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2021.07.05

「ゲリラ豪雨」「線状降水帯」が発生するカラクリ|新旧の平年値から読み解く気候変化


予想もしていなかったゲリラ豪雨に巻き込まれ、ずぶ濡れになってしまった経験をお持ちの人も少なくないでしょう。なぜこんなにも急に強烈な雨が降るのでしょうか(写真:Doctor_bass/iStock)

予想もしていなかったゲリラ豪雨に巻き込まれ、ずぶ濡れになってしまった経験をお持ちの人も少なくないでしょう。なぜこんなにも急に強烈な雨が降るのでしょうか(写真:Doctor_bass/iStock)

さっきまで青空が広がって強い日差しが照りつけていたはずなのに、突然空が暗くなって強い雨が降りだすことがあります。俗に「ゲリラ豪雨」といわれる、天気の急変です。

雷が鳴ったり、竜巻などの突風が吹いたり、ときには雹(ひょう)が降ることもあります。

積乱雲(写真:気象庁)

積乱雲(写真:気象庁)

天気の急変にはサインがあります。

(外部配信先では画像や図表を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)

空が暗くなったり、黒い雲が近づいてきたと思ったら急に強い雨が降り出します(イラスト:気象庁)

空が暗くなったり、黒い雲が近づいてきたと思ったら急に強い雨が降り出します(イラスト:気象庁)

「空が暗くなったり、黒い雲が近づいてきたりする」「雷鳴が聞こえる」「急に冷たい風が吹く」これはどれも積乱雲が近くにある状況です。

もし外にいる時にこのようなサインを感じたら、10〜15分後には天気が急変するおそれがあります。鉄筋コンクリートでできているような丈夫な建物の中や、車の中などに入るようにしましょう。

雨雲レーダーの有効活用を

スマートフォンや携帯電話で雨雲レーダーを見ることでも、天気の急変を察知することができます。

雨雲の動き(写真:気象庁HP)

雨雲の動き(写真:気象庁HP)

こちらは気象庁HPの「雨雲の動き」です。

現在の雨雲の様子と今後の予想を見られるため、自分がいる場所に雨雲が進んできそうだったら避難するようにしましょう。

気象庁HP以外にも雨雲の様子を見られるサイトやアプリがあるので、すぐに開けるようにブックマークやダウンロードしておくと便利です。

また、気象庁HPの「雨雲の動き」などでは、現在と未来だけでなく、過去の雨雲の状況を見ることができます。私は、遡って雨雲の変化を見ることで、どの方向に、拡大あるいは縮小しながら、発達あるいは衰退しながら進んでいるのか雨雲のトレンドを捉えるようにしています。

天気予報では天気が急変する理由として「大気の状態が不安定」と表現しますが、具体的にはどのような状況でしょうか。

それは、地上付近が暖かくて上空が冷たい状況です。

お風呂に入る時を思い浮かべてみるとわかりやすいです。上のほうのお湯は温度が高くて底のほうが低く、湯船に浸かる前にお湯をかき混ぜた経験があるのではないでしょうか。

自然な状態にする過程で天気が急変

空気も水と同じく、上が暖かくて下が冷たいという状態が自然です。つまり、地上付近(=下)が暖かくて上空(=上)が冷たいと言うのは不自然な状態であり、自然な状態にするために対流が起こって積乱雲が発生し、天気が急変するのです。

地上と上空の温度差が大きいほど、不安定になりやすいです。

<要因1:気温の上昇>

天気予報で「○月上旬並み」や「平年より○日早い」などと伝えることがありますが、平年値というのは過去30年間の平均です。

更新されるのは10年に一度で、今年新しい平年値に更新されました。

昨年まで使われていたのは1981年〜2010年の平均で、更新された平年値は1991年〜2020年の平均です。

古い平年値と新しい平年値と比べると、ここ10年の変化の傾向が分かります。

年平均気温は北日本と西日本で0.3℃上昇、東日本は0.4℃上昇しました。

(出所:気象庁HP)

