2021.08.24
「お金が健康を遠ざけていた」という衝撃の事実|スポーツクラブ、サプリ、鍼…でも不調だった私
粗食生活は間違いなく健康の基本。今や味噌汁用の煮干しが最大のご馳走の部類に……(写真:筆者提供)
疫病、災害、老後……。これほど便利で豊かな時代なのに、なぜだか未来は不安でいっぱい。そんな中、50歳で早期退職し、コロナ禍で講演収入がほぼゼロとなっても、楽しく我慢なしの「買わない生活」をしているという稲垣えみ子氏。不安の時代の最強のライフスタイルを実践する筆者の徒然日記、連載第21回をお届けします。
「お金を使わない=無理している」の誤解
いきなり私事で恐縮だが、コロナ禍でずっと中止中止の連続だった講演が、主催者の方に人数制限など感染防止に配慮していただきながら、少しずつ復活してきた。誠にありがたいことである。
稲垣えみ子氏による連載21回目です
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先日も「エネルギーを使わない暮らしについてお話を」と某市民団体に呼んでいただき、巨大なアクリル板越しではあるが、広い間隔をあけポツポツと座った参加者の方々に精一杯お話をさせていただくことができた。
たとえ皆様の顔の大部分がマスクで覆われていたとしても、やはりライブで話をすると、お互いの思いが行ったり来たりするのがよくわかる。その中で、本当に伝えたかったことがちゃんと伝わっていく実感がある。やはり人と人がリアルに会うというのは、実に贅沢でありがたいことだなあと改めて実感したところである。
で、後日。呼んでくださった団体の方から「イナガキさんは今の暮らしを楽しんでいらっしゃるんですねー。ずっと誤解してました!」と感想をいただいた。
そうなのだ。ここなんである。ああ誤解が解けて本当に良かった!
とにかく何が一番伝わりにくいって、まさしくそこなのだ。エネルギーやお金をあまり使わずに暮らしているというと、エライとか、頑張ってるとか思われることがほぼ100%。つまりは「無理している」と思われているのだ。
実態はまったく違う。私は偉くもなければ頑張ってもいない。というか、そもそも偉くもなく根性も忍耐力もない私が10年もそんな暮らしをしているのは、その方が圧倒的にラクで、おトクで、安心で、ノーストレスだということに気づいてしまったからに他ならない。
なので世の多くの方は、このような暮らしをしている私を「頑張っちゃって大変だねえ」と同情の目で見ているかもしれないが、誠に僭越ながら、むしろ私の方が世の皆様を同情の目で見ているのですよ。皆様よくそんな辛く大変で不安な生活を続けているなあ大変だなあと。ちょっと考え方を変えればもっとラクに元気に安心して暮らせるのにと。
そういうことを何とか伝えたくてこの連載を書いているのであります。で、どうだろうか。その思いは伝わっているだろうか。これまで、タダで食べる方法、洋服や化粧品を買いまくる日々からの決別、古く狭い家で楽しく暮らす日々などについて書いてきた。ここらで自己採点をすれば、「まあそんなにお金を使わなくともそれなりに元気に生きていけるかも」ということくらいは伝わったのではないかと信じたい。
「買わない生活」で得られる「あるもの」
でも、今回これからお伝えすることは、それとはちょっとレベルが違う話である。
買わない生活は、「買わなくてもそれなりにやっていける」などという消極的なケチ臭い生活ではない。もっと爆発的な可能性を持っている、ザ・生活革命なんである。
すなわち、誰もが求めてやまない「あるもの」を、そう、どんなにお金を使ってもほとんどの人がどうしても得ることができないでいる、万人における永遠の夢とも言える「あるもの」を、買わない生活によってバババーンと一気に手に入れることができるのだ。
その「あるもの」とは。
そう、健康、であります。
実を言うとずっと、そんな朗報を特に意識することもなくやってきた。ま、それどころじゃなかったのだよ。自ら選択したこととはいえ節電と退社を機に暮らしを一気にサイズダウンし、何せ経験のないことなのであれこれ工夫したり壁にぶつかったりしながら必死に生きてきた。
でもやってみればそれがいちいち面白かった。あらまあ案外ちゃんと元気に前向きに楽しく生きられるじゃないかと、ただ日々を単純にキャッキャッと生きてきたのである。
それがある日ふと、「ん?」と思ったのだ。
きっかけは、会社を辞めてから、とあるニュースサイトの無料会員になったことである。以来1日1回、わがメールにそのサイトが運営する健康専門サイトのお知らせが律儀に送られてくるようになった。
これには最初、単純に驚いた。だって数え切れないほどの情報が毎日毎日アップされまくってるんですよ。ダイエット、成人病予防、老化防止、免疫力強化、ストレス対策……取り上げる話題も、それについて語りまくる専門家も、まさしく尽きることなくコンコンと湧き出る泉のごとしである。
なるほど現代においては、健康とは永遠の巨大市場なのだと実感する。
科学が進歩し、医療が発達し、人々の暮らしもひと昔に比べたらグッと豊かになった時代においても、人々はなぜか健康を手にすることができず、どこまでも深い悩みの中にいるのだ。
ということはこれからも、景気が浮こうが沈もうが、あるいはコロナ禍などの予期せぬアクシデントがあろうがなかろうが、この市場は不変にテッパンの強力なマーケットであり続けるに違いない。
気づいたら健康になっていた私
しかし、それにしてもなぜ人々はこれほどまでに健康を追い求めてやまないのだろう……と考えていて、はっとした。
その「人々」の中に、私は入っていなかったのだ。
つまりは私、確かにこのサイトを見て「感心」はしていたが、「関心」は1ミリも持っていなかったのである。
なぜなら、私はすでに十分健康だった。ダイエットも、成人病予防も、老化防止も、免疫力強化も、ストレス対策も、すべて私には「解決済み」であり、それは基本的にこれからも変わらないという確信があったのである。
いや……これだけだと「それは主観の問題でしょ(勝手に健康だと思い込んでいるだけ)」と思われるかもしれない。
確かに私とて、あまりのことにちょっとそんな気がしないわけでもなかった。で、先日ラジオを聞いていたら「質の良い睡眠」についての番組をやっておりまして、専門家の先生が「良い睡眠チェック」の具体的な項目を挙げておられた。
確かに良い睡眠がとれているかどうかは間違いなく日頃の生活の結果、すなわち通信簿であり、ごまかしようのない健康のバロメーターといえましょう。というわけでにわかに興味を持ちまして、ちょいと聞き耳を立てたわけです。
その5項目は、わが記憶によれば、確か以下のとおりであった。
(1)睡眠のための薬を飲んでいない (2)目覚まし時計がなくともスッキリ起きられる (3)朝食を食べる意欲がある (4)朝に排便がある (5)昼間に居眠りをしないーー
ふむふむ。いゃ~……余裕だ! どれも迷いなくバッチリ「Yes」であった。私はこの5項目を、心に一点の曇りもなく軽々とクリアしたのである。ってことは、私は間違いなく最高の睡眠をとっており、つまりは間違いなく客観的に健康だと言って良いのではないだろうか?
そう私は健康なのだ!
……その事実に、しばしわれながら呆然とする。
なぜって、ずっと私は健康じゃなかったからだ。いや、ずっとずっと健康になりたかった。ゆえに絶えず健康に関心を持ち、すなわち、かの健康をめぐる巨大市場の中にどっぷりと浸かって生きてきた。つまりはかなりのお金を使ってきた。
スポーツクラブに行き、エステに通い、サプリも山ほど買い、漢方医に通い、整体に通い、鍼に通い……雑誌や本やネットや口コミで耳寄り健康情報を絶えず探しまくり、ありとあらゆるところに行った。それに費やした時間とエネルギーはまったくハンパないものがあった。
で、それでも健康は手に入らなかったのだ。いつもなんとなく体調が悪かった。具体的に言えば、手足が冷え、生理痛がひどく、肩と首がバリバリに凝り、胃がムカつき、時に耐え切れないほど内臓のどこかが痛んで夜中に目が覚めた。
となれば、いつだってあらゆる情報をチェックせずにはいられないのも当然である。そしてあらゆる情報に飛びつき、しかし結局はやっぱり体調が悪いままだった。で、それは情報の集め方が足りないからだと思い、無限に熱心にさらなる情報チェックを続け、足を運び……。
まったくわれながらご苦労なことである。
それが、ふと気づけばその、世のほとんどの人が巻き込まれまくっているであろう巨大市場を一人スイっと抜け出して、「だって私、健康なんだもん」と超余裕の構えという、信じられないような状況になっている。
お金を使わない方が圧倒的に健康になれてしまう
いったいいつ、なぜ、こんなことになったのか?
答えはすぐに出た。私が健康になったのは間違いなく、「買わない生活」を始めてからのことだ。
考えてみれば、当たり前といえば当たり前なのだった。暮らしをサイズダウンした揚げ句の単純で質素な暮らしとは、一言で言えば修行僧のごとき暮らしである。グルメもショッピングもナイトライフも便利家電も無縁となれば、早寝早起き、一汁一菜、適度な運動という「ザ・健康的な生活」は、情報など一切集めずとももれなく付いてきたのであった。
で、健康的な生活をすれば健康になれるのである。実に単純明快なことであった。
つづめて言えば、健康を手に入れるテッパンの方法は「質素に生きること」なのだ。
そうなのだ。誰もが健康を手に入れようとしてせっせとお金を使っているけれど、お金を使わない方が圧倒的に簡単に健康になれてしまったという、何か釈然としない話なんである。
ってことはですよ、われらがどうしても健康を手に入れることができない最大の原因は「お金」ということになる。
これは一体どうしたことか。
(次回につづく)
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提供元:「お金が健康を遠ざけていた」という衝撃の事実|東洋経済オンライン