2021.07.27
子どもの疑問「天気予報はなぜ外れる?」の答え方|気象キャスターくぼてんきが「天気の謎」を解説
天気の疑問に気象予報士のくぼてんきさんが回答します(写真:hichako/iStock)
夏は天気が変わりやすい季節のため「朝の情報番組で一日の天気予報を確認してから外出する」という習慣がある人は、多いのではないでしょうか。ボクが気象キャスターとして出演している日本テレビ「ZIP!」でも、そのニーズに応えられるよう、時間ごとの変化や服装についてのアドバイスなどを心がけています。
知っているようで知らない天気について、お子さんに質問されて困った人もいるのでは。そこで、夏休みももう間もなくということで、大人も子どもも知りたい天気予報の「ナンデ?」について、ボクが書いた本『くぼてんきの「天気のナンデ?」がわかる本』より解説します。
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天気予報はいつからあるの?
1643年ごろ、イタリアのエヴァンジェリスタ・トリチェリが水銀の気圧計を発明したのが、気象観測の始まりと言われています。その後、1820年ごろにはドイツのハインリヒ・ブランデスが世界初の「天気図」を発表しました。
くぼてんきさんが解説(写真:あさ出版提供)
日本においては、1875年に気象庁の前身である東京気象台ができ、1884年6月1日に最初の天気予報が発表されました。その内容は、「全国的に風向きは決まらず、天気は変わりやすいですが、雨が降りがちでしょう……」と、何ともざっくりしたものでした。
その後、1960年にアメリカで世界初の気象衛星が打ち上げられて、天気予報の精度が一気に上がりました。日本の気象衛星「ひまわり」が打ち上げられたのは1977年で、2014年からはカラー映像に変わりました。
■現在の天気予報はどんなもの?
日本国内に約1300カ所設置されているアメダス(Automated Meteorological Data Acquisition System)「地域気象観測システム」で、気温や湿度、降水量のほか、風向や風速、日照時間などを測定し、そのデータをコンピューターが解析したものが、現在の天気予報のもとになっています。
「こういう空の状態からは、こういう天気になっていくことが多い」というデータを踏まえて、過去のデータと照合したり、地域ごとの特性などを加味したりしながら、予測の誤差をうめて完成させるのが、気象予報士の仕事となります。
このように、天気予報は、観測システムとコンピューターと気象予報士の共同作業によって出されているのです。
さらに、ボクのようにテレビ番組などで予報を伝える気象キャスターの仕事をしている気象予報士には、「予報した天気をわかりやすく伝える」という任務もあり、「この場所が降りやすい」「この時間が降りやすい」といった可能性まで、しっかり伝えるように心がけています。
天気予報の的中率は?
気象庁の「きょうの予報」では、2019年の的中率86%。年々精度は上がっているものの、100%的中はまだまだ難しそうです。ただ、現在の「天気予報」は「はずれる」というよりも「ズレる」という表現が近いように思います。
予想外に風と風がぶつかったりすることで、雲の発達具合や移動速度が速まったりして、「夕方から雨と言っていたのに、昼過ぎから降りはじめた」とか、「降る場所が予想よりも南側だった」という、ズレが生じてしまうのです。
中でも、ズレやすい季節は夏。夏は夕立が多く、その発生場所がズレてしまうことがよくあります。ゲリラ豪雨はまさにそうで、大気が不安定になることははっきりわかっていても、時間や場所をピンポイントに特定するのは難しいのです。
■「晴れ時々くもり」「晴れ一時くもり」の違いは?
予報用語の「時々」と「一時」は、天気予報でしょっちゅう出てきます。その現象が起こる合計期間が予報期間の4分の1以上、2分の1未満の場合は「時々」、その現象が連続して起こり、その期間が予報期間の4分の1未満の場合は「一時」を使うことになっています。
24時間分の予報の場合は、6時間以上・12時間未満が「時々」、6時間未満なら「一時」。つまり、「晴れ一時くもり」のほうが、晴れている時間が長いのです。もちろん、晴れ以外の雨でも雪でも使い方は同じです。
■空を見て天気を予想する方法
現在の天気予報のように精度は高くありませんが、空を見て、雲や風、さらに生き物たちの行動から天気を予想することを「観天望気」と言い、昔から暮らしの中で役立てられています。
「星がきれいにまたたく夜は、翌日の強風に注意」
「ツバメが低く飛んでいると雨になる」
「クモが巣を張ると晴れ」
「遠くの音がよく聞こえるときは、間もなく雨が降る」
とくに天気を予想しやすいものは雲で、「大きな積乱雲ができていたら雨が降る」など。知っていれば、役に立つものばかりです。
「注意報」「警報」が出たらどうすればいい?
「注意報」は災害が起こるおそれがあるときに、警報は重大な災害が起こるおそれがあるときに出されます。その基準は地域によって違いますが、「警報」は、「出ているときに外にいたら死の危険がある」というほど高いレベルのものです。
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もちろん、「注意報」の段階から十分気をつけなければならないのですが、危険度が上がると「注意報」→「警報」になることは覚えておいてください。
そして、「警報」の基準を超えてより重大な災害が起こるおそれが出てくると、「特別警報」が出されることもあります。「大雨特別警報」「暴風特別警報」などが出されるということは、もうすでに災害が発生している可能性が高いので、その前に、避難したり、命を守る行動をするように心がけてください。
天気予報にまつわる、いくつかの謎についてお話しいたしました。これらを知っているだけでも、天気への理解レベルがぐっと上がったと思いますが、天気の不思議は、まだまだ尽きることがありません。
まずは、空を見上げて、雲の形や風の流れを楽しんでください。見上げるごとに、きっといろいろな発見があると思います。
明日はどんな天気でしょうか?
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提供元:子どもの疑問「天気予報はなぜ外れる?」の答え方|東洋経済オンライン