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2021.07.12

親の介護が楽になる!公的制度を「使い倒す」手法|独りで抱え込むと「残念な介護」になりかねない


介護は突然やってくる。家族の負担を減らすために、事前の準備をしておきたい(写真:Ushico/PIXTA)

介護は突然やってくる。家族の負担を減らすために、事前の準備をしておきたい(写真:Ushico/PIXTA)

誰もが経験する、親の介護。事前にある程度の準備をしておきたいものです。

それは、「情報収集」という準備です。公的介護保険サービスを利用するにはどんな手続きが必要か、どんなサービスが受けられるのか。費用はいくらかけられるのか。4人の親を見送った経験も踏まえ、重要ポイントをお話しします。

公的制度の活用なしには乗り越えられない

ほぼすべての人が多かれ少なかれ体験するのが、親の介護です。介護のために仕事を離れる人、遠い実家まで通う人、施設選びに奔走する人など、さまざまなケースがありますが、介護を楽にするか、残念なものにするかには、いくつかのポイントがあります。

介護を上手に乗り越えるために肝に銘じておきたいのは、介護は「公的介護保険」「自治体サービス」「家族や親戚」を組み合わせることが重要、ということです。自宅で同居する家族が介護をするにしても、別に住む家族、近所の人、親戚などと助け合うこと、また、公的介護保険のサービスを利用するなど、介護の負担を分担します。

そして、介護を楽にするか、大変なものにするかの分かれ道になるのが、事前の準備です。加齢によってだんだんとできないことが増えてくる、というケースもありますが、病気やケガで一気に自立した生活ができなくなるなど、介護は突然にやってくることもあります。急を要する場合、行きあたりばったりの対策をしてしまい、軌道修正がしにくくなっては大変です。親の状況を把握したり、介護に関する情報を集めたり、課題を明確にしたりするなど、事前に親の介護に備えておくことが重要です。

まず、公的介護保険の仕組みを知っておきましょう。自治体のサービスなど地元の状況について、ある程度の情報収集もしておきたいところです。

公的介護保険は40歳から64歳まで保険料を支払い、主に65歳から必要に応じてサービスを利用できるものです。介護保険については各市町村に設置された「地域包括支援センター」が窓口になっており、ここで情報が得られます。介護保険のしおりや、介護事業者の一覧が記載された「ハートページ」をもらっておくと重宝します。

介護保険サービスを利用するには、要介護認定を受ける必要があります。要支援1〜2または要介護1〜5までのいずれかに認定されると、等級に応じて公的介護保険のサービスが受けられます。認定を受けるには、市区町村の介護保険課に申請書を提出します。本人または家族が申請することもでき、各市町村に設置された「地域包括支援センター」や「居宅介護支援事業所」に代行申請を依頼することも可能です。

申請すると、後日、市区町村の認定調査員が本人のもとに訪問して、認定調査が行われます。日常生活においてできること、できないこと、誰かの支援や見守りが必要なことなどを聞き取るものです。適切に認定してもらうため、認定調査のときは家族も同席して、普段の様子や困っていることなど、伝え漏れのないようにしましょう。さらに、かかりつけ医による意見書(主治医意見書)も必要で、本人や家族などから、かかりつけ医に依頼し、作成してもらいます。離れて暮らしている場合は、かかりつけ医がどこなのかは把握しておきましょう。

介護が必要な状態である場合はもちろん、病気やケガで入院した際には、介護が必要になりそうかを主治医に確認し、早めに申請を。認定調査は親が自宅にいれば自宅に調査員が来ますし、入院中なら、入院先の病院に来てもらうこともできます。申請から認定までに30日かかるので、早めに申請して、準備を進めて。認定を受けると、その効力が申請した日までさかのぼり、申請したときから介護サービスの利用が可能です。

要支援・要介護の8段階で異なるサービス

認定調査や意見書をもとに判定が行われ、申請から30日以内に判定結果が届きます。自立(非該当)、要支援1〜2、要介護1〜5の8段階で、要支援1〜2では介護予防のためのサービス、要介護1〜5では、介護サービスの対象となります。自立の判定を受けた人でも、要支援・要介護のおそれのある人は介護予防のためのサービスが受けられる場合があります。

例えば、要介護2は、立ち上がりや歩行などが自力でできない場合が多く、排泄や入浴などに一部介助または全介助が必要、というのが目安です。立ち上がりや歩行などが自力ではできず、排泄や入浴、衣服の着脱などに全介助が必要という場合は、要介護3が目安です。

