのか」はわかりません。

食後に血糖値スパイクを起こしていても、食後2〜3時間のみ急激に上がってまた正常範囲に戻っていくので、空腹状態で血糖値を測ったら、健康な人と同じような結果が出るのです。

また、一日に何度か血糖値が高くなるとはいえ、ならせばそんなに高くはないので、HbA1cも引っかかりません。医者からは「ちょっと高めなので、食事と運動に気をつけましょうね」と言われて終わりでしょう。

ところがジェットコースターのように血糖値が上がったり下がったりを繰り返している人ほど、心筋梗塞や脳卒中といった大きな血管病を起こしやすいことが最近、ハッキリしてきました。

血管の壁の内側の細胞を、糖分の多い液体と糖分の少ない液体にかわるがわるつけて、血糖値スパイクが繰り返し起きている状態を人工的につくると、細胞のなかで活性酸素が大量に発生するということを、イタリアの研究グループが明らかにしたのです。この活性酸素ですが、よく「老化の元凶」と言われているのをご存じですか?

活性酸素は、呼吸で取り込まれた酸素が体内で活用される過程で発生するものなので、呼吸をしている限り、誰の体のなかでも必ずできます。なおかつ、活性酸素はふつうの酸素よりも物を燃やす力がパワーアップしているので、細菌やウイルスを撃退してくれるなど、免疫機能の一部としても働いています。

つまり、ある程度の量であれば体を守るために働いてくれる。ところが、増えすぎるとパワーを持て余して、正常な細胞まで傷つけてしまうのです。それが、老化の元凶といわれる所以です。

間違っていた糖尿病指導

さて、血管の内側で活性酸素が大量発生していたらどうなるのでしょうか?

まず「血管内皮」という血管のいちばん内側を覆っている膜が傷つけられます。その度に、傷ついた部分を修復するために免疫細胞が集まってきて、血管の壁に入り込み、やがて壁が分厚くなって弾力性を失ったり、血液の通り道が狭くなったりしてしまう。そうやって血管のいたるところで動脈硬化が進んでしまうのです。

さきほど紹介したグラフのように、食後2〜3時間だけ血糖値が急上昇・急降下する状態(血糖値スパイク)は、これまでは「糖尿病予備軍」とか「糖尿病の前段階」と言われていました。そして、「このままだと糖尿病になるから気をつけてくださいね」という指導が行われてきました。

つまり、「いまはまだセーフだけれど、このままだと糖尿病になるから危ないよ」という指導だったわけです。

糖尿病は、血液中のブドウ糖が全身の細胞に取り込まれずに血液中にあふれたままになっている状態のこと。ただし、糖尿病を発症しても初期には自覚症状はほとんどありません。

妙に喉が渇くとか、トイレの回数が増えるとか、食べてもやせるといった症状が出てきて「おかしいな」と思いはじめたときには、すでに血管の老化が進んでいて、網膜症や腎症、神経障害、脳梗塞といったさまざまな血管の病気(合併症)を引き起こしてしまうことが多いのです。

なぜ糖尿病は怖いのか?

血管の老化によって引き起こされるこれらの合併症こそが、糖尿病が恐れられる理由です。ところが、「かくれ高血糖」で血糖値が急上昇・急降下を毎日毎日繰り返している人は、糖尿病になる前からすでに血管の老化が進んでいます。

糖尿病で恐れられている血管病の発症に向かって、すでにスタートを切ってしまっているのです。

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血管病の代表が、心筋梗塞、脳卒中です。「血糖値スパイク=食後高血糖」が起こっている人は、たとえ空腹時の血糖値が正常であっても、心筋梗塞や脳卒中のリスクが高くなることが国内外の研究で明らかになっています。

たとえば、山形県舟形町の40歳以上の住民を対象に7〜10年間追跡調査を行って心血管疾患による死亡リスクを調べた研究では、食後高血糖がある人は、ない人に比べて心血管疾患による死亡リスクが高いことがわかりました。

一方で、空腹時血糖値のみが高い人は、正常な人とほぼ変わりませんでした。つまり、健康診断で測るような空腹時の血糖値よりも、健康診断ではわからない食後高血糖のほうが、血管病の発症や、それによる死亡リスクに深くかかわっていたということです。

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提供元:糖尿病を「太っている人の病気」と信じる人の盲点|東洋経済オンライン

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