(出所:気象庁HP)

日本の平均気温は長期的に見て高くなっていて、特に1980年代後半からは急速に上昇しています。

夏の平均気温 平年値の差(出所:気象庁HP)

夏の平均気温 平年値の差(出所:気象庁HP)

天気の急変が起こりやすい、夏(6月〜8月)の平均気温の差です。

東日本で赤色(0.6℃以上上昇)やオレンジ色(0.4℃以上上昇)が多い印象で、全国的に上昇傾向です。

最高気温30℃以上の真夏日の日数は、東日本から沖縄・奄美の多くの地点で3日以上増えました。最高気温35℃以上の猛暑日の日数は、4日以上増えた地点もあったそうです。

地上付近の気温が上がれば、上空との温度差が大きくなりやすいです。

さらに、温度が高い空気ほど飽和水蒸気量が多い(高い)、すなわち多くの水蒸気を蓄えることができます。水蒸気は雲のもとになるので、強雨や雷雨をもたらす発達した積乱雲ができやすくなるのです。

平年値の差からも分かる気温の上昇は、天気の急変が起こりやすくなっている一因といえます。

寒気が流れ込みやすい気圧配置に

<要因2:梅雨前線が南に停滞>

今年は梅雨入りしてからも6月終わり頃まで梅雨前線が本州の南に位置することが多かったです。

それにより、梅雨前線の北側にあたる本州の上空に寒気が入りやすくなりました。

6月22日の天気図(出所:weathermap)

6月22日の天気図(出所:weathermap)

「梅雨入りしても晴れる日が多いですが、急な雷雨も多いですね」「今年はゲリラ豪雨が多い気がします」など、今年の梅雨はいつも以上に天気が急変する日が多いと感じているという声をいただいています。

天気の急変は局地的なものであることも多く、回数を正確に数えて比較することは困難ですが、その要因となる寒気が流れ込みやすい気圧配置になっていたといえます。

寒気は天気の急変に限らず、雨雲を発達させる要因になります。

6月16日は東京で朝から雷雨となり、妙正寺川に氾濫危険情報が発表されました。練馬では1時間に44.5ミリの激しい雨を観測しました。

この日は上空に寒気が入っていたことにより、積乱雲が発達して雨脚が強くなったとみられます。

6月29日の雨雲(出所:weathermap)

6月29日の雨雲(出所:weathermap)

こちらは、6月29日の雨雲の様子です。活発な雨雲が連なり、沖縄本島にかかっています。

6月29日未明、今年から運用が始まった「顕著な大雨に関する情報」が、全国で初めて沖縄本島地方に発表されました。この情報は、線状降水帯が発生して同じ場所で非常に激しい雨が降り続き、命に危険がおよぶ災害発生の危険度が急激に高まっているときに出されるものです。

この日は、沖縄付近に停滞する梅雨前線に暖かく湿った空気が流れ込んだことに加え、前線北側の上空には寒気が流れ込んだために雨雲が発達しました。

今後は梅雨前線の大雨に警戒を

7月に入り、梅雨前線が本州に北上してきました。

昨年の「令和2年7月豪雨」は7月3日から発生し、西日本豪雨といわれる3年前の「平成30年7月豪雨」は6月28日から7月8日にかけて発生したように、梅雨の後半は大雨になりやすいです。

7月1日の雨雲(出所:weathermap)

7月1日の雨雲(出所:weathermap)

7月1日朝には伊豆諸島で線状降水帯が発生して、沖縄に続き全国で2回目の「顕著な大雨に関する情報」が発表されました。

今後は、沖縄や伊豆諸島以外でも線状降水帯が発生する可能性があります。

ハザードマップや防災グッズを今一度確認するなど、大雨への備えをしてください。

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提供元:「ゲリラ豪雨」「線状降水帯」が発生するカラクリ|東洋経済オンライン

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