2021.09.22
「メンタルが安定しない人」が言いがちな言葉4つ|無意識のうちについ自分を下げていませんか?
ちょとしたことで気分が沈むなど、心の浮き沈みが激しい人が口にしがちな言葉とは(写真:Claudia/PIXTA)
メンタルコーチングをした星稜高校野球部が甲子園決勝進出を果たし、女子スピードスケート髙木菜那選手は平昌五輪で2つの金メダル獲得するなど、メンタルコーチとしてビジネスとスポーツの両分野で実績を残してきた飯山晄朗氏。本稿では、『百年メンタル〜心の調子をキープする言葉の取扱説明書』の著者でもある同氏が、「心の浮き沈みが激しい」「メンタルが安定しない」人に見られる口癖について解説します。
『百年メンタル〜心の調子をキープする言葉の取扱説明書』 クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします
言葉遣いを変えて感情をコントロールする
「将来のことが不安で心が安定しない」「人間関係のストレスで心の浮き沈みが激しい」。最近はこのようなご相談を受けることが多くあります。こうしたメンタルに関する不安・不調を脱するカギは「自分の感情をコントロールする」術を知ることです。
私はメンタルコーチング歴15年、これまで2万人以上の方と向き合い、脳科学と心理学に基づいたトレーニングによって多くの方のメンタルを改善してきました。
メンタルトレーニングというと、「心を強く」というイメージをお持ちかもしれませんが、少し違います。私が専門とするメンタルトレーニングにおいて、最も重要なものは「感情をコントロールすること」であり、「心の安定」を最優先に目指すイメージです。
なんらかの状況において、必要以上にプレッシャーを感じるなど、感情がよくない方向に動いたときに、その感情をきちんとコントロールしてよい方向に導くことです。
結果を左右するのは、感情をコントロールする方法を知っているかどうか。そして、そのうえでトレーニングを積んで実際に感情をコントロールできるかどうか。それだけのことです。それは誰もができることであり、そうできている人について、周囲の人が「あの人は心が強い」「メンタルが強い」というふうに表現しているに過ぎません。
メンタルトレーニングで大事なことは、「心がよくない方向に動いたとき(動きそうなとき)の対処」です。では、そこへの適切なアプローチは何なのか。
私が長年のメンタルコーチングを通して確信している答えは、「言葉遣い」を変えれば、着実に好転していくということです。実際に、これまで徹底した「言葉遣い」に対する指導によって、オリンピックで金メダル獲得、甲子園で決勝進出、全国技能五輪で2年連続優勝など、さまざまな成果を残すことができています。
例えば、物事に取り組んでいて失敗したときに「なぜ失敗してしまったんだ」と嘆いたり、落ち込んだりすることもあるかもしれません。実はこれは、ますます失敗しやすくなり負のループに陥ってしまうマイナス言葉なのです。
どのように改善していけばいいのか。この記事では、「マイナス言葉」からメンタルを安定に導く「プラス言葉」への言い換えをご紹介しています。やりがちな4つのシチュエーションを例にして、つい言ってしまう口癖とその対処法をお教えいたします。メンタルが安定しない、浮き沈みのある方は、ぜひ参考にしてみてください。
謙虚さは素晴らしいけれど…
(1) 「自分なんて〜」
「あの人と比べれば自分なんて〜」「能力の低い自分なんて〜」と自分を下げるクセがついていないでしょうか。その謙虚さは素晴らしい部分もありますが、「自分なんて〜」という言葉は脳にはマイナスとして伝わり、心の調子を下げてしまいます。
そればかりを使っていると自分の本来持っている能力を制限してしまうのです。ですから、「自分なんて~」という言葉を「自分だからこそ~」と変換するようにしていただきたいです。
例えば、「周りの目を気にしてしまう」と悩んでいるのなら、周りの人が気になるというマイナス面を、「だからこそ」という言葉を入れて「周りの人が気になってしまう。〝だからこそ〞落ち着いて周りを見られている」という捉え方もありますね。「周りの状況がよく見える」というプラスの側面を見つけることができたわけです。
失敗やミスが続くと自分の欠点に意識が向き自信が失われることがあります。しかし先の例のように視点をマイナス面からプラス面に変えることによって、物事のプラスの側面に気づき自信へとつなげていっていただきたいのです。
(2) 「(寝る前に)ダメだった」
脳は寝た瞬間にその日1日を再生する機能があります。もしも、その日1日を否定的な思いで過ごしていて、寝る前まで引きずってしまうと、脳は睡眠中にも否定的な出来事を何度も反復してしまい、マイナスのイメージトレーニングを繰り返していることと同じになってしまいます。心の調子を下げる原因となってしまうのです。
嫌なことがあったなら、脳は最後を強く記憶するという性質を使いましょう。1日中否定的な思いになる出来事ばかりだったとしても、寝る前に肯定的な思いをつくってしまえば、肯定的な記憶データとして記憶してくれます。寝る前に今日できたこと、今日うまくいったことを少しでも思い出す習慣が作れると最高ですね。できることを繰り返してますますできるようになっていきます。
今日は全部がうまくいかなかったという日があっても、「明日、朝早く起きて前向きに行動できている自分」を思い浮かべてみるのもいいでしょう。「アフターコロナの中でこんなふうにできている」という悪いことを乗り越えた後の明るい未来を描くのもいいでしょう。この「脳のゴールデンタイム」に実現イメージを描くことが大事です。
どうしてできなかった→どうしてうまくいったのか
(3) 「どうして失敗したんだろう」
脳は問いかけに対して、全力で答えるようにできています。ですから、どういう問いかけをするかによって答えが変わってくるのです。人は失敗した時に、「どうしてできなかったのか」「どうして失敗したのか」を問いかけがちです。そうすると、脳はマイナスの答えを出すようになります。
逆に「どうしてうまくいったのだろう」「どうして成功するようになったのか」という肯定的なことを質問してあげてほしいのです。そのオーダーに脳は全力で応えようとしますから、プラスの答えが出てくるのです。
たとえうまくいっていなくてもいいのです。仕事で成果が出ていない時に、「なんでこうなったのだろう」と思い続けても、前に進めません。その代わり「どうして成果が出るようになったのだろう」と考えてみてください。「習慣を変えたから」「時間の使い方を変えたから」などいろんな答えが出てくるでしょう。
そのようなプラスのイメージが出てくることが重要なのです。成功に向かって進むポジティブな脳が出来上がり、心の調子が安定していきます。
(4) 「感動できることがない」
自分を否定的に感じていて、自己肯定感が低い人の特徴として、「感動力が低い」ことが挙げられます。つまり、物事に対して心が動かなくなる。いろんなことに対して感情表現が乏しくなっている状態なのです。
その状態になると危険なのは、人から親切にされたり、自分で良いことをやったりしても、プラスに心が動かないため気分が上がっていかないことです。ですから、プラスに感じて心が動く、「感動力を高める」必要があります。感動力を上げるために重要なのは、普段やらないようなことをちょっとやってみることです。私はその行動を「チョイ超え」と表現しています。
いつもよりちょっと恥ずかしいと思うこと、ちょっと照れくさいと思うこと、ちょっと勇気が必要なことを「よし、やってみるか」と1つでも前に進むことですね。
例えばボランティア活動や街のゴミ拾いなどです。そこでさらに人からありがとうと感謝されると、もっとやってあげたい気持ちになり心が徐々に動くようになってきます。ちょっと勇気のいることを日常に取り入れて、感動力を高めていきましょう。
以上シンプルではありますが、厳選してご紹介させていただきました。
「努力」「反省」から「自分なりに楽しむ」にシフト
目指すのは「セルフメンタルコントロール」です。落ち込まない人なんていません。誰でも嫌なことがあると、落ち込んでメンタルが下がってくることはあると思います。そこで大事なのは、引きずらないことです。下がった気持ちをリセットして、前を向いて歩んでいけるかどうかです。
『百年メンタル〜心の調子をキープする言葉の取扱説明書』 クリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします
スポーツの世界でも、会社の世界でも同じくらいの能力なのに結果が変わってくることがよくあります。それは、「メンタルのムラ」が大きな原因です。
東京2020オリンピックでも、それが顕著に現れました。誰もが金メダルを疑わなかった選手が、大きなプレッシャーや義務感を感じてミスを連発し、メダルを逃す。その一方で、 周りの影響を受けずに、普段通りにプレーできた人や涼しい顔や笑顔で挑んだ人が予想外のメダルを獲得する。そんな瞬間が多数見受けられました。
オリンピックに限らず、明らかに10年ほど前とは心のあり方が変わってきたように思います。これまでの「努力」「反省」が優先される文化から、「自分なりに」「楽しく」という方向にシフトしてきたように感じています。それこそ、この時代に必要な精神だと感じています。
1人でも多くの方が、普段の言葉遣いを変えて心の調子をキープし、気楽に日々の生活を送ることができれば、これほどうれしいことはありません。
【あわせて読みたい】※外部サイトに遷移します
提供元:「メンタルが安定しない人」が言いがちな言葉4つ|東洋経済オンライン