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2021.05.28

各地で大異変「100円ショップ」の看板が消える日|100均各社の店頭や新展開から見えてくる


話題のダイソーの新業態「Standard Products」。いったい日本の100均は今後どう変化していくのだろうか?(画像:「Standard Products」のサイトより)

話題のダイソーの新業態「Standard Products」。いったい日本の100均は今後どう変化していくのだろうか?(画像:「Standard Products」のサイトより)

100円ショップを愛する筆者が心待ちにしていた店舗が、2021年3月26日(金)にオープンした。ダイソーの新業態「Standard Products」の一号店だ。

リリースによれば、環境やライフスタイルの変化に伴う、良質で心地いい製品を長く使いたいというニーズの高まりに応え、普段の生活で使う日用品をちょっと楽しく――との思いで生まれた生活雑貨の新ブランドとのことだ。

価格帯は 300 円(税込 330 円)を中心に、500 円(税込 550 円)、700 円(税込 770 円)、1000 円(税込 1100 円)。簡単に言うと、100円よりも高価格帯の商品が並ぶ店ということになる。

オープン以来大変な人気で、入場制限の噂もあったほど。現地は渋谷マークシティ1Fだが、隣接フロアにこれまた巨大なダイソー店舗が同時オープンしたため、ますます混雑していた(※その後緊急事態宣言に伴い両店舗とも休業していたが、5月17日より再開)。

ダイソーにはもともと「THREEPPY」という雑貨テイストの300円ショップがあるが、今回の新業態店はそれとはまったく趣が異なる。商品カラーは白(生成)、紺、グレー、茶が中心で、ウッドやコットンなどの素材を多用、シンプルながら温かみやナチュラル感が漂う。

どこかで見たことがあると思ったら…

どこか既視感があると思ったら、無印良品だ。無印の店舗に入ったあの感覚と似ている。品のない言い方をすれば、ニアリー無印。いや、ほめているのだ。無印インテリアに憧れていても、全部をオリジナルで揃えるにはお財布事情が厳しい。そういう人たちには、ここ「Standard Products」をお勧めする。300円~500円程度で「そんな感じ」の収納ボックスや自然素材のケースが揃うのだ。たぶん、本家の半額以下で済む。うまいところに目を付けたものだと素直に拍手を送りたい。

ここからは筆者の想像だが、無印の商品は訪日観光客に人気だというし、今回の新業態は将来的にはそれらのお客を取り込む戦略もあったのではないか。もともと100均好きの人も多いという海外客にとっては、二重に美味しいブランドになることだろう。

ともあれ、サイフに優しい価格や、消費者好みのツボをつかんだデザインは、渋谷に集まる若者層を惹きつけるには申し分ない。オープン早々にコロナ禍のあおりを受け、休業を余儀なくされたが、これからが本当の勝負といえそうだ。

実は、筆者が今回もっと驚いたのは、フロア続きの場所にある「ダイソー」だ。「渋谷区最大級」とあるが、渋谷区どころではない広大さで、すべての売り場をチェックするのが一苦労なほど。

若者の多い場所柄か、コスメのコーナーが目立つ場所にあるうえ、スナックやキャンディーなどの食品も充実している。こちらの商品は、おしゃれ感よりもザ・ダイソーというテイストだが、価格帯はやはりバラバラだ。300円の収納ボックスもあれば、500円のスマホアクセサリーも並ぶ。

今やダイソーをはじめ、100円ショップチェーンは100円以上の商品を置くことが当たり前になった。キャンドウやワッツも高額商品シフトに積極的で、今後もその方向に進んでいくと明言している。

消費者側も、絶対に100円でなければというより、この金額でこの機能・価値なら「お値打ち」と感じればためらわずに代金を払う。例えば、アウトドアブームで人気のワンタッチ式一人用テントは、1000円(税込み1100円)で買える。100円ショップで1000円とは何事だ、とはもはや誰も言わない。

オール100円にこだわるよりも、「今欲しいものをなるべく安い価格で買いたい」というニーズに応えてくれるのが、今の100円ショップなのだ。

ダイソーなのに、1000円の釣り竿

例えば、目立つのはキャンプグッズ。ソロキャンプを意識したバーベキュー用のミニコンロやアルミ製の食器、ランタンなど価格も種類もさまざまだ。アウトドアつながりでフィッシング人気が高まっているが、ダイソーではリール付きの釣り竿も1000円で売られている。釣りの仕掛け(針)やメタルジグ(疑似餌)の品ぞろえもなかなかだ。他にも、DIYや手芸パーツなど、巣ごもり生活を彩る趣味キットも豊富にそろう。

さらに、テレワークで必要になりそうなIT関連の小物や、スマホアクセサリーも充実している。ワイヤレスマウスやUSBポート、マイク付きイヤフォンに充電ケーブル類は100~500円前後。スマホやタブレットでオンラインで話したり動画を楽しむためのホルダーやスタンドも各種ある。

かと思えば、コロナ下のニューノーマルに対応したアイテムも。マスクホルダーや、除菌アルコール用のミニスプレーボトル、指の代わりにタッチパネルを押すことができる非接触用スティックなど、至れり尽くせりだ。

100円ショップこそ「生活必需品」の宝庫ではないか。しかし、大規模ショッピングセンターやファッションビルのテナントで入っているため、休業している店舗も少なくない。逆に、スーパーと同じ建物内にある店舗は営業していたりと、なんともちぐはぐだ。

食品やキッチン用品、文具やスマホ用品、趣味・レジャー・収納グッズなど、われわれの生活に関わるあらゆる品がそこで揃う100円ショップは、ぜひ「生活必需品取り扱い店」として認定してほしい。

対照的に、厳しいニュースが相次ぐのが300円ショップ。もともとファッション性の高いプチプラ雑貨やアクセサリー等の、どちらからといえば「不要不急」アイテムが多かったせいもあってか、代表的な2ブランドが他社に事業を譲渡することとなった。

昨年の5月、株式会社ビルジャンが300円ショップ「CouCou」事業をダイソーに譲渡した。ダイソー自体も「THREEPPY」という300円ショップを展開しているが、ブランド統合することなく、現在も「CouCou」としての営業が続いている。

さらに、今年2月に「ミカヅキモモコ」の運営会社が経営破綻。一部店舗はアパレル企業に譲渡されたが、筆者が愛用していた店舗は残念ながら閉店のままだ。

やはりコロナの影響は大きかったのだ。300円ショップが得意とするプチプラ雑貨は、目的をもって訪れる指名買いというより、ついで買いや衝動買いを誘うもの。たまたま店を覗いて、かわいいものを見つけて数個をまとめて買う、という消費スタイルだ。

しかし、コロナの外出自粛により「ぶらぶら買い物に行く」という行動自体がかなり減ってしまった。重ねてインバウンド需要も蒸発、打つ手が封じられてしまった。

この2社のニュースから見えてくるものは、均一ショップの生き残り合戦の厳しさだ。先に書いたように、100円ショップはもはや100円均一ではなく、多価格帯への方向を強めている。300円ショップにとって、出店数では勝負にならない100円ショップとの戦いは消耗戦となるだろう。

最も認知されている「3コインズ」でも全国で約200店舗と、1000店舗を超える100円ショップとは店舗数の桁が違う。300円ショップは、デザイン性・ファッション性の高さを武器に差別化してきたが、100円ショップも生き残りをかけてデザイン性を重視したPB商品の開発に注力しており、その境界線はどんどん融けつつある。100円も300円も垣根のない時代に突入している。

「100円ショップ」の看板がなくなる日

つまるところ、もはや「100円ショップ」とは名ばかりなのだ。

スーパーやホームセンターにも負けないほど幅広い商品をそろえ、かつ機能・デザイン性にもこだわり、価格は100~1000円のラインナップという業態は、なんと呼ぶべきか。「プチプラ雑貨ショップ」「ロープライス用品ショップ」……どれもピンとこない。単に、「ダイソー」「キャンドウ」といった店名だけがアイコンとなる日も近い。

となると、気になるのは業界第2位である「セリア」の戦い方だ。100円ショップ各社が多価格商品へシフトする中、いまだ100円にこだわる姿勢を崩していない。

セリアといえば、インスタ映えするおしゃれ雑貨やインテリアグッズなど、そのデザイン性の高さを支持するファンが多い。ダイソーの“無印っぽい” 「Standard Products」は、方向性こそ違うが、そうした層の関心も引くことだろう。ますます、この勝負から目が離せない。

「100円ショップ」という看板は、そのうち消えるかもしれない。何でもそろうバラエティー雑貨ショップになるのか、生活必需品の総合デパートになるのかはわからないが、せめて奮闘するセリアの行方をしっかり見守りたい。

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提供元:各地で大異変「100円ショップ」の看板が消える日|東洋経済オンライン

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