さきほどの図にもあるように、介護保険サービスは、特別養護老人ホームや介護老人保健施設、有料老人ホームなどに入所して受ける「施設サービス」や、グループホームや介護型ケアハウスといった施設で利用する「地域密着型サービス」などがあります。

自宅で介護する場合には、ホームヘルパーが食事や入浴、排泄などを介助する訪問介護や、看護師や保健師が療養上の世話や診療を補助してくれる訪問看護、医師や歯科医師、薬剤師、栄養士などによる居宅療養管理指導のほか、訪問リハビリテーション、訪問入浴介護などの「居宅サービス」があります。またデイサービスや通所リハビリなど、送迎付きで施設を利用するサービスや、介護老人保健施設などに一時的に入所するショートステイなどを利用することもできます。

自宅で療養する場合は介護保険で介護用ベッドや車いすといった福祉用具のレンタルもできますし、入浴用いすやポータブルトイレといった福祉用具の購入もできます。手すりの取り付けや段差の解消、引き戸などへの扉の取り替えなど、住宅改修費の費用(20万円まで)も一部が支給されます。

介護について最も多く質問されるのが、自宅介護がいいのか、施設に入所するべきか、ということですが、親の心身の状態や家族の状況などによって異なり、一概にどちらがいいとはいえません。要介護状態になる前、あるいは要介護度が進む前に、親はどんな介護を望んでいるか、家族はどう考えているか、各自の意向を知っておくことも大切です。介護サービスを知ることは、どんな介護が可能かを考えるのにも役立ちます。

ケアマネや支援事業所の情報も集めておく

介護サービスを受けるには、居宅介護支援事業所を選んで、ケアマネジャー(介護支援専門員)を決める必要があります。ケアマネジャーは、生活環境や本人の希望に応じて「ケアプラン」を作成し、さまざまな手配をしてくれる人です。どんなことに困るか、想像しにくい部分についても、ケアマネジャーが助言してくれます。

居宅介護支援事業所を選ぶ際には、ハートページに記載されたリストから探すのが一般的ですが、電話対応の雰囲気や自宅からの距離、利用者からの口コミなども参考になります。親の知人やご近所などで介護サービスを利用している人がいたら、日頃から話を聞いておきましょう。子世代も、同窓会などで地元の友人と会う際は、介護に関する情報を集める機会になります。

自治体によっては独自のサービスを行っている例もあるので、自治体のホームページなどで調べておきます。例えば、高齢者見守り事業として見守り通報装置を貸し出し、緊急時にはガードマンが駆けつける有料のサービスを提供したり、夕食を配食したりするサービスなどを行っている自治体もあります。地元の「社会福祉協議会」でも高齢者向けのサービスを行っている例もあります。

公的介護保険サービスを利用する場合は、費用の一部を利用者が負担します。自己負担の割合は利用者の収入によって異なり、所得が多いほど、負担割合が高くなります。単身世帯の場合、収入が公的年金だけなら年収280万円未満、夫婦世帯では年収346万円未満で自己負担は1割です。事業収入や不動産収入があるなどで収入が多いと、2割、または3割負担となります。

また要介護度に応じて利用できるサービスの上限が決まっています。例えば要介護2では1カ月で約19万7050円分、要介護3では約27万480円分のサービスが利用できます(地域によって異なる場合があります)。そのうちの1〜3割が自己負担分となります。利用できる、または自己負担できる金額の範囲でサービスを選択することになり、上限を超えるサービスを受ける場合、超過分は全額自己負担となります。

「親の資産状況」を元気なうちに把握しておく

介護サービスをどの程度利用するか、入院した際に個室を利用するかなどを検討するためにも、把握しておきたいのが、親の資産状況です。

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親の医療や介護にかかる費用は親自身が負担するのが基本ですから、年金をいくら受け取っているか、預貯金などの金融資産がいくらあるかは知っておきたいところです。

聞き出しにくいと思いがちですが、病気で入院してから確認するのではかえって負担ですし、さまざまなサービスの利用を考えたものの、費用の負担が難しいというのでは、困ります。年金などから、介護サービスの自己負担割合が何割になるのか、どの程度を医療や介護に使えるか、確認しておきましょう。

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提供元:親の介護が楽になる!公的制度を「使い倒す」手法|東洋経済オンライン